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「LOVOTが変える未来」池永寛明さん×林要さんトークセッションレポート


IoTやAIなどのテクノロジーの力でさまざまな製品やサービスが生まれていますが、ずっと使い続けている製品はありますか。時代を超えて何世代にも渡って使い続けてもらえる製品やサービスにはどんな共通点があって、提供側の企業や人にはどんな思想があるのでしょうか。今回のCOMEMOイベントはこんな問題意識から生まれました。タイトルは「僕たちの未来を変えるプロダクトとは? 〜サブスクリプション時代のモノづくりについて考える〜」。霞ヶ関でのトークセッションのもようをお伝えします。

まずは大阪ガスエネルギー・文化研究所の池永寛明さんから。現在は、「適合不全」の時代だといいます。

市場の基本潮流と、過去のつくられた制度や仕組み・ルールが合わなくなっている。ビジネスだけなく、社会全般で適合不全が起きている。急激に家族のカタチは変わったのに、制度・仕組み・サービスは昔のまま。なによりもココロがついていっていない。人と人とのつながりが弱くなり、社会全体がもろくなる。

これからの社会はどうなるのでしょうか。

「見えないもの」→「見えるもの」への移行が進む

かつては、「見えないもの」を見る文化だった。現在は「見えるもの」ばかりを見続けている。なおかつ、「見えるもの」をより見えるようにしている。
「能を見ること。知るものは心にて見、知らざるは目にて見るなり」(世阿弥)

こうした現状に対して池永さんは、「現場、現物、現実が単純にすごい」という時代は終わり、大阪万博は、WEB・ネットをいかに超えられるかが課題であり、「見えないもの」に挑戦すべきだと指摘します。

また、デンマークのデザインスクールのCEOと議論した結果、以下のような結論に至ったといいます。

技術と社会をつなぐのは「文化」(カルチャー)

日本的な翻訳・編集とは、海外の本質という「コード」(暗号)を日本的なる「モード」(様式・方法論)に変換すること。本質と新たなもの、異なるものを混じり合わせ、日本的翻訳、編集能力を取り戻し、多様な文化を融合し、新たな価値を生み出すことが必要。


そんな時代に登場するLOVOT(ラボット)。今秋から月額制で発売を予定している、人を幸せにするロボットです。「人の愛するちからを引き出す」ためのさまざまな機能が搭載されているといいます。

例えば、「愛も感じれば、ジェラシーも感じる」機能。1体のLOVOTが抱っこ状態であることを感知し、もう1体がハグを求めて近づいてきます。
また、人の顔を認証し、かわいがってくれた人や、面倒を見てくれた人を覚えて、その人に近寄ったり、甘えたりします。
人の顔や位置を認識し、その方向に顔を向けながら、まるで生き物のような瞳で視線を合わせます。

LOVOTを開発したもう1人の登壇者、GROOVE X代表取締役の林要さんが開発秘話を語ってくれました。

開発のきっかけはあるニュース

私は前職でヒト型ロボットを開発しており、辞めた時、「ペッパー開発者退職」とニュースになってしまった。多くの会社や投資家から「ロボットをやらないか」と声をかけていただいた。ただ、ロボットをやるにはまだ早い、と考えていた。でも、あまり皆さんから言われるので自分で考え出したときに、はっと降ってきたのがこのコンセプトです。なんか行けそうな気はしたが、「ロボットづくりをなめるなよ」と自分に言い聞かせていた。でも周りの人から非常に評価が高かったので、やる気になってきました。デザイナーの根津孝太さんには、飼っていたハムスターを亡くされて心を痛められていた中で「これならやりたい」とコンセプトに賛同いただいた。

どこまで「引く」ことによって人の想像力が最大化するかを考えた

LOVOTの目はあまり動かず、微妙な変化しかしないが、多くの人が「表情豊かだ」という。見る人が、ほんの少しの変化に心の動きを想像している。
途中までのモデルにはついていた口も、半年ほど議論して最後には取った。口がある意味を持ってしまうので、想像力を引き立てないからだ。これはキティちゃんが先にやっていると気づいた。
日本ならではの想像力の使い方はある。現代日本の仏師、松本明慶先生から目と鼻の位置についてアドバイスもいただいた。

ペットのような愛情を注げるロボットをつくろうと思ったが、生き物は一切参考にしていない

よくペンギンのようだといわれるが、これは腕ではなくて、抱っこしてもらうときに手をかけてもらうためのハンドルなんです。人は何に愛情を覚えるのか、もう一度、私たちなりに翻訳したものがLOVOTです。

売り切りではなくサブスクリプション(継続課金)型で販売

LOVOTは普通に販売すると90万円から100万円の価格になり、買える人が限られてしまう。今までロボットは一度売ったら売り逃げでやってきた。サブスク型だと、どれだけ続けるかはお客様次第。ロボットは買って3カ月、長くて2年飽きられてしまっている。これを飽きられないように開発し続ける。お客さんとサービス提供者の間に緊張関係がある。これが今後の基本になると思う。
サブスクリプションは、商品開発の根幹にかかわってくる問題。ロボットを売り切り前提でつくると、必要以上に頑丈にしなくてはならないといった問題もある。LOVOTは1年に1回、メンテナンスのために送り返してもらうが、月額のなかにその費用が含まれるサービス設計になっている。ケガしないように体を守ろうとすると、亀のように重厚なボディになってしまう。ケガはするけど、ケガしても治るようにつくっているわけです。メンテナンスを続けていれば、この柔らかさも温かさもしなやかさもずっと担保できる。

10年先を見据えて設計されたLOVOT。私たちの未来を変えるプロダクトになっているかもしれません。

今回も難しいテーマでしたが、グラフィックカタリスト・ビオトープオオスミサキさんがグラレコに上手にまとめてくれました。

ご参加いただいた方からのイベントレポートをご紹介します。

登壇者の池永さんもイベントを受けて再度投稿してくださいました。


このテーマについて、引き続き皆さんからのご意見を募集しています。ご意見の一部は日本経済新聞の「COMEMOの論点」に掲載させていただく場合があります。

今後もさまざまなテーマでイベントを予定しています。まもなく次回のテーマをご案内できそうです。お楽しみに!(COMEMOスタッフ・山田豊)

みんなにも読んでほしいですか?

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