「アイコ、セブンティーン」上演台本公開と最近のこと

前書き

こんにちは。まだまだ大変な昨今です。中身ない前書きなので飛ばしていただいて大丈夫です。こないだの「にてないモノマネ」の公開部分は抜粋でしたが、今回は、冒頭から長めに公開しております。買っていただくと全編PDFで読めます。

実は前回の「にてないモノマネ」公開記事からわりと時間が経っています。待っていた方は……いたかどうか分かりませんがいらっしゃったら申し訳ありません。前回の時はわりと、「安倍晋三と星野源」のコラボ映像が上がった直後だったと言うこともあり、なんか反射で、その場の勢いで書けてしまったのですが。こないだみたいに中身あることは書けなさそうです。

この作品、大林宜彦監督作品とか、角川アイドル映画のパロディがけっこう入っております。なので僕の好きな大林作品とか、大林論とか語ろうかと思っていたのですが……長くなりそうなのでやめました。

最近のこと書きます。

最近は、家にいます。本を読んでいます。

まあ、そんなもんか……。

というわけで、「アイコ、セブンティーン」です。2016年9月の作品です。作中の出来事は2019年です。もうとっくに2020年です。コンプソンズの旗揚げ公演でございます。

今ブックオフ行ったらだいたい100円になってる「2020年!世界はこうなる!」系の本だと思って読んでいただけると隔世の感があるかと思います。

今読むと、こりゃないだろう、な表現とかありますがそのままにしました。直したらきりがないので……。

東京オリンピックの年に愛子様が皇居から脱走する、というのがメインプロットになっていて、そこからにわか勉強の戦後史とか角川映画のパロディとかを闇鍋的にぶち込んだみたいな台本です。岡田利規さんの「ザハ」延期になりましたが、岡田さんより先に「ザハハディドの亡霊」というネタをやってます。まぁ、あんまり活かされてないので、だからなんやねんみたいなところもありますが……。

もしよければ読んでください!!!!!おうち時間を楽しく!!!!!


「アイコ、セブンティーン」

 舞台は、とりあえず転換しやすいようにいくつかに分かれている。

 客入れ、aikoメドレー
 開演

 ショパン「別れの曲」
 まず、映像が流れる(人力でスクリーンをやるかも?) 
 字幕「A MOVIE」
 「哀切なる少年の郷愁の日々に捧ぐ――」
 夕焼けの風景が流れている
 金子、登場(以下、モノローグに合わせた映像)
金子「初めて観る景色なのにどこか懐かしい。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。そこから導かれる幼い日の記憶。それを手繰り寄せるように、僕は今日もカメラを持って町に出ます。これは9月の夕暮れ時。夏休みが終わった日の帰り道を、小学生たちが歩いています。夏休みが終わってからの学校てのは随分、憂鬱なものでしたが、帰り道、秋の夕焼けを見ると自然にそんな気持ちもなくなって。その時抱いた感情もまた、(懐かしさ)でした。幼い日の僕がいったい何を懐かしむのか、今の僕には不思議ですが・・・」
 映像に(世界人類が平和でありますように)が映る
金子「至る所にありますよね、これ。昔は自分の周りだけが世界だったから、こんなに皆が祈っているのになんでニュースでは悲惨なことばかり報じられるのだろう、と不思議でしょうがなかった。お寺にお参りする時も、神様に世界の平和をお願いしたものです。今の僕は、目の前のことに精いっぱいですが・・・あ、申し遅れました。金子といいます。職業は映画監督です。これから皆様を懐かしいあの日へとお連れする案内役を務めさせていただきます。さてこの映像は・・・マクドナルドですね、マクドナルドにいるこの少女。おいしそうにポテトを食べてますね、僕はいつもガラス越しに彼女を見ています。名前は知りません。あまりにおいしそうにポテトを頬張っているので、僕は彼女を、おいしんぼう、と呼んでいます。おーい、おいしんぼう」
 ぶった切るような爆音と共に暗転
 「1945年、7月」
 明るくなると逃げまどっている人々
 中央に、石井と男1がくる、なにか話している
 他の人たちは、箱を持ちながらあっち行ったりこっち行ったり
 爆音の度、悲鳴と怒号
石井「(たまりかねて)うるさい!」
 止まる人々
石井「なんで叫ぶの、今喋ってる俺、今ね、俺・・・すっげー重要な台詞喋ってた。だからさ、叫ばせないで!叫ぶと!叫ぶと頭が真っ白になって、うっ、て、なっちゃって、うっ、てなるから・・・次のセリフ出てこなくなるんだよ、ねえ、今俺頭真っ白。やばいよもう、今の俺ね、ただ佇んでる。もうここね、今虚空?虚空ってか、なんだろ、この宇宙にちっぽけな僕一人きりみたいなもう、谷川俊太郎っぽい境地?・・・うん、段々何言ってるか分かんなくなってきたところで、もう一度君たちに問う。何で叫ぶの!?」
1「爆発してますし」
石井「そうだけど」
2「燃えてますし」
石井「そうだけど」
3「だけど?」
石井「爆発させたの、誰?」
 何人か、ちらほら手を挙げる
石井「で、燃やしたのは?」
 何人か、またちらほら手を挙げる
石井「それ、誰の指示でやってるの?」
 全員、石井を指す
石井「うん、じゃあ、何で慌ててんの」
1「爆発させた結果、爆発してますし」
2「燃やした結果、燃えてますし」
3「慌てたほうがいいと思いまして」
石井「なんで?」
4「戦争中だからです」
石井「は?」
1「いや、戦争中に燃えて爆発してますみたいなところがあったらそれはなんかもう、わー、みたいな、北島三郎みたいな感じありませんか?」
石井「祭りじゃないから・・・え、ちょっと困るわそういうノリ」
1「だめですか」
 この辺りから、誰か、一定のタイミングで無意味に炭酸水を撒く
石井「みんなわーってなったら、戦争、成り立たないでしょ。君たちにはさ、なんか、爆弾仕掛けましたけど何か?燃やしましたけど、何か?みたいな、見返り美人なノリでね、やってほしいんだけど」
2「それじゃ、犯罪じゃないですか」
石井「そうだよ・・・いやそうじゃないよ!戦争!で、君たちが持ってるの、何」
2「(ヤバめなファイル入ってるからあんま開けるな)って書いてます」
石井「(別の人に)それは?」
3「(本当にやばい機密情報だから絶対に開けるな、開けるなら燃やせ)って書いてます」
石井「そういうことだよ、いまやってるのは。分かんない?」
4「でも日本は負けるんですよね」
石井「え、あ、まあ」
4「帰れるってことですよね」
石井「帰りたければここにあったもんは全部なくす、分かった・・・?てか、それ何」
4「遺骨です」
石井「誰の」
4「友達です」
石井「(中を見て)骨多すぎじゃね」
4「どれが友達のか分かんなかったんで、こんくらい集めればひとかけくらい入ってるかなって・・・」
石井「アバウト過ぎるだろ」
4「でも・・・多いほうが楽しくないですか、死んだほうも」
石井「は?」
4「遺骨パラダイスっていうか」
石井「いや、死んだほうからしたら・・・地獄の釜だろ、これ」
4「うわ、かわいそう(遺骨を撒く)」
石井「撒くな、撒くなよバカ」
4「すみません」
石井「・・・それは、何」
 糸に繋がれた謎の生物
5「秘密裏に開発された新種の生物です」
石井「何の役に立つんだ」
5「女性の強い味方です」
 5、6(女)に合図
6、生物に触る
生物「ルナルナ」
5「安全日です」
 6、ガッツポーズ
石井「・・・は?」
5「戦時における性の管理に役立つのではないかと」
生物「ルナルナ」
石井「え・・・きもい」
7「あたしもー」
 7(女)、触る
生物「(野太い声で)ルナルナァ!(激しく吐血)」
5「危険日です」
7「気をつけよ」
6「あたしも!」
生物「ルナルナルナルナア(激しく吐血)」
6「あら」
 生物、起き上がらない
5「ルナルナ?ルナルナ?」
生物「(微かに)ルナ・・・ルナ・・・(死ぬ)」
5「ルナルナ!ルナルナ!」
 7、8泣いている
石井「ちょっと・・・あの・・・始まって5分も経ってないんですけど・・・てかさっきから何?何やってんの君!無意味に炭酸撒かないで」
医者「あ、ドクターペッパーです」
石井「いやドクターペッパーだからいいってことにはならない」
4「医者ですよ、彼」
石井「それも関係ない」
医師「悲しき失恋のやけくそです、一人の男の失恋のやけくそからこの飲み物が生まれました」
石井「うん・・・ちょっと、君、置いとくわ、ごめん、一旦置いといて、あのさ、箱の中でさ、これは本当にやばいから絶対に開けるな、みたいなの書いてある箱、ない?」
2「そんなんばっかですよ」
石井「いやなんかもう、一番やばそうな箱、なかった?なんかやばい中でも更にやばいみたいな、マトリョーシカみたいなやつ」
3「あ、それなら」
石井「お」
3「さっきあいつが」
 3、4を指す
石井「え、ちょ、マジ、どこ?」
4「いや、知らないです」
石井「いや、知らないとかじゃなくて」
4「知らないっす」
石井「お前・・・そうか、友達の遺骨ってお前」
 4、石井に遺骨で目つぶしをして逃げる
石井「わ、おま、遺骨で目つぶしすんな・・・通常の目つぶしより・・・気が滅入る!」
 4、逃げていく
石井「追いかけて!追いかけろよ!」
 全員、気が滅入っている
石井「なんでお前らまで気が滅入ってんだよ・・・!おい、帰れるんだぞ!日本に!」
 全員、盛り上がって追いかけて、去る
石井「いやだから、祭じゃないから!(言いながら去る)」
 刑事、登場
刑事「(スマホを見ながら登場。客席を向き)ああ、どうも、あなた方もアイコを探しに来たんですか。ネットで情報見て?見つけました?たぶんね、この辺にはもういないですよ・・・私ですか?私もまだ見つけていません。でもあなた方より多分知っていることがある。教えてあげましょうか?教えましょう。私は焦らしたりするのが苦手なんです・・・。アイコ、それは一人とは限らない、複数とも限らない。アイコ、それは現在の人物とは限らない。無論過去の人物とも限らない。アイコ、それは現実の人物とは限らないし、虚構の人物とも限らない・・・以下の点に注意して、探してみてください。それでは」
 歩きスマホで退場しようとするとルナルナとぶつかる
村上「すみません・・・」
ルナルナ「ルナルナ」
村上「え?」
ルナルナ「ルナルナ(指をさす)」
 そこに愛子がいる
 ブリッジしている
愛子「みなさん、こんにちは、愛子っていいます、2001年12月1日生まれの射手座、現在17歳・・・」
 男子学生123、やってくる(村上、何かアイテムを被って学生2に変貌する)
 口々にアイコー、アイコー、と叫んでいる。
男子1「愛子!何してんだよ!」
愛子「独白」
男子2「独白!なんでそんな体勢で独白してんの!」
愛子「独白の新たな地平、開拓したくて」
男子1「すげえ!やっぱすげえな愛子は!」
男子2「さすがだな」
男子1「かっけえ!おい、まじかっけえよこれ!レインボーブリッジって呼ぼう。あはは。おい、てかお前何聞いてんだ」
 男子3、イヤホンで何かを聞いている
 奪い取る男子1
男子1「なんも流れてねーじゃん、何これ」
男子3「・・・ジョンケージ」
男子1「すっげえ!お前もすっげえ愛子も凄いしお前も凄いし、なんかもう、表現できない。表現がおっつかなくてすげえ!すげえしか言えねえ、ばかじゃね俺!」、
愛子「ちょっと柳沢、朝からうるさいよ」
男子1「いやだってジョンケージ聞いてんだぜ!」
愛子「知ってんのかよ」
男子1「ジョントラボルタとニコラスケイジを足した、なにかだろ!」
男子3「ちげーよ」
男子1「アクション的な」
男子3「だからちげーって!」
男子2「柳沢、ちょっと黙れよ」
 男子1、柳沢の警察24時のネタをやり始める
男子3「勝俣、勝俣お前うるさいよ勝俣」
男子1「勝俣!?俺勝俣なの!?柳沢なの!?どっち!?」
愛子「ちょっと、落ち着こう一回、何かあの・・・勝俣でも柳沢でもない、なんか、誰でもない」
男子1「マジ!?俺誰!?俺は誰なの!?」
愛子「知らない、あなた誰」
男子2「まああえて言うとカスみたいにある勝俣と柳沢の要素が、こう・・・エントロピーしちゃってるなにか」
男子1「マジ!?やべえアイデンティティの危機だ!フロイト!フロイト呼んでフロイト、おーい、フロイトー!」
 去ってゆく男子1
男子2「何だあいつ・・・・」
男子3「なあ、愛子」
愛子「何?」
男子3「俺、前から言いたいことあってさ」
男子2「おいバカ、やめろよそういうのは」
男子3「ちげえよ、俺は愛子に追いつきたいんだよ」
愛子「ここにいるよ」
男子3「ちげーよ、俺はどんどん遠くに行っちゃう愛子に追いつきてえんだよ、愛子はどんどん成長しちまう、俺らは置いてけぼりだ。だから俺、本読んで映画いっぱい観る。そして体験する」
男子2「何を」
男子3「こないだすげえ体験したんだ、ほら俺って、せいや好きじゃん?」
男子2「いや知らないけど」
男子3「好きなんだよせいや!で!せいやでラーメン食ってたら、店のBGMで、クラフトワーク流れてきてさ・・・ちょっとヤバいなと思って」
男子2「何が」
男子3「だってせいやって言えば浜崎あゆみとかエグザイルとか、そういう、なんていうかな、田舎を暴走するデコトラみたいな音楽が流れていてほしいわけじゃん。」
男子2「どういう音楽だよ」
男子3「とにかくそれがせいやのさ、ブルーカラー向けの味と絶妙にマッチするわけよ。そんなせいやで俺、クラフトワーク聞いちゃった。すごいなんか・・・オイリーだった。機械油の味がした。俺もう家系とか無理かもしれない、だからジョンケージ聞いて耐性つけてる」
愛子「何言ってんのさっきから」
男子3「ノイズバンド組みたい」
男子2「そんな話してた!?」
男子3「俺は愛子にノイズで追いつくんだよ!」
男子2「グミチョコ読みすぎだよお前(たたく)」
 男子1、戻ってくる
男子1「フロイトいないから香山リカに聞いたらもっとわけわかんなくなっちゃった」
男子2「一生そのままでいいよ!(男子3に)お前、愛子に追いつくなんて無理だぞ」
愛子「なんで、ここにいるのに」
男子1「(なんか色々騒ぐ)」
男子2「うるせえよ!・・・あのさ、愛子は、皇室の人なわけじゃん」
男子3「だからって」
男子2「いやでも見ろよ(客席を示し)この、SPの数!どんだけ頑張っても人件費すら追いつかねえよ」
男子3「じゃあ俺通常の国民の五倍税金払う」
男子2「ノイズバンドじゃ無理だよ、普通に、やれ、ノイズ好きなら、普通にノイズバンドやれよ」
男子3「普通のノイズバンドなんて嫌だよ、全然物足りない。そんなの、キーボーのいないヒロシ&キーボーと同じだよ!」
男子1「それただのヒロシだろ」
男子3「ホントだ!ヒロシだ!ヒロシとか普通!つまんな!苗字生島にしてやろうかな、生島ヒロシ、うーわ、生島ヒロシとか普通のおっさんじゃん!」
男子1「お前もう普通に生きろ!」
 おばさん、通りかかる
男子2「あ!あのおばさん万引きした!」
男子3「キーボーだ!」
男子1「キーボー!」
 おばさん、追ってくる男子学生たちに強烈なビンタをして逃亡
男子たちもめげずに追う
愛子「(M)普通に生きてたつもりでした。私も。周りはそう思ってないのはわかってるけど。でもこの人は特別っていう視線を受けながら生きてきた私が思う普通って、やっぱり普通じゃない?それをあなたに聞きたいんです。今は2019年、9月、来年は東京オリンピック。私は17歳です。はい、そんな短い私の半生を聞いてほしいと思います、他でもないあなたに」
 先ほどの1945年の集団がやってくる
 (どこだー、とか言いながら)
愛子「あ、ちょっと!」
石井「何、だれ?」
愛子「今忙しい?」
石井「当たり前でしょ、日本負けるんだから」
愛子「ちょっと付き合ってほしいの」
石井「何に」
愛子「回想シーン!」
 愛子、集団の輪に飛び込む。すると舞台は2001年11月に
 佐藤浩市、登場
佐藤「(物凄く力んで)経過は、良好です」
記者1「どう良好なんですか、皇太子殿下はずっとついてらっしゃるんですか」
記者2「具体的に、雅子さまの容体はどうなんですか?」
記者3「分娩室に入るのはいつですか」
記者4「記者クラブなめてるんですか」
記者5「お得意の隠蔽ですか」
佐藤「ちょ、俺の話を聞いてくれ!聞いてくれ!・・・(物凄く力んで)たった7日間しかなかった昭和64年、通称ロクヨン・・・その年に生まれた人は、珍しい!」
4「何言ってるんですか」
佐藤「特に意味はない!ただ、これから生まれてくるお子様を思い、(感極まって)宮内庁の佐藤浩市としてでなく、俺個人として、静かに見守ってくれることを願う」
 皆、口々に、大袈裟ですよ、プルプルすればいいと思ってるんですか、とか芝居が臭い、とか。
1「おい!速報入ったぞ!NHKだ!」
 皆、佐藤を吹っ飛ばし、何だよ、とかやられた、とか言いながら佐藤を跳ね飛ばして去る。
佐藤「・・・子供が生まれることが・・・それがどういうことか、皇室記者はそんなことも分かんないのか!」
 小田和正が流れる
愛子「2001年12月1日、私は生まれました。人を愛し敬う心を大切に、と願いを込められ、愛子、と名づけられました。ちょっと、小田和正、止めてください。私が生まれた12月1日、同じ誕生日の有名人は、藤子F不二雄、ウディアレン、そして、宇都宮けんじ。記念日は映画の日。日本で初めて映画が公開されたのを記念して作られたんだそうです」
 アイコ、登場
 愛子、以下、アイコの台詞に合わせてマイム(必要あらばモブも出てくる)
アイコ「その後私は渋谷青山通り沿いにあるこどもの城で他の子どもたちと集団生活に親しみ、学習院幼稚園に入園、そのままエスカレーターで初等科へ。風邪で欠席したり乱暴な男の子がいるショックとかいろいろあって不登校になったりもしましたが回復、さらにエスカレーターで女子中等科に入学、その年には伊勢神宮にも参拝して私は天皇家の人間として・・・」
愛子「(マイムやめて)てゆうか、あなた誰」
アイコ「え、アイコだけど」
愛子「いやあたしが愛子」
アイコ「うん、知ってる」
愛子「やめてよややこしいから」
アイコ「いや、二人いた方がいいよ」
愛子「何で」
アイコ「さっきからちょっと、大変そう、
でも二人いればこっから1時間50分くらい、負担が半分になるよ?」
愛子「ふたりでひとりってこと」
アイコ「そう」
愛子「何で」
アイコ「意味はない。無駄に二人一役、どう」
愛子「意味が分からない上に混乱を招く」
アイコ「でも今ってそういう時代じゃん。何が起きてもおかしくないっていうか」
愛子「まあ、確かに」
アイコ「だからさ、あと二時間弱、駆け抜けよう、二人で」
愛子「よろしく」
 握手する二人
アイコ「そう、今は何が起きてもおかしくない時代、2019年。どんなにおかしいことが起きても、まあ何が起きても、ねえ、みたいな空気が日本中を覆っていました」
愛子「何故そんな空気になったかって?それを知るには2018年に起きたことを知る必要があります」
アイコ「この年、安倍総理が強いリーダーシップを発揮し、皇室典範を改正。生前退位が実現しました」
愛子「これにより安倍総理の支持率はうなぎのぼり、任期も延長、やっとこさ改憲に手をつけることになります」
アイコ「じゃあ、あたしたち皇太子になるってこと?」
愛子「そこに関しては色々ごちゃついて棚上げ、とりあえず2018年、(紙を出す)光文元年に時計の針を」
愛子&アイコ「プレイバック」
 皇居、夜
 鈴虫の音
 雅子がいて、それを追い、浩宮登場
浩宮「雅子」
雅子「・・・殿下」
浩宮「また、深夜徘徊か」
雅子「散歩よ」
浩宮「じゃあ、深夜散歩か」
雅子「そうよ」
浩宮「そういうタイトルの番組、ありそうだな、吉田類とかで」
雅子「ただの飲み歩きじゃない、それ」
浩宮「いずれにしても、深夜散歩はよくないよ」
雅子「どうして」
浩宮「朝に影響するから、すごく」
雅子「なんか・・・当たり前すぎて逆に突っ込みたくなるくらい正論ね」
浩宮「でも、突っ込みどころがない」
雅子「うん」
浩宮「じゃあ・・・勝った」
雅子「何に」
浩宮「君に」
雅子「勝負してたの」
浩宮「いや、わかんない、ごめん、適当だった」
雅子「わかんなくて適当、か・・・」
浩宮「ごめん、じゃあ、今から適当やめる。おっ、適当マン、捕まえた、どっかいけ、えいえい」
雅子「・・・馬鹿にしてんの?」
浩宮「・・・ごめん」
雅子「憲法、変わっちゃうんでしょう」
浩宮「え、ああ、どうかね」
雅子「戦争、するのかしら」 
浩宮「させない、させない」
雅子「どうやって」
浩宮「新しい憲法だと、俺元首になるからさ、だから、憲法の名前変えちゃおうかと思って」
雅子「なんていう名前にするの」
浩宮「なるちゃん憲法」
雅子「ああ・・・」
浩宮「何か、この憲法の名のもとだと、しにくそうだろ、戦争」
雅子「しにくそう」
浩宮「名前の残念な感じが、抑止力になるんだよ」
雅子「じゃあ、日本の平和は守られるわね、残念な憲法の名前で」
浩宮「まあ、そうなるといいけどね」
雅子「今日は大事な話があるの」
浩宮「(身構えて)どうした、藪からスティックに」
雅子「(無視)帰らなきゃいけないの」
浩宮「帰るって、どこに」
雅子「故郷に」
浩宮「え?小和田家?別荘?軽井沢?」
雅子「違うの」
浩宮「え、待って待って、え、離婚したいとか、そういうあれ?」
雅子「違うの」
浩宮「一生守るって言うたやん、一生一緒にいてくれやて」
雅子「聞いて、私ね、私の故郷は、あそこなの(上を指す)」
浩宮「え」
雅子「月」
浩宮「・・・おう、おう、おう」
雅子「世界の平和の秩序を監視する役割を担ってきたんだけど、ちょっともう限界みたい」
浩宮「・・・あー、はー、え・・・いつ」
雅子「今」
浩宮「今!?」
雅子「事前に言っても、頭がおかしくなったって思われるだけだろうし」
浩宮「あ、うんまあ、ちょっとうん、全然整理できないな、うんとりあえず」
雅子「ごめんね、月の人間は、お別れに関してはドライなの、じゃ」
 雅子、浮き始める
浩宮「え、うわ、浮いた、浮いた。え?」
雅子「愛子に伝えておいて、人類みんなの幸せはあなたに任せましたって」
 雅子、去っていく
浩宮「おーい!おーい!雅子―!」
 愛子登場
愛子「というわけで月に帰ったお母さん。日本中にこのニュースが駆け巡った時、流れた空気は、なんというか、お、おう、という感じというか、なんかあまりに突拍子もなさ過ぎて、皆どう反応したらいいかわからない、という感じで、この年の流行語は、お、おう、に決まりました。あと2018年と言えば」
 アイコ登場
アイコ「建設中の新国立競技場で死亡事故が多発」
 工員、1、2、3いる。
工員1「見たか、お前も」
工員2「ああ、見た」
工員3「どんなだった、貞子?カヤ子?」
工員2「いや、結構恰幅がよかった」
工員3「え?」
工員1「しかも外人だった」
工員3「外人?」
工員2「そうそう、恰幅のいい外人」
工員3「おい、もしかしてそれ・・・・ザハハディドなんじゃないか」
アイコ「建設中の地にはザハハディドの怨念がとりついている、という噂が作業員たちの間でまことしやかに流れました」
 義母アイコ登場
工員1「あ、来た」
 義母アイコ、構わず除霊を始める
工員3「え、誰?」
工員2「霊能者の義母アイコ先生だよ」
工員3「え、義母アイコって、もう死んだんじゃ・・・」
アイコ「国立競技場には他にもたくさんの霊能者が集まり、霊能力の腕を競っています」
 何人か霊能者登場していて、除霊をしている。
アイコ「さながら暗黒武術会の様相を呈しています」
愛子「アイコ・ブームの到来」
アナウンサー「えー、現在月に帰った雅子さまの娘、愛子さまに注目が集まっていまして、渋谷のクラブではaiko、愛子さまではなく、星野源の元カノの方のaikoの曲をかけ続けるイベントが盛況です」
 霊能者たち、客に変わる
aikoに合わせて、aikoっぽい踊りをしている。(ボーイフレンド?)
レポーター「ご覧のとおり、皆さん踊りもなんか、aikoっぽい感じでなんか、ふわっふわってんですかね、そんな感じで、aikoさながら、気分はMステって感じで、踊っています」
愛子「(マイクとか持って)aikoってどこで踊りを習得したの?この、このなんかこの、踊りは、練習して出来るもんじゃなくない?」
アイコ「aikoは恋多きミュージシャンだからね、きっと数多くの恋の経験から生まれた、求愛ダンス的なあれなんじゃない?」
愛子「なるほど、そっか」
アイコ「踊ってみ」
愛子「(歪な動きをする)」
アイコ「その動きは、初恋もまだだね」
愛子「うん」
 謎の男登場
謎の男「愛子さま、お久しぶりです」
愛子「え?」
謎の男「僕ですよ、僕。覚えてないですか」
愛子「どこかで、お会いしましたっけ・・・」
アイコ「またあんた?」
謎の男「お、にせアイコ」
アイコ「にせじゃねえよ」
謎の男「あのですね、せめて二人で一役なら、どっちかが偽物とか、実は多重人格とかそういう、意味がないと、ダメだと思うんですよ」
アイコ「意味なんていらないって」
謎の男「(客を示し)混乱するでしょう」
アイコ「SPだから、みんな、SPだからなんか、神妙な面で、察してくれるはず」
謎の男「そんな勝手な、あ、愛子さま僕はですね」
 アイコ、指でビームを撃つ
 死ぬ謎の男
愛子「なに今の」
アイコ「霊丸・・・いいから喋って」
愛子「・・・あ、えー、私は今からお母さんに託された世界平和のために走り始めます。前置きが長くなりましたがあと一時間五十分くらい、お付き合いください。アイコセブンティーン、はじまりです!」
アイコ「OPテーマは、失踪したギターが復帰し、完全復活。ベースボールベアーで」
愛子「17歳」
 イントロと共に暗転、歌に入る直前で明転。


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