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コムラボ 10周年対談(4) マチノテは「地域の余白」を作る場所

設立から10年を迎えた特定非営利活動法人コムラボ(以下、コムラボ)。マチノテスタッフ村上が役員3人へ「コムラボ的ものの見方」を探るインタビュー第4弾。

登場人物:
・山田雅俊(代表理事、創業者、足利市出身)
・増子春香(理事、創業者、足利市出身)
・出村哲朗(理事、2012年に加入、富山県出身)
・村上香純(マチノテスタッフ、足利経済新聞記者、秋田県出身)

今回のテーマは「地域におけるサードプレイスの価値」です。
(※サードプレイス=自宅でも学校や会社でもない第3の場所)

コムラボは、2018年からカフェ&シェアオフィス「マチノテ」を運営。山田さんは「マチノテを地域におけるサードプレイスにしたい」と話します。

マチノテは「こんな場所が足利にあったらいいのに」という思いからうまれた

村上:マチノテを作ったきっかけを教えてください。

山田:2012年にコワーキングスペース「SPOT3」をOPENして、それから6年の経験や反省を元に作ったのが「マチノテ」です。コムラボが施設運営をはじめたきっかけは「こんな場所が足利にあったらいいのに」という思いからです。

村上:「あったらいいのに」と思う体験はどんなことでしょうか。

山田:私が10代の頃、行きたい場所は足利の外にありました。当時を振り返って「知りたい」「やりたい」といった知的欲求に飢えていたのだと思います。そういった気持ちに応えてくれる学びの場が地域にありませんでした。

村上:地域が提供する学びの場とはどういったものでしょうか。

出村:私の生まれ育った富山県では、そのような学びの場が身近にありました。学校が休校になるほどお祭りが盛んに行われていたり、科学館や博物館など学べる施設があったりします。ほかにも夏休みのプログラムとして地域に関わる機会がありました。

村上:行事参加や夏休みの体験は社会性を学ぶ機会がありますし、科学館や博物館などは知りたいに応えてくれる場所ですね。山田さんは、そういった場所が足利にもあればと思っているのですね。

山田:はい。私は「地域に育てて貰った」という感覚がありません。地域とのつながりが気薄です。足利は、たまたま産まれ育っただけの場所。もちろん教育関係者はがんばっていますが、地域全体で子どもに投資をしよう、育んでいこうという意識が低いと感じています。

私たちの出来ることは小さいですが、地域に1つくらいカフェだけどカフェじゃない、変なカフェがあってもいいと思っています。

村上:それをマチノテが目指していることなのですね。

山田:表向きはカフェですが、地域におけるサードプレイスを目指しています。マチノテに若者が集まり、自分の子ども時代にはなかった学びや体験の機会を提供したいです。

村上:サードプレイスとはどういった場所を指すのでしょうか。

山田:自宅でも学校・会社でもない第3の場所を指します。若者は、自宅と学校や塾の往復で足利での学生生活を終えます。他に居場所を作る機会がほとんどありません。学校や塾だけではない第3の場所としてのマチノテです。マチノテがサードプレイスとして機能すれば、地域の未来にとって大きな価値があると思います。

村上:サードプレイスは地域の新しい若者の居場所となるのですね。

山田:若者が何か新しい挑戦をしたいと思った時に、「まずはマチノテへ行ってみよう」と思って貰える場所にしたいです。地域の新しい取り組みができるように支援するのがコムラボのミッションです。ゆくゆくは、マチノテを地域のシビックセンターにしたいです。

自宅でも学校でもない第3の居場所は若者の「安全基地」になる

村上:サードプレイスは他に役割があるのでしょうか。

山田:セーフティーネットにもなるのではと思っています。

村上:セーフティーネットですか。どういった場合でしょうか。

山田:学生にとっては自宅や学校、塾が主な居場所ですね。1人で悩みを抱えてしまう場合があると思います。第3の場所があれば、そういった悩みを抱えている若い世代の手助けになるのではないでしょうか。例えば、夏休み明けの2学期がはじまる時に「学校に行けないならマチノテにおいでよ」と呼びかけたことがあります。

村上:自宅でも学校でもない場所だからこそ、話せることはありますよね。誰か1人でもそういった想いを受け止めてくれる人がいれば、安全基地として機能してくれそうです。

山田:私自身が不登校経験者ですし、不登校にまつわる資料もあるので何かしら支えになれたら良いなと考えています。不登校になったり、気持ちが塞ぎ込んだりしたらマチノテへ来て、自分の時間を過ごす場所となってくれればいいですね。

マチノテスタッフと来店する学生との関係性づくりを続けていきたいです。進学や就職で足利を離れた若者が帰省ついでにマチノテへ「ひさしぶり!」と来店してくれたら嬉しいです。

村上:サードプレイスはこれからの世代にとって価値になりますね。

サードプレイスがもたらす地域の変化

山田:地域にサードプレイスがあることで、地域の未来を良くすることができると思っています。

村上:どういうことでしょうか。

山田:地域にサードプレイスがあれば、利用した世代が大人になった時に地元へ関わる機会が作れると思います。学校や塾は卒業してしまえば関わりがなくなりますし、進学や就職で実家を出れば、たまに戻ってきても自分の部屋が物置になっていたという話は聞きます。実家ですら自分の居場所ではなくなってしまう。地元の居場所がなければ、その分、若者が地域に関わる機会が減ります。その割には「若者が地域に帰ってこない」と嘆く大人の話を耳にしますが、「あなたたちが追い出しておいて、それを言うのか」と思います。マチノテの運営を続けることで地域の「関わりしろ」を作りたいです。

村上:マチノテの理想形はどのようなイメージでしょうか。

増子:抽象的にはなりますが、多様性の認められる場所にしたいです。「意見や立場などが異なる場合でも、それを認め合いながら生きていける社会」が体現されている場所としてマチノテが存在してほしいと思っています。

村上:それは増子さんの経験から生まれた考えでしょうか。

増子:はい。最近、女性ゆえに差別的な態度をとられる出来事がありました。私だけではなく、女性であればきっと経験があるはずです。嫌な思いをする人が減っていくことを願っています。

村上:なるほど。出村さんはマチノテの理想形としてどのようなものを思い描いていますか。

出村:私も大枠で捉えると多様性ですね。細かくいうならば、おじいちゃんやおばあちゃんも含め、様々な人たちが正しい意味でマチノテを利用してくれることが理想です。

村上:正しい意味?

出村:どのような人たちも自分自身の良さを生かして、相互に関わっていける状況です。足利で多くの人が自分らしく生きられるよう、コムラボとしては様々な層にアプローチする仕組みづくりを進めていきたいですね。

村上:山田さんはいかがでしょうか。

山田:やはり「足利で新しいことをしたいならマチノテへ行けば良い」と思って貰える場所にしたいです。足利はプレイヤーが少ないです。逆の見方をすれば「関わりしろ」が多い街だと思います。これをチャンスとみるか何もしないかは自由ですが、やってみると面白いこともあるし勉強になることも多いです。

若者との関係性を作りながら、新しいことをやりたい人を応援する「知的対流拠点」としてやっていきたいです。

村上:新しい地域のコミュニティーを作るという面で皆さん共通していますね。地域におけるサードプレイスの価値や「マチノテ」の目指す場所を知ることができました。

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次回のテーマは「地域メディアの価値」です。10年間やってきたからこそ見える「地域メディアの価値」とは。



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