「にてないモノマネ」上演台本公開について (安倍晋三さんと星野源さんをめぐって)

前書き?です。何故戯曲を今公開するのか、ということについてです。長いので興味ない方はすっ飛ばして大丈夫です。また、コンプソンズの旗揚げ公演である「アイコ、セブンティーン」も近日公開するつもりでいます。

コロナ禍で、「エンタメ業界に何かできることはないか」という動きがわりと盛んですが、その流れで、星野源さんの「うちでおどろう」がありました。で、皆さんご存知の通り安倍晋三さんがコラボ動画をあげて、なんだか大変な騒ぎになりました。昨日のことです。

私は件の動画を見た瞬間、なんか底が抜けるような、怒りとか悲しみとかじゃなくて、ほとんど恐怖に近い感情を抱きました。

同時に、「今まで俺は何をやってきたんだっけ」と考えました。コンプソンズの作品には、その前身である、明治大学の演劇サークル、「実験劇場」での卒業公演「にてないモノマネ」から安倍晋三さんが出てきました。そこから今に至るまで、登場人物として出てこなくても、必ず名前は出す、あるいは、背景に滲ませる、ということは徹底していたつもりです。

しかし、なんでそんなことをしていたんだろう……。

わからなくなってきました……。

何故、わからなくなったのか、それすら分かりません。そもそもあの動画の何がそんなにショッキングだったのか?

あくまで「私のタイムライン上」での話ですが、普段は政治的な発言をしない方も、怒り、悲しみ、呆れ、絶望を表明していたように思います。そしてあの動画は、安倍晋三さんのツイッター史上最多「いいね」がついたようです。「たかだか、政府広報がミスっただけの話じゃないか、しょせん、おじさん政権なんだよ」とする向きもあると思います。しかし「安倍晋三さんがああいう使い方をする」という視点から見ても何の意味もありません。するでしょうそれは。鈍感なおじさんなのだから。するに決まってます。「星野源さんがああいう使われ方をした」というのが重要なのです。

私はここに「政治」と「サブカルチャー」を巡るなにがしかの歴史的帰結があるように思えてならないのです。「サブカルは死んだ」と言い続けて延命し、アイドルにひっついて延命し、それも終わりかと思えば、「サブカルとかもういいよ」と離脱しつつ甘く苦い思い出が着火して燃え殻、になり、あるいは、LGBTカルチャーの普及や人権意識の上昇に目くばせして「てかさ、誰が何を好きでも別に自由じゃない?」としたり顔で言うお前と俺に消せないサブカルマウンティングの過去。「NETFLIXすげー!」って叫ぶことで生き延びていたサブカル。「in living」が登場して「ぐぬぬと言いつつあえて見る俺」で生き延びていたサブカル。それは俺だ。こないだ渋谷で「サブカル卒業した人」と印字されているTシャツを見たけどあれは「絶対にサブカルはお前を逃さない」というテーマのコンセプチュアルアートだったのかもしれない。もう自分でも何言ってるか分からなくなってきた。でもとにかく、やっぱり、サブカルは、完全に、死んだのです。

サブカル……それは、ノンポリで居続ける態度です……あるいはノンポリっぽく居続ける態度と言いますか……つまり、政治的なこともふんわり考えているよとたまーにアピりつつ「でもやっぱりなんだかんだ言って、終わりなき日常を生きる絶望の国の幸福な若者だよね」という目くばせも忘れない……何か世間で大きな問題が起きると、茶化して笑いに変えてしまうか、たいしたことねえよ、と冷笑する……あるいは無視する……それが、そういう態度こそが、もう死なざるをえないのです……これからを生きる表現者は、「ネトウヨ!」と罵倒される覚悟を持つか、「パヨク!」と罵倒される覚悟を持つか……その2択なのです。たけきさん(僕の友人で、演劇団体「盛夏火」の主宰です)のツイートを借りて言うなら、これからの表現者は安倍晋三さんに「死ね!」と言うか「いいよね!」と言うかの2択です。その2択以外、もう選べないフェーズにあらゆる表現者は入ってしまったのではないか、と私は思います。

「いや何で?」と思う方もいるでしょうが、多分、論理的に説明するには、「コロナ後に中小企業がどんどん潰れて大企業が残って格差が広がりまくるであろうこと」とか「東京オリンピック2020の行方」とかを絡めないと無理そうです。それはめちゃくちゃ長くなりそうだし、できる自信がありません。

どうしても分からない方は「もし自分が星野源さん本人で、あの歌をこの時期に作って、ああいう使われ方をしたらどう思うか、どう振舞うか」を考えてみると、何となく伝わるんじゃないかなあ……と思います。めちゃくちゃ偉そうだなこの書き方。すみません。星野源さんにもすみません。あと、この投稿では、星野源さんが、安倍総理、とも、安倍首相、とも書かず、安倍晋三さん、と書いていたのにならい、全て「安倍晋三さん」と書くことにしました。まことに勝手ながら私はそこに、星野源さんなりの「死ね」を感じ取った気でいます……。

「政治とサブカル」……本来なら宮沢章夫さんに解説してほしいところですが、パワハラして謝らない人に頼っても仕方ないので、自分で考えなければなりません。しかしぐるぐると頭は同じところを回るばかりで、結論が出ません。

とにかくこの、「安倍晋三さんと星野源さん」への素早い反応としてひとまず、「過去戯曲」を晒してしまおうと思いました。全編読むのは有料で、あくまで試験的な試みですが。

大学の卒業公演の台本でございます。2016年2月の公演です。まだトランプは大統領になってないし、オリンピックもやる気満々な時です。「アベノミクス大成功!」も謳われ続けていました。シールズも活動していました。あの大人たちが彼らをバカにしてしまったから今があるのです。僕は応援していましたしデモも行きましたが、それでも後ろの方で弱弱しく声をあげることしかできなかったことを後悔しています。星野源さんのことが好きな女の子に立て続けにふられて星野源さんを恨んでいました。なので無駄に星野源さんに言及しています。今はリスペクトしております。そんな感じの4年前です。

今読むとそれは言っちゃいけないだろう、みたいなところもありますが、ほぼそのままにしました。また、普段から威勢よく「俺は安倍を辞めさせるために芝居をしてるんだ!」と豪語してるわりに全然手ぬるいです。手ぬるすぎ。この程度じゃ安倍は殺せないよなあ……。多分まだ、「僕たちは終わりなき日常を生きる絶望の国の幸福な若者なんだ」と言えたのでしょう。大学の卒業公演ですし、「これから僕たちどうなるんだろう、それでは歌います。いちご白書をもう一度……」みたいな部分の方が大きかったと思います。(留年しました)自分なりに色々勉強もしていましたが、それでも「やっぱりお前にとってコロナは自分事でも3.11は他人事だったんじゃない?」と、今、喉元に突き付けられてくる感じがあります。

前置きが長すぎました。

途中の部分(シーン5とシーン6)を抜粋して載せてます。予告編みたいな感じですね。全編気になる方はご購入ください。

「にてないモノマネ」 

主な登場人物

てつ シェアハウス「テラスハウス」のメンバー
ゆい 同右 
まや 同右
ようさん 同右
おたべ 同右

舞台
 上下二段に分かれている舞台
 他にこれといった特徴はない
(シーンの切り替えを一秒以内で済ますようにするため。俳優の出はけだけでなく、上の段から下の段へ、下の段から上の段へ、と俳優が移動することでシーンの切り替えを行う)

スライド
「2017年、平成が終わった、その一週間後、何故か秋篠宮フミヒトが天皇になった。日本全体に変な感じが漂い、変な感じの天皇になった、ナマズ元年」

シーン5
 秋篠宮と紀子、その娘佳子がいる
紀子「だめよ、ぜったいにダメ」
佳子「なんでよ」
紀子「だってどう説明するのよ」
佳子「誰に」
紀子「それは・・・国民に」
 秋篠宮が入ってくる
秋篠宮「どうしたんださっきから大きい声だして」
紀子「ねえ聞いてくださいよ殿下、いや陛下。佳子ったら、ICUやめてまた大学変えたいっていうんですよ」
秋篠宮「え、また?」
佳子「うん、いいでしょパパ」
紀子「陛下と呼びなさい」
秋篠宮「家ではパパでいいよ・・・佳子、ICUの何が不満なんだい」
佳子「なんか英語とかやっぱ向いてなくて、うん」
秋篠宮「お姉ちゃんを見習って英語を習いたいって言ってたじゃないか」
佳子「んー、でも皇族だしさ、大和言葉とか覚えた方がいいんじゃない」
秋篠宮「あー」
紀子「あーじゃないでしょあんた、あ、陛下、あ、パパ、あーもうめんどくさ」
秋篠宮「え、で、何、ICUやめてどこ行きたいの?」
佳子「慶応SFC」
秋篠宮「・・・なんでまたそんなハイカラな」
佳子「だって、トリンドル玲奈ちゃんとか、キュートの鈴木愛理ちゃんとかいるし」
秋篠宮「そんな、ICUだって負けてないぞ」
佳子「うそ!誰がいんのICUに」
秋篠宮「えと・・・平田オリザさんとか」
佳子「誰それ」
秋篠宮「なんか演劇やってる、立派な人だ」
佳子「演劇?だっさ」
秋篠宮「いや、平田さんは凄いんだよ、平田さんはね、日本の演劇を変えたんだ」
佳子「どんな風に」
秋篠宮「なんか、ちっさい声で喋ったり、後ろ向いたり」
佳子「は?なにそれ」
秋篠宮「いや、よく知らないけど・・・でも平田さんはただの演劇人じゃないんだ。本もいっぱい出してるし・・・それに、そうだ、鳩山政権の時大活躍したんだよ!」
佳子「ダメじゃん!鳩山とか!ルーピーじゃん!」
秋篠宮「いや、まあ・・・」
紀子「ちょっと鳩山さんのいいとこいいなさいよ」
秋篠宮「そんなとこないよ、、、」
 悠仁がやってくる
 一同呆然
 悠仁、髪にめちゃくちゃメッシュがかかっている
秋篠宮「おいちょ、マジか・・・」
紀子「悠仁、その髪型はなに・・・?」
悠仁「メッシュ」
紀子「見りゃ分かるわよ」
悠仁「いやもはやギルガメッシュだね、ギルガメッシュ悠仁」
秋篠宮「もうちょっと皇太子としての節度をだなあ」
悠仁「パパだってやってたじゃん」
秋篠宮「パパは一本しか入れたことありません」
紀子「そんなとこで威張るな」
悠仁「てか俺マジで皇太子?愛子ねえちゃんは?」
秋篠宮「声優になりたいんだってさ、女系だしね」
佳子「ねえちょっとあたしの話は?」
紀子「(佳子に)待って、悠仁、そんな髪型にして何を」
悠仁「カトゥーンに入る」
紀子「!!何言ってんの!?」
悠仁「これ以上メンバー抜けたらまずくねえか、さすがに」
紀子「あなたが心配することじゃないでしょ」
秋篠宮「そうだぞお前、せめてフィーチャリングとかにしなさい」
悠仁「いいね、カトゥーンフィーチャリング悠仁親王」
紀子「よかないわよ」
佳子「じゃー、あたし、願書勝手に出しちゃうから」
紀子「だからダメって!」
佳子「スタッフー、スタッフー!願書持ってきて」
紀子「宮内庁の人をADみたいに言わないで!」
佳子「当時、慶応SFCは有名人、芸能人、面白そうな人間、あとジャニーズはどんな馬鹿でもぶち込むというのが基本方針だったので、皇族は願ってもない志願者でした。私はでたらめな大和言葉で試験を通過、見事三回目の大学入学を果たすことになりました!キラキラしたキャンパスライフのはじまりです!」

シーン6
 字幕「一年後」
 別のとこに安部総理登場
女性「総理、安部総理、質問です!」
安部「はい」
女性「ホルムズ海峡は想定していないとのことですが、それでは具体的に総理はどこを想定しているのでしょうか」
安部「いやだから、何度も申し上げている通り、中国、韓国、との、、、ええ、まあその二カ国の脅威です」
女性「具体的にはどのような脅威なんでしょうか」
安部「えと、、、まずそれだけでなくまあ、テロとの戦いなんかもありますから、、、、なあ、もうやめないか」
女性「質問にはちゃんと答えてください」
安部「いやあのさ、家でくらいゆっくりさせてくれよ」 
 女性はアキエ夫人である
アキエ「いやそこは、家庭内野党なんで」
安部「アキエ、こっちは疲れてんだよ毎日毎日」
アキエ「お疲れ様」
安部「こないだなんかおれ、街のポスター見てたら泣きそうになっちゃったよ、落書き、ちょび髭書かれてさ、ヒトラーだってよ、ヒトラー、おれ。え?どう思うよ」
アキエ「まあちょっと大げさかもね」
安部「でしょ!?こんな国を憂いてお腹痛めて働いてんのに、ありえなくね?ふつうに。戦争なんかしたいわけないじゃん」
アキエ「そうね」
安部「分かってねえんだよなー、内政がシムシティなら外交は遊戯王なんだよ、全然ルールが違うの」
アキエ「総理、今の発言は」
安部「わかったよ!政治をゲームに例えんなとかそういうあれでしょ、なんでこう揚げ足ばっかとってさあ、なんで誰も分かってくんないのかなあ」
アキエ「ちゃんと国民に説明しないからじゃない?メディアを通して訴えないと。今日も出演依頼ありましたよ、テレビの」
安部「えー、そこまで言って委員会しか出たくねーわ」
アキエ「報ステも出ないと」
安部「やだ、報ステだけは絶対やだわ」
アキエ「我がままばっかり言ってないで、ね?じゃあもう通常国会はおわりにして、これからは二人だけの特別国会を開きましょう(にじり寄る)」
安部「あーちょ!もうなんかそういうワードがやだ」
 電話がかかってくる
安部「はいもしもし・・・え?マジ?え?うん分かった」
アキエ「・・・どうしたの」
安部「や、なんか菅君から」
アキエ「なにかあったの」
安部「なんか、ホルムズ海峡で、爆発があったらしい」

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