作業日誌7(公演中止につきまして)

先ほど発表されましたが
コンプソンズ#7
「何を見ても何かを思い出すと思う」
が、公演中止となりました。
まずは楽しみにしてくださっていたお客様、誠に申し訳ございません。
そして今回の王子小劇場さんの決定を支持します。(声明の文面に若干引っかかるところはありますが…)
と同時に、公演を行うことを決断した他団体さんを応援致します。近いところでは、鵺的さん、ゆうめいさん、ウンゲツィーファさん、盛夏火(呼び捨て)を観に行きたいです。応援してます!

コンプソンズの公式でも主宰の星野から発表があります。そっちには今後の対応や動きなど、具体的な情報があります。

コンプソンズは星野と私が主宰ということになってますが、制作面のほとんどを星野に任せています。
私がやっているのは書いて、演出して、自分で書いたセリフに何故かアワアワしながら芝居をすることです。

私がここに書くことは、ほとんど自分の気持ちの整理の問題です。
あと、これは作業日誌ではありますので、「何を見ても何かを思い出すと思う」がどのような作品だったか、これまでの制作過程を解説?し、来るべき未来の公演実施に向けて、お客様の興味関心を繋いでいけたらなぁという下心もあります。

とは言え、実はどういう作品になる予定かはほとんど作業日誌1(https://note.com/compsons/n/n5da6765f2710)
に書いてありました。まだこの時点では完本はしてませんでしたが概ね外れることなくこんな感じの台本になりました。

私は高校生の時分、アメブロで仲のいい稽古場であることをアピールする演劇団体を「ムラ社会」と嘲笑し、罵倒してましたが、今やその村の住人となりました。てか、ストイックにシリアスに馴れ合わずに作品作りもいいけど気持ちよく仲良くできるならそれに越したことはないですよね。でもまぁこういう嫌な目線は拭えず僕の中にあります。

また、私は周囲の演劇人に「演劇より映画の方が、いや小説の方が好き」ということをよく言っていました。照れ隠し的な面もありますが、わりと「演劇て売れてもそんな金にならなそうだし、やっぱカメラを止めるな!みたいに映画で一発当てたいな〜、でもやっぱ芥川賞とか直木賞も欲しいな〜」
と、考えてるフシがあります。

つまり演劇へのある種の苦手意識があり、「演劇人」と胸を張って言えるほどそんなに演劇のことを真剣に考えてない、ということです。台詞覚えるの苦手だし。そういえばこないだあるオーディション受けたら、緊張しすぎて発汗が止まらず、覚えた台詞も言えず、ガタガタ震えました。井の中の蛙だ俺は。すみません、全然関係ない話でした。

コンプソンズの始まりは、「卒業公演やたら上手くいったし、もしかしたら売れちゃったりして〜」という楽観的な希望から始まりました。(私の希望か星野の希望か二人のかは忘れました)
さすがに始めるとキツさも分かってきたので、私はコンプソンズを「半年に一回、人前で書いたものを人前で発表できる機会」と考えることにしました。
そこで「書く」上での筋力を身につけるのだ、と。
あくまで書くこと、それを仕事に繋げることが最優先でした。あとは知らんという感じなので、始まりは演劇ユニットでした。
しかし、性格がいい加減なので、ストイックに「俺が書いて俺が好きな役者集めて俺の美学の元に上演」を実施出来ず、誘うと出てくれる大学の同期や後輩、仲のいい地元の友人でなんとなく固定化し、なんとなく劇団になりました。ホームページの写真ではキメてますが、「あれなんでこんなことになってんだろ、まぁいいや」と、大半の人が思ってる気がします。多分。

ここまで書いて、でも他の団体さんもそんなもんかな、と思い始めてきました。

グダグダと書いて何が言いたいかと言うと、そんな、「商売根性でやってるくせにいい加減」な私にとって最重要課題は当たり前ですが、
「たくさんのひとを面白がらせられるか」
「たくさんの人を集められるか」
この二点だったわけです。

そのために、他の若手団体が扱ってなさそうな題材に手を出したり、マニアックなネタをやってコアな人に褒められようとしたりしてました。テーマとかやりたいことは「安倍晋三が最低なのは自明だから安倍晋三が最低だってことさえ抑えてればなんとかなるだろう」という感じでやってました。

そして今回の公演なんですが。

前々回と前回の公演、「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」「ノーカントリーフォーヤングメン」で、パロディやパッチワークを用いず、人物造形とその関係でドラマを展開させることが自分にも出来るのではないか、という手ごたえを何となく掴み始めていました。

そこで、ポンジュノがスコッセシから教わった、「最も個人的なことが最もクリエイティブ」をストレートに行こうと決めました。
また今の筆力なら、物語の展開に派手なうねりがなくても、充分「持つ」ものが書けるのではないか、とも考えました。
(また余談ですが私は、「村上春樹は短編はいいけど長編はダメだよね〜」という、一部読書家の通説から抜け出すことにしました。村上さんが「僕は長編作家であり常に進化してる」と言えば、進化してるのです。進化してることに気づけない読書家が悪いのです、そう思うことにしました。何でかよく分かりませんが、そう思う方が色々面白がれると思うからです)

で、結果いけました。あ、いけるはずでした。

私は「あんまり面白くなかった」と言われても「まぁ人それぞれですからね〜そうですよね〜」とわりと受け入れられる人間でした。それは作品への個人的な思い入れよりも、上に述べたように、お客様にどう楽しんでもらうかが遥かに重要だったから、というのがあるかと思います。(天才ならこの二つは難なく両立できるんですよね〜。新海誠監督とか)

でももし、今回この作品が上演されて「あんまり面白くなかった」と面と向かって言われたら、私は不機嫌な顔になり、「それはあなたが悪いかも、よ?」ともしかしたら言うかも知れません。
そういう作品が書けましたし、そういう演劇ができそうでした。

「最も個人的なことが〜」をストレートに行き過ぎて、単純に個人的な内容なのです。
そもそも今回、私が「金子」役を演じる予定だったので。個人的過ぎて安倍晋三批判をし忘れました。
つまりこの作品が否定されたら「俺が否定されてる」と同義になるので、「人それぞれとかじゃねえよ!」となってたはずです。多分。

何より王子スタジオで3000円です。
今だから言いますが、結構強気の価格設定です。現に王子スタジオでやる団体でも一番高いです。多分。
(僕個人としてもゴー出した記憶があります。自分で自分の首を絞めるために)なので、それに見合うだけの努力もしてきました。台本は一ヶ月以上前に上げ、クオリティを優先。よく言われる雑、ヘタウマ的な部分をなるべく潰そうと思いました。
あんな場所(とか言ってすみませんがやっぱりどう考えてもあんな場所です)でやってどうしたら、
「面白いけどスタジオでこの値段は高い」
と言われないか?
上演場所が決定してから、一年ほど、ずっと考えてました。その内に小劇場のチケット代の相場自体が上がってました。それはまぁいいや。とにかく王子スタジオで3000円でも、心配はない策が出来たと思います。

そしてこんだけお前自身のことを書いといて白々しいですが、なによりも、役者さんです。

選んだ時点から間違いない布陣で、とは考えてましたが、最初の読み合わせで、「これは行けるな」と思いました。稽古場では、私が「意図せず、偶然出現したとてもいい」瞬間が何度か生まれました。

東野良平さんはとにかく面白いです。そして笑いの引き出しがめちゃくちゃ豊か。台詞の言い方やスピード感などを細かく話し合いながら(大宮交えつつ)「笑い」を共に作っていく時間はとてもクリエイティブで楽しい時間でした。多分本番までにもっともっと色んなものが生まれていたでしょう。これを機に、定期的に出てくれたりしたらいいなと思ってます。

小野カズマさんは、地蔵中毒での暴れぶりと盛夏火でのあまりのナチュラルさのギャップに驚き、誘ってみました。最初の読み合わせの時に、ある箇所が良すぎて口がパクパクしました。相手役との密な空気感を作り上げる手つきは才能としか言いようがないですね。演出への対応もめちゃくちゃ素早く、繊細で器用なことも出来るので、「あいつは不器用」と私に言った東京にこにこちゃんの主宰つぐとよは嘘つきだと判明しました。あとなんか謎に色気がありますね。

石渡愛さんは、ここ一年は石渡さんの芝居はなるべく観ようと思って観てたのですが、高頻度で不倫する役をやっていて、あとちょっと暗い役が多い気がしたのですが、普段の石渡さんは明るく元気で素直で超良い人なので、なんかそういう普段の魅力も出しつつ、あの確かな技術力を発揮できる役ないかなと考えつつ書いた役を見事にこなしてくれました。(悲しきかなそれも稽古場で…)掛け合いの芝居してる時とても楽しかったです。スターの風格がある、素晴らしい役者さんです。

ここから先書くのがあれですがコンプソンズの人々も素晴らしいです。素晴らしいですが全員に書くと最後の方に息切れして、卒業前最後のホームルームの、個々の生徒にメッセージ言おうとして段々言うことがなくなりつつ惰性で泣く担任の先生みたいな感じになりそうなのでこの辺でやめます。
(「〇〇君は…よく電気を消してくれました」みたいなやつ)
とりあえず細井くんはシンクロ少女さんとの兼ね合いがあり、出番が少ない役ですみません。

何よりみんなで居ることはとても楽しかったです。中止の報が来る前にはみんなで温泉に行く予定もありましたし。

お分かりの方もいるかも知れませんが私はこの文章で在りし日に嘲笑していた、
「仲の良い信頼の置ける最高の座組で最高のお芝居を作ってます!(ました!)」
をやろうとしています。なんとかそうならないように迂回しようとしてますが目的地はそこなのでどうしたってそういう文章になります。とても恥ずかしいです。

幸いこの作品は上演されることが決定していますが、それでも、この時期に、王子スタジオという場所でやることの意義、意味は確かにありました。
さっき「あんな場所」と吐き捨ててなんだお前ですが、結果的にベストな場所とタイミングだった、という思いに変わりはありません。なのでやはりとても悔しく残念です。

コロナウイルスの影響であまりに多くの文化、芸術イベントが中止になってます。
当たり前ですが苦しい事情は皆一緒ですし、我々より苦境に立たされてる団体さんはもっと多いでしょう。ですが、やはり私はアピールしたいのでしょう。
この時期に数多ある「公演中止」とこっちはワケが違うんだぞと。
それはこんなに長々と書いてる時点でお分かりかと思います。うーん、でもワケが違うとまでは言いすぎかな。まぁいいや。

それくらい特別な公演になる予定だったということです。

中止の報を受けた夜、私は深夜3時から朝6時まで「アベンジャーズ/エンドゲーム」を初めて観ました。他のはやつはそんなに観たことないので知らないヒーローがいっぱい出てきて何の話をしてるかよく分からないまま戦ってました。でもめちゃくちゃ感動しました。

その日はアベンジャーズのことを考えてたら何とか乗り切れたので文化芸術って大事だなぁとしみじみ思います。最初にも書きましたがこの状況で上演を続ける団体に敬意を表します。

そしてこの文章を書いてる最中もSNS上では心配してくださるお客様の声がいっぱい届いてきます。本当にありがとうございます。 皆様の支えあっての活動だと、心より思います。

もし、ここまで読んで何が残るものがあったら、是非「何を見ても何かを思い出すと思う」という公演のことを、心の何処かに留めて頂きたいです。この作品は必ず上演されます。来るべきアッセンブル!に向けて何卒よろしくお願い致します。

そしてこんなに書いてしまい、自ら上げ切ってしまったハードルを私は今、どう超えようかと焦っています。しかし超えます。超えて、皆様にとって忘れられない観劇体験をお約束、はできませんが、(それこそ人それぞれなので)最大限努力して参ります。

最後になりますが、安倍晋三は早く総理を辞めてください。

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