イルミネーション
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イルミネーション

こもれび文庫

それがパッと点灯した瞬間、ワアっと歓声が上がった。点灯する前、誰かが言った。カウントダウンみたいって。

ショートケアで脳トレを行った日だった。
ふとしたPSW(精神保健福祉士)さんの思いつきで、イルミネーションをみんなで見に行こうという話になっていた。

私の調子は絶不調だった。プログラム中に1日3回までの頓服をMAX回使うくらい、調子が悪かった。しかし、色とりどりに変わるツリーのイルミネーションを見たとき、私の心にあたたかな光が差したように感じた。

なぜ、調子が悪かったのか、それは数日前のことである。

「甘えているよね」。

友達との会話の中で私に向けられた言葉。それが心に鋭く突き刺さり、重いひずみを残した。それに加え、とある教科で、出席数不足により、試験が受けられないことを正式に宣告された。

そこにPMS(月経前症候群)も加わり、私の心は限界を迎えた。ずっと一日中辛く、寝て起きても辛い気持ちが和らぐことはなかった。面談をしてもらえないか、担当PSWさんに相談をした。いつもは2週に1度の頻度で行ってもらっている面談だった。

答えは「No」。
PSWさんにも都合があるから仕方ない、そう思って諦めようとしていたさなか、「何かあった?」と問うてくれた。私は一瞬迷ったが、数日前のこと、そのことによってOD(過量服薬)衝動が高まっており辛いことを話した。
「座って良いよ」。仕事を中断して私の話を聞いてくれた。

私は、話している途中に泣き出してしまった。でも、担当PSWさんはそこに触れずに、話を続けてくれた。ひと通り話した後、受容しつつも、意見すべきところは意見を言ってくれた。私はそれに救われた。
次の面談まで、ODせずに過ごそう、そう決意することが出来た。

そんな担当PSWさんとも、あと1ヶ月でお別れだ。
その相談支援事業所ごと、閉所となってしまうからだ。ひとり暮らしを始めてから、1年半以上、お世話になったPSWさんと、事業所のスタッフの方々。幸い、担当PSWさんは系列病院に勤務が決まっているし、ショートケアのスタッフも変わらないということは決まっている。
しかし、この別れが私にとって非常に大きいものであるのは変わりない。

「ある意味チャンスだよ」と言うのは、私のカウンセリングを長年担当しているカウンセラーさんだ。果たしてそうなのだろうか。それを決めるのは自分次第だ、分かっている。

そんなことを考えながらぼんやりとイルミネーションのツリーを見ていたとき、次々と色が移り変わり、まるで今の自分の心のようだと思った。別れを前向きに捉えようとする明るい暖色のような気持ちになるときもあれば、不安や悲しみで一杯になる、寒色のような気持ちになることもある。

しかし、私は思った。
寒色も暖色も、どちらもあるからこそ、互いを引き立て合うのではないか、どちらか一方だけでは魅力が半減されてしまうのではないか。
心がスッと落ち着いて行くのを感じた。

ずっと前向きになりきれない自分を責めていたが、責める必要なんてないのではないか、そう思い始めたのだ。どちらもあるからこそツリーはより美しく見える。

別れが少し怖くなくなった。完全に怖くないか、というと嘘になるけれど、前よりも不安要素はぐんと減った。
残り少ないからこそ、後悔しない関わりをしたい、そう思えた。

いつまでこの気持ちが続くかは分からないし、また不安定な波も必ず襲ってくると思う。
そんなとき、今回の出来事を思い出し、寒色と暖色、マイナスな感情とプラスな感情、どちらもあってのツリーであり自分なのだということを忘れずに過ごしていきたい。

いつか自分が支援者になった時、悩んでいる人に「前向きになりきれなくても良いんだよ」ということを伝えていきたい。
                  text/あゆむ

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