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民主主義の学校

地方自治についてがっつり知ってみる

もうすぐ東京都知事選挙が告示されます。この記事はその前に地方自治について一度がっつり知ってみようや、という記事です

地方自治というのはまず簡単に言うと、国の中にある地域・地方の運営は、地元民で決めようよ、ということです。

なぜ、地方のことは地方で決めるのか。社会に生きる私たちが所属する大きな団体の一つに、国があります。国は公正で普遍的な統治をおこなわなくてはいけないため、全国に対して均等にいきわたる施策を行っていく必要があります。でも、小さな島国の日本ですが、北海道から沖縄まで、いろいろな状況の地方自治体(都道府県・市区町村)がありますよね。この多様性に富んだ日本列島を全部同じような決まりで治めよう、というのにはやはり無理があります。そこで、地元のことは地元の人たちに任せてもらって、それぞれの特性を考慮して決めようや、というのが地方自治の考え方です。以上のような理由から、自治権をもつ自治体、すなわち自分たちのことは自分で決めよう!という団体が存在します。

地方自治は住民自治団体自治の二つの側面を持っています。

住民自治というのは、その地方のことはその地方の住民が決めるべきである、という考え方です。(これを地方自治の民主主義的側面という。)

次に、団体自治。これは地方自治は国から独立した地域社会の団体によって、地域の実情にそって行われるべきである、という考え方です。団体自治の考え方には権力が暴走しないように権力を分けるという、権力分立的な役割も含まれています。以前の記事で書いた三権分立を権力の水平的分立というのに対して、団体自治の考え方を垂直的分立と呼びます。(これを自由主義的側面・地方分権的側面という。)

二元代表制

地方自治では二元代表制がとられます。二元代表制とは行政の長と立法の長をそれぞれ有権者が直接選挙する制度のことを言います。日本の国(中央政府)に対して私たちは国会議員を直接選挙で選びますが、行政府の長である総理大臣は国会議員が選びます。これを一元代表制といいます。これに対し、地方自治体では、都道府県知事、市区町村長と、都道府県議会議員、市区町村議会議員をそれぞれ直接選挙で選びます。これを二元代表制と呼びます。

このため地方自治は、住民の声がより届けやすい場であるとされ、しばしば「民主主義の学校」と呼ばれます。(ジェームズ・ブライスが初めてこの表現を用いた。)

地方自治体の種類と役割

先ほどから地方自治体という言葉を使っていますが、法律上の正確な表現は地方公共団体です。しかし、自治体という言葉の方がなじみがあると思うのでこちらの言葉を使っていきます。

自治体には種類があります。まず大きな区分として普通地方公共団体と特別地方公共団体がありますが、この二つは制度や運営に関して言えばほとんど違いはないので今回は置いておきましょう。

もう一つの分け方が、広域自治体と基礎自治体です。広域自治体とは都道府県のことを指し、より広い範囲で活動を行います。基礎自治体とは市区町村のことで、生活に密着した活動を行います。

自治体の主な役割は住民の福祉増進を図り、地域の行政を自主的に運営していくことです。ようは、地域に住んでいる人たちの暮らしを守り、そのために自分たちの自治体を滞りなく運営していくこと、というような感じでしょうか。

具体的な仕事に関しては、都道府県と市区町村で違ってきます。まず、都道府県が行う仕事を広域行政サービスといいます。都道府県は市区町村をまたいで行われる事業や、都道府県の区域内全てに統一して行われなければいけない業務を担います。例えば地滑り防止の工事とか(治山事業)、水害防止のダム建設とか(治水事業)、道路、河川、公共施設の維持管理、義務教育・社会福祉の水準の維持などが主な仕事になります。

市区町村がする仕事は基礎的行政サービスと呼ばれています。市区町村はより地元住民の生活に密着した仕事を行います。例えば、上下水道や公園、図書館や公民館などの公共施設を作って維持していくこと、ごみの処理、また戸籍登録やいろいろな証明書の発行などです。

またこれらの仕事には私たちが払う税金が使われています。地方自治体の使う財源としては私たち市民が直接地方自治体に対して治める地方税、国から支給される地方交付税、特定の仕事のために国から支給される国庫支出金、などがありますが、いずれにせよ私たちの払う税金が元手になっています。このお金を使って自治体は私たちの生活にかかわる仕事をしているのです。

以上のようなことを具体的に行っているのは、都道府県知事、市区町村長をトップに掲げる地方自治体の行政です。地方自治体を構成するものとしてもう一つ、地方議会があります。地方議会は行政のチェックを行ったり、また予算を承認したり、住民からの「こうしてほしー!」という声を受けたり、自治体の実情に応じて条例を作ったりしています。自治体の行政と議会はお互いをチェックしあう関係にあり、一定の要件のもとに議会は行政の長をやめさせることができ、行政の長は議会を解散することができます。

地方議会が制定する条例は、法律が国内全土に適用されるのに対して、法律の範囲内で定められ、その条例を作った地元だけに適用されます。地域の特徴を視野に入れた決まりづくりができるのです。皆さんの家にも、我が家のルール的なのがあったりするかもしれません。そのルールは他の人の家でも守らせたりはしないでしょ?そんな感じだと思っていいと思います。

全国の面白い条例

子褒め条例 鹿児島県志布志市など

子どもに対して、ボランティア賞、親切賞、読書賞などの賞を与えて、子どもは褒めて育てよう!という条例。

キューピット条例 三重県紀勢市

地域活性化や定住人口増加を目的とした条例。キューピット委員という仲介人が町の30歳以上の人の縁談をお世話する、という条例!委員は結婚一組につき20万円(‼)もらえる。

愛する地球のために約束する条例 滋賀県草津市

なんだかかっこいい名前の条例ですね。これは地球温暖化対策のためにそれぞれが自分でできることをやろうよ、と呼びかける条例。

住民ができること

私たちは自治体に対して、いくつものアクションを起こすことができます。その代表的なものが選挙です。先述のように自治体は二元代表制をとっていますから、私たちは行政の長、市区町村長・都道府県知事と、市区町村議会議員、都道府県議会議員を選挙で選ぶことができます。そしてなんと法律で定められたことを行えば(署名集めなど)、リコール(住民解職)といって、市長や議員、公務員のお偉いさんをやめさせることができます。

またイニシアティブ(住民提案)といって、条例の制定や変更、廃止などを要求することができます。

これらの住民の権利を、直接請求権といいます。

地方自治は一番身近な政治だ!

ごにょごにょとややこしいことを並べ立てましたが、以上のことから、地方自治は私たち市民にとって一番身近な政治である!ということは感じていただけたでしょうか。

あそこの道が夜暗くて通るのが怖い、近くに公園があったらいいな、近くの川が洪水しそうで怖いな、そんな身近な話題にも、政治は深く深く、関わっています。

             カラフルデモクラシー 松浦 薫







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