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早川佳希 『それだけ』 (岩手県滝沢市)

岩手なら宮沢賢治。しんしんと降り積もる雪の上、満点の星空が孤独な夜を照らしてくれるイーハトーブ(理想郷)。銀河鉄道が走る。『いはで(言わで)おもふぞいふにまされる』(「言うことより言わないでいることの方が気持ちが勝る」)と、古今和歌集でも歌われた岩手。伝統工芸・南部鉄器も沈黙の黒。重く力強く塞いだ美しい鍋の蓋が、素材の美味しさをとじ込める。東北の人間は言葉が少なく、そして我慢強く、優しい。そんなふうに聞くことが増えた。まだ昨日のことのように思い出す『東日本大震災』。特に被害も大きかった岩手より届いた1冊の詩集・早川佳希『それだけ』。

名前も知らないどこかの誰かの『詩』を手に取るという機会はなかなかない。時に有名な詩人であったりしてもなかなかないと言える。ただ、そんな『詩集』でも、この本は少しだけ好き。

決してぼくの人生を大きく変えるような言葉に出会ってしまったというような類ではないけれど、

今までの自分の生が第一章のようなもので、それが終わったという直感があった。このままぼんやりしていては、停滞してしまう…という直感があった。ここまでをこれに留め、これを置き去りにして進んでいかなければならないと思った。ー 早川佳希

ついつい読み進めてしまうインスタントな感覚はきっとこの『置き去り』によるものだと想像される。なんだかとても気持ちのいい一冊。それだけ、なのだ。

彼が彼の人生を前に推し進めるために編まれた一冊の ZINE!なんてパーソナルな囁きなんだろう!

じぇじぇじぇ!

ー written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 岩手 ①

早川 佳希『それだけ』

1994年生 岩手県滝沢市在住
http://www.yoshikihayakawa.com

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