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学生にサポートされ、学生をサポートするビブリオバトル【ビブ人名鑑#14:佐々木奈三江さん】

ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。

今回のゲストは、大学図書館の職員として、学生さんのビブリオバトルサークルを支え続ける、佐々木奈三江さん。
なぜ佐々木さんは学生さんにビブリオバトルをしてほしいと感じるのか?
これまでの活動と、今の思いについてお聞きしました。

佐々木 奈三江(ささき なみえ)さん
ビブリオバトル普及委員会理事、兼四国地区副地区代表。徳島大学図書館職員。阿波ビブリオバトルサポーターのサポーター。人の顔が見える仕事が好き。

授業をきっかけに生まれた「阿波ビブリオバトルサポーター」

ー 佐々木さんがビブリオバトルと出会ったきっかけについて教えてください。

ビブリオバトル首都決戦2012で、 宮城教育大学(当時)の貝森義仁さんが決勝戦に出場されたんですが、その様子を知り合いの宮城教育大学の大学図書館職員さんが教えてくれたことです。

そのときの動画なども見せていただいて、興味深い催しだなあと感じました。

↑ ビブリオバトル首都決戦2012決勝戦での、貝森さんの発表

その頃、ちょうど大学でアクティブラーニングなど新しい学習形態を取り入れた授業のサポートをしていました。
そこにビブリオバトルを取り入れたら面白いんじゃないか、と提案して、やってみることになったんです。

宮城教育大学の貝森さんとビデオ会議でつないで、ビブリオバトルについて喋っていただき、その後授業で実施しました。
学生さんからも先生からも好評で、もっとビブリオバトルを普及していきたいと感じましたね。

ー 大学生の大会をきっかけに、授業で行なったんですね。いきなりビデオ会議を使うあたり、時代を先取っている感じがします(笑)

そうですね(笑)
もともと「ICTの活用」もコンセプトの一つになっている授業だったので、相性が良かったのかもしれません。

その授業の後、先生と「徳島県でビブリオバトルを盛り上げるために、まず大きな大会をやってみよう」という話になりました。
その先生を中心に、私や、読書好きな学生さん、イベントを立ち上げられる学生さんを巻き込んで、有志の大会の実行委員を作り、それが「阿波ビブリオバトルサポーター」になりました。

サポーターのサポーターとして

ー ビブリオバトルが浸透していない中、いきなり大会とは大きな一手ですね!うまくいきましたか?

2013年6月に、無事大会を開催できました。
バトラー15人の大会だったんですが、当日は約70人も観戦に来ていただけて、新聞やTVにも取り上げていただきました。

私は慣れない大会運営をしている学生さん同士の仲を取り持ったり…といった、調整をすることが多かったですね。
彼らのお母さんになったような気分になりました(笑)

大会後、勢いをそのままに、ビブリオバトル首都決戦2013の地区決戦を開催しようということになり、それからもイベント実施に向け動き続けていきました。

ー すごい勢いですね!

本当に活発でした(笑)
地区決戦開催に当たり、誰かがビブリオバトル普及委員会の会員になる必要があったのが、私が入会したきっかけです。

その後、2014年から大学公認のサークルになり、だいたい月に一度くらいのペースで、阿波ビブリオバトルサポーター主催のビブリオバトルを開催しています。
サークル化の際は、私自身も、顧問ではないのですが、指導する立場として登録されました。
今は、職場の異動もあって正式な指導者としての登録は外れましたが、普及委員会の普及委員として、ずっとサポートを続けています。

20150204ビブリオバトル授業イベント

毎年、学生さんが入ってくれるかどうかヒヤヒヤしています(笑)
本は好きでも、人前に出て話すのは苦手、という子の方が多いですしね。
ビブリオバトルを何度か経験して、むしろそれが得意になる人も多いんですが。

ー 最近は佐々木さん自身はどのようにビブリオバトルと関わっているんですか?

今年度は感染症拡大の影響で、対面でのイベントが全くできない状態なんです。
阿波ビブリオバトルサポーターの学生さんが企画した、オンライン・ビブリオバトルに誘っていただいて、休日に観戦する、という関わり方が多いです。

他には、益井さん(インタビュアー)に誘っていただいたYouTubeライブの企画とかです(笑)

響き続けるボーナス・トラック

ー その節はありがとうございました!(笑)佐々木さんにとって、特に印象に残っているビブリオバトルはなんでしょうか?

一番印象に残っているのは、ビブリオバトル首都決戦2013の決勝戦の、 西森貴志さんの発表です。
西森さんは、阿波ビブリオバトルサポーターが初めて主催した地区決戦から本戦に進んだ方で、私たち阿波ビブリオバトルサポーターも秋葉原の会場まで観戦しに行きました。

西森さんが紹介したのは『ボーナス・トラック』(越谷オサム 著/東京創元社)という本だったんですが、ゲストの方からの、
「あなたにとって、ボーナス・トラックとはなんですか?」
という旨の質問に、

「徳島県ではビブリオバトルが浸透していない状況の中、阿波ビブリオバトルサポーターの方々が、大会を運営してくださいました。
そして、僕も一人の出場者として、その大会を一緒に作り上げてきて、そして優勝させていただきました。
僕にとってはそこまでが本編で、首都決戦という場に立たせていただいている今が、まさにボーナス・トラックなんだ、って感じています」

って答えたんですよ。
隣で聴いていた学生が号泣しちゃって、私も胸が熱くなりました。

↑ ビブリオバトル首都決戦2013決勝戦での西森さんの発表
↑ 徳島大学附属図書館のメールマガジンでの報告。西森さんのコメントなども載っています。

ー 僕はちょうどその大会の準決勝に出て敗退していたので、観覧席から西森さんのプレゼンを見ていたのをよく覚えています。素晴らしい発表でしたよね。

西森さんは、今高校で社会科の先生をしています。
彼の教え子が、高校生のビブリオバトル全国大会に出場しているんですよ。

一度教え子の武者修行だ、と言って、その子たちを連れて阿波ビブリオバトルサポーターに交流しに来てくれたこともありました。

ー ビブリオバトルをつないでくれているんですね!7年越しに西森さんのボーナス・トラックを聴いている気持ちだ…(笑)

20171125西森くんとの再会

↑ 佐々木さんと西森さん。2017年11月25日

自己開示で殻を破る

ー 佐々木さんが、これからビブリオバトルを通してやってみたいことはありますか?

ビブリオバトルって、自分の「好きだ」っていう気持ちを喚起してくれるじゃないですか。
最初に大学の授業に取り入れたときからそうだったんですが、学生さんにはなるべく押し付けられたものではなく、ビブリオバトルを通して自分自身が好きなことを見つけてほしいと思っています。

ビブリオバトルの講師をする際などに、「課題図書にしないで」「学生・生徒に自由に本を選ばせて」って口酸っぱく言ったりもしてるんですが、学校現場であってもビブリオバトルの本質を損なわず、楽しく実施してほしいですね。

20181103中学生ビブリオバトル高松の陣講師

↑ 中学生ビブリオバトル高松の陣で講師をする佐々木さん。2018年11月3日

それから、徳島県では、熱心にビブリオバトルをしている高校生もいるんですが、どうしても「学校でやるもの」「大会でやるもの」と思われている節が強いので、自分たちで小さなコミュニティを作ってやってみる、という人が増えたらいいなと思います。

ー 佐々木さんは「ちいさいコミュニティ」がテーマのビブリオバトル・シンポジウム2020に登壇されますが、どんな方に見てほしいですか?

まずは、徳島の人ですね。
特に、自分が好きな本についてしゃべりたいという気持ちはあるけど、踏み出せていない人に見てほしいです。

他にも色んなご経験をされている方が登壇されるので、コミュニティ運営をしていて悩みを抱えている人にもぜひご覧いただきたいです。

ビブリオバトル・シンポジウム2020 (1)_page-0001

↑ ビブリオバトル・シンポジウム2020は、2020年11月21日にYouTubeで配信されます。
ぜひご視聴ください!

ー 佐々木さんにとって、ビブリオバトルとはなんでしょうか?

自分自身や、自分の周りにある世界を広げたり、つなげてくれるものだと思います。

最初にお話しした授業とは別に、ビブリオバトルを行う授業を作ろう!と先生と相談して、2014年から「読書コミュニケーションへのいざない」という授業が始まったんですよ。
そこでは、人前で話すことに抵抗がある学生さんもいたんですが、そんな人でもビブリオバトルはできたんです。
ビブリオバトルで新しい本を知るだけでなく、自己を開示することで、自分の枠を広げることになるのがいいな、と思っています。

また、西森さんもそうですが、ビブリオバトルは新しいつながりもどんどん広げてくれますよね。

20141213ビブリオバトルシンポジウム

↑ 「読書コミュニケーションへのいざない」の授業について、ビブリオバトル・シンポジウム2014で発表している様子

ー ありがとうございました!

ありがとうございました。


「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。

どうぞお楽しみに!

お読みいただきありがとうございました。

インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年10月18日(日)Zoomにて



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