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生物学上の成功者


とあるクリニックの受付事務をしていた頃、私は当時の旦那家族との関わり方で悩んでいた。


"冒険者"の称号を得たばかりに、世間からレッテルを貼られるわけで。再婚となれば、相手家族からは厳しい目で見られるのは仕方がないこと。



※冒険者の詳細は↓の記事をチェックしてみてね。



それは承知の上で再婚した。
だからこそ悩む。



うまくやれてるかもと思えば、あれ。何かしてしまったのかも?と不安になるような態度を取られる日々だった。



今思うと、相手の家族もこんな冒険者を家族の一員にして扱い方に戸惑ってたんだろうなぁと申し訳ない気持ちになる。



勤務してたクリニックは、カレンダー通りに祭日や祝日はお休みになるので、年末最後の診療時間がおわった後に、忘年会が開催された。



雑居ビルの中にある年季の入った居酒屋で、参加者がぞろぞろと集まるのを、仲の良かった同じ事務のスタッフと座って待つ。




集合時間をすこし過ぎた頃、忘年会の主役である院長がやってきた。



たまたま空いていた私の目の前に席に座って「そんな長居できないけど、乾杯。」と音頭をとってくださり、みんなでお酒と食事を楽しみながら、たわいもない話をして楽しい時間を過ごしていた。



忘年会らしい雰囲気になってきたタイミングで、目の前の院長から「最近どうなの?」と声をかけられた。



お。院長とのマンツーマントークタイムだ。


上司にあたるので少し緊張するが、心の温かい院長なので、「あー、そうですねー、」と軽く返事ができる。



クリニックの面接時に、院長も面接官としてその場にいたので私の事情はすでに知っていて、仕事も家事も育児も頑張ってます〜と当たり障りない返答をする。




「あのね、僕も今の奥さんとは再婚なんだ。」



とニッコリ笑いかけてくれた。




急な暴露にびっくりした。
が、ほろ酔い状態だったのもあり経験者にアドバイスを貰いたかった。

なのでポロポロと再婚相手の家族との関わり方に悩んでる、まぁ自業自得なんですけどね…と自虐的に打ち明ける。



院長はそのままニッコリ笑って


「色々あると思うんだけど、僕はね、君にそういうレッテルは貼っていない。」


「早くに子供を産んだことは悪いことじゃないんだよ。」


そんな言葉を私に送ってくれる。


院長がかけてるメガネの奥にある瞳と、その周りを纏ってる空気がとっても優しくて、お世辞とかただ励ますだけで言ってるようには思えなかった。



「生物学上では若いうちに子供を産み育てるのは、成功者なんだよ。」

え?


「知ってたかい?
出産でいろいろと付いてくるリスクが1番低い。」




「だから君は生物学上、賢い。成功者だよ。」



そう、私に告げると更に深く微笑んでくれた。


その微笑みに"だから自分のことをそんなに卑下せず、堂々と生きなさい"というメッセージがあったと思う。





心の黒い何かが、衝撃と共にキラキラと癒されたのを感じた。





そこからドクターらしく「最近の食べ物はね、昔と違って栄養が足りてない。だから…」と健康面に関する話題になり院長とマンツーマントークタイムが終わった。



私の周りには16歳で出産したことを、「可哀想やね」「ヤンキーやな」「なんで産んだん?」などのご意見が多く、いい印象をもたれることはなかったし、これは当たり前の反応だと受け入れていた。



出産した後も、なんて私は親不孝者なんだろうと悔やんだこともあった。




だけど、視点を変えると私は成功者らしい。




当時の未熟な知識と経験ではこんな視点には辿りつけなかったし、周りに居た人たちもこんな視点は持ち得なかったように思う。



お医者さんの深い知識や経験は、どんな時でもどんな場所でも、病んでるところや人がいれば、癒やすことができるんだ…と改めて感銘を受けた。



私も院長のように、偏らずバランスよく
いろいろな視点で物事をみれるようになりたいと意識が高まった。





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