占いはあたるもの? — 1.占いの歴史とその役割
占いとは当たるも八卦当たらぬも八卦と言われますが、人々は本当に占いが『当たる』ことを望んでいるのでしょうか? 占いの歴史とその役割を振り返りながら、この問いに対する答えを考えてみましょう。
1.占いの歴史:回避すべき未来を予知するツールとして
占いの歴史を辿ると、人類は古くから未来を予知し、社会の安寧を求めるために占いを用いてきたことが分かります。古代の占いは、天候や災害、疫病などの社会的なリスクを予測する手段として広く用いられました。天災や疫病などの未曾有の事態に対する予防策を見出すために、占いが活用されていたのです。
もし占いの結果、「災が起きる」と分かった場合、それが「当たってほしい」ことなのか、それとも「回避したい」ことなのかという問題が浮かび上がります。これは占いが提供する未来の予測が、どのように人々の行動や思考に影響を与えるかに大きく関わっています。
1. 先史時代における占い
先史時代では、占いには骨や亀の甲羅を使った卜占が多く用いられていました。
宗教儀式のひとつとして、骨や亀の甲羅を火にかけたり、槍で差すなどすることで、吉凶を占っていました。
この先史時代から行われた卜骨や卜亀を用いた儀式を行い占いを行なう手法は、現代においても対馬市厳原町豆酘地区に伝統行事として伝わり、旧暦1月3日に行われています。
2. 奈良時代における占い
奈良時代になると陰陽寮が設立されます。この陰陽寮は今の日本政府の省庁でいうところの庁にあたり、今で言うと内閣府内の一つの庁(金融庁やこども家庭庁などと同じような位置付け)として存在した組織です。
この陰陽寮では、天文現象を観測し記録したり占星術を用いた占いを行うや、現代のカレンダーにも記される日柄・二十四節気や土用などを含め行事を行うと良いとした日を吉日とした占い結果を記した暦を制作していました。また寮の名にも記される陰陽師を冠する卜占の専門家も官人(今で言う国家公務員)として複数人おり、国の施政や社会に係わることのみならず、個人の吉凶禍福に係わる予言を占っておりました。
3. 占いの使われ方
政治的な側面においても未来を予知することは大事でした。では「災が起きる」と予測することがあった場合、そこからどのように対応していたのでしょうか。
予防措置の実施
古代中国では、天の兆しや神託によって災害の予兆を得た場合、その情報を基に予防措置を講じることが一般的でした。たとえば、洪水の予兆があるとされると、河川の堤防を強化するなどの対策が取られました。
儀式や祈祷
災害を回避するための儀式や祈祷が行われることもありました。神殿での祭りや祭礼、占い師による祈りが、災害の回避や減少を願う手段とされていました。こうした儀式は、コミュニティの団結を促進し、精神的な安定を提供する役割も果たしました。
社会的な調整
占いの結果を基に、社会的な調整が行われることもありました。たとえば、作物の植え付けや収穫の時期を調整することで、食糧不足を回避しようとする試みがありました。また、占いの結果が社会全体に伝えられることで、集団としての行動指針が形成されることもありました。
占いは単なる未来予測に留まらず、社会全体の運営や危機管理においても重要な役割を果たしていました。予測された災害に対しては、物理的な対策や儀式的な対応、さらには社会全体の調整が行われることで、災害への備えや対応が進められていました。これにより、コミュニティの一体感が強化され、人々の精神的な安定も保たれたのです。占いは、未来を見通すだけでなく、その結果を通じて人々を結びつけ、社会全体のバランスを保つための重要な手段であったと言えるでしょう。
4.4.占いの予測とその信憑性
予防措置とリスク管理
占いの結果を踏まえて予防措置やリスク管理を行うことで、災害の影響を軽減できる可能性があります。適切な対応を取ることで、占いが示した未来が実際に「当たる」かどうかを変えることができるのです。たとえば、洪水の予兆が出た際に堤防の強化を行えば、実際に災害が発生しても被害を抑えることができます。こうした対策により、災害を未然に防ぐことも可能です。
行動の見直し
例えば、占いによって食糧不足の予兆が示された場合、作物の植え付けや収穫時期の調整などの行動が取られることがあります。
この場合、占いが示す未来が「当たる」かどうかは、実際の行動次第で変わるということです。もし占いの予測が「外れた」ように見えたとしても、それは行動の変化によって未来が変わった証と言えるでしょう。
心理的な準備とサポート
占いが示す未来に備えて心理的な準備やサポートを行うことで、実際の状況への対応力を高めることができます。こうした準備が整うことで、予測された未来に対応する力がつき、異なる結果を引き寄せることができるかもしれません。
占いが示す未来は「最も起こる可能性が高い未来」に過ぎません。その結果に対して適切な対応を行うことで、その未来を変えることができるのです。したがって、「占いが当たるかどうか」という問いに対する答えは、占い結果を受けた後の行動次第で変わると言えます。占いの本質は「あたる」「あたらない」に焦点を当てるのではなく、いかに「あたらないように対処する」かにあるのです。
占いは、未来の不確実性に対処するための知恵として、現代においても重要な役割を果たしています。古代から占いが重宝されてきたのも、この「対処する」ための知恵としての側面が大きかったのかもしれません。
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