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グリーン組織の代表企業 「伊那食品工業」を訪問して感じた強さの秘訣と感じたことをレポート

トヨタ自動車の社長 豊田章男氏が師と仰ぐ長野県伊那市に本社を構える伊那食品工業とはどんな会社だろうか。
従業員数約 500 名、売上高 200 億円と数字だけを見れば同規模会社は日本にも数多く存在するが、48 期連続増収を誇り、新卒の入社倍率は 60 倍を超え、国内外の有名企業のトップが毎月のように訪問をして会社経営につ
いて学んでいる企業は多くない。

「いい会社をつくりましょう」という社是のもと、世界中に存在感を誇る地域密着型オンリーワン企業を訪問し、現地で感じた伊那食品工業の強さの秘訣をレポートする。 

はじめに

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出典:伊那食品工業Webサイトより引用

社是:いい会社を作りましょう
事業内容:寒天の製造・販売

目次

1.社員のしあわせを第一に考えた経営
2.小さな気づきを得る力が、成長の源
3.“年輪経営” 四方よしの考えが持続的な発展を生む
4.伊那食品工業の視察を振り返って

社員のしあわせを第一に考えた経営

伊那食品工業では、社員のしあわせを考え様々な取り組みをしており、特に気にしているのは健康管理だ。
創業者の塚越寛さんは、17 歳から 20 歳までの 3 年間を肺結核により闘病生活を余儀なくされた(通っていた高校も中退している)。
その若き日の経験から、人生において最も尊いものは健康であることに気づいたという。

勤務形態について 
そのため、伊那食品工業では食品メーカーにも関わらず 2、3 勤制(朝番、昼番、夜番に分けて稼働をすることにより、24 時間工場を稼働させ生産効率を高める手法)を取らず、人間として健康で生活ができるよう夜はゆっくりと休める勤務形態としている。   

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出典:伊那食品工業Webサイトより引用

伊那食品工業では、社員の働きやすい環境を追求するため、機械についても最新鋭の機械を常に導入している。本来寒天を作る際は水仕事で、長靴が必須な職場であったがスニーカーでも働ける寒天工場として話題になったこともある。

運動不足の解消について
東京では、通勤の際に自宅から駅まで。そして駅から会社まで徒歩で会社に通うことが多い。一方、地方では車通勤がメイン(100%)なので、基本的に運動不足になりやすい傾向がある。
また、運動不足の解消のために、始業前に 10 分間の掃除時間とラジオ体操の時間が設けられている。会社を綺麗にしながら、運動不足の解消もできるまさに一石二鳥の取り組みなのだ。

「大変なことを少人数でやるといやになる。みんなで一緒にやるとだんだん楽しくなってくる。」と人事部長は熱心に説明した。

保険制度について
重い病気にかかった際の不安を軽減するため、社員全員の「がん保険」を会社側で契約している。そのため、万が一ガンになってしまった際の家族の負担を軽減することができる。

それだけではない。災害などで家が崩壊した場合でも、住居の建て替え費用をすべて会社が負担するというのだ。

資材の貸し出しについて
伊那食品工業の工場では、非常に充実した設備があるが、それは工場だけではない。掃除器具についても様々な機材が揃っており、倉庫にはまるで清掃業者の倉庫のようだ。

それらの機械や運搬用のトラックについては、すべて社員がレンタルすることが可能で、引っ越しの時や家の庭を掃除するとき等に自由に使用することができる。
それにより、機械の購入費なども社員としては抑えられるのでありがたいという声が上がっているそうだ。

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(まるで清掃業者の倉庫なのでは?と勘違いしそうなほど、機材が揃っている)

小さな気づきを得る力が、成長の源

寒天の業界は斜陽産業であるにも関わらず、伊那食品工業は 48 期連続で増益を続けている。
その理由は、市場に合った新商品を開発し新たな市場を開拓し続けているからに他ならない。その新しいアイデアはどこから生まれるのか。
塚越最高顧問は、「社員の小さな気づきを得る力」を高めることが、人の成長に繋がり、結果的に会社の成長につながると考えている。 例えば、朝の掃除においても、こういう風に草を刈ればきれいに刈ることができるという気づきや、庭のここにベンチがあったらいいなという気づきの声が生まれている。

こういった改善のマインドや気づきが生まれやすい環境が会社全体で醸成されており、その結果研究開発企業として最も重要な要素である気づきを得る力が日々の生活の中で高められ、それが仕事にも生かされているのだ。

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中には高所の枝を切りたいということで、高所作業者の免許を取る方も(左)
出典:伊那食品工業Webサイトより引用

庭師並みにチェーンソーを使いこなしているこの方も、寒天の開発に勤しむ社員である
(右)

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トイレもとてもきれいに掃除がされており、男性トイレにはこのような張り紙も(左)
会社の道路は、道路清掃車両が走っている。これも会社の掃除の備品の一つである(右)

上記以外でも、土を耕して花壇を作ったり、設置したベンチに濡れ雑巾を設置したりして利用者の方が快適に使えるようにしている(毎日濡れ雑巾は取り換えている)

他にも列挙すればきりがないほど、「いい会社をつくりましょう」の社是に沿った行動を社員が自主的に行っていることが手に取るように分かった。

“年輪経営” 四方よしの考えが持続的な発展を生む

年輪経営とは、企業が永続的にゆるやかな末広がりの成長を続けていく経営のことを指す。
急激な成長をすると、どこかにひずみが生まれ、その後に急激な落ち込みが伴う。その結末として社員や仕入れ先、納入先が路頭に迷い、工場閉鎖などによって地域に迷惑をかけている会社が後を絶たない。
そのため、塚越最高顧問は、年輪のように末広がりの成長を続けて、永続的成長していくことが最適な経営だと考えている。

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出典:伊那食品工業Webサイトより引用

コストカットをしない
コストカットというのは、自社以外の企業利益を奪うことになる。
そのため、そこで生まれたひずみがいつか巡り巡って自社に帰ってくることになると考えている。そのため、費用は高くても信用ができる発注先と契約をし、契約し続けている。
※食堂の机やイスなどもとても品質の高いものが使われており、社員の働く環境のためなら投資を厭わない。

全社会議・役員会議で数字を追わない
役員会議の際に数字の話をしない。職場をより働きやすい職場にするためにどこを変えた方がいいか。営業で顧客からこんなニーズがあると言われたが実現させる方法はないかなど、日々の業務の中でより良いものにできる
部分を検討する。
一方数字の話をしても意味がない(もちろん把握することは大切だが、会議で把握することに意味を感じていないからやらない)と考えている。
数字については、昨年より 1 円でも伸びていれば問題ないと考えている。

会社・人の価値の総和=企業の価値
売上が上がっていなくても、去年よりもより快適な会社になったり、個人のできることが増えたりすればそれも会社が成長したと考える。

ブームに乗らない
寒天ブームが到来しても、稼働体制を変更しない。
社員の要望で一度労働時間を増やしたが、疲れている社員が増えて、幸せを第一に考えられたものでないと、すぐに中止した。
その結果、寒天ブームが去った後にも大量生産の結果の在庫が残るようなことは起きずに犠牲を出さずに済んだ。

利益は残ったうんちである
健全な人は、排せつ物を出す。そのため、企業も排せつ物が出ていないのは健康でない。
しかしながら、自分の体以上に利益を多く出すこと、あるいは利益の高さを自慢しているのは、排せつ物の大きさを自慢しているに過ぎない。
無理やり排せつ物を出すのではなく、少しずつ人として成長していきそれに伴って利益が健全なレベルで出ていればそれが一番健康体であると言える。

伊那食品工業の視察を振り返って

年輪経営という経営手法を掲げる伊那食品工業がこれほどまでに注目を浴び、多くの経営者から尊敬されるのはやはり、社員をはじめ様々な方から愛される企業だからに違いない。

伊那食品工業を取り上げるメディアの方も伊那食品工業のことが大好きな人が多く、たまに「こんな本を書かせていただきました」と伊那食品工業の朝礼で報告をしに来る方もいるそうだ。また、無理なコストカットをせず、
発注先にも設けさせるということを忘れずに取引を行うため、良好な関係を維持することができている。

長野県伊那市という地方都市で生活する方にとって、「安定的に企業が成長し(給与が上がり)住居や健康の不安がなく、良い人間関係の中で働くことができること」はとても魅力的だ。
まさに、その都市における最適解を導いている企業といえるだろう。

東京に住んでいる私は、「キャリアプラン」という言葉を意識しながら、今後市場で求められるスキルは何か、どの領域で勝負をしていくべきかと考えることがあるが彼らには、その気持ちがない。
この会社に定年まで勤めていくことを前提としているため、自身のスキルに興味がなく(成長したいという意欲は非常に強いが)この会社を良くしていくにはどうしたらいいか。そのことに集中していることが分かった。

それぞれの関心や置かれた環境が異なるため、今回の伊那食品工業の手法をすべて真似ることは賢明ではないが、どのような方法が、今の自分・クライアントにおいての最適解なのか考えていこうと思う。

会社や団体のデジタルトランスフォーメーション、デジタルマーケティングの実践、チームビルディングに課題を解決したいという要望があれば、お気軽にお問い合わせください。

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