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ARISA WATANABE 『TAKE BACK Ⅰ』 (愛媛県)

このレビューでは『蛇口からポンジュース』の話は置いておきますね。

愛媛県です。

夏目漱石が愛し、小説『坊ちゃん』のゆかりの地ともなっている道後こと愛媛県。道後温泉は日本最古の温泉地(聖徳太子も入ったらしい!)歴史のある町です。そういえば伊丹十三記念館があったはず…ですが伊丹十三は愛媛生まれではっありませんっ!(松山は伊丹十三の父の出生地にあたり伊丹十三は高校自体を松山で過ごす) 👈 今度は伊丹十三記念館に行くぞと決めて愛媛を後にしたのがもう6年前。

ニューシャネルでおなじみ大竹伸朗が生まれたのがたしか宇和島だっ…これも出生地ではありませんっ! 残念! アトリエがあるというだけですね(それだってすばらしいことです)。

100年以上の歴史を持つ今治タオルの存在も忘れてはいけません。なぜ今治(いまばり)がタオルの産地なのかというのはそれぞれ調べていただくとして、ときどき「あっ」というタオルに触れるとそれが『今治タオル』だったということは多々あります。夏用のブランケットは今治のを選んでいたり(というとちょっとツウです)。そんな今治の町から尾道(広島)に向かって北に伸びる『しまなみ海道』を自転車だけで渡りきったことがあります。大きな橋を渡って小さな島を駆け抜けていく70キロの自転車の旅は、まさに『海の道を走る』という体験。空を飛んでるかのような気分。遠くに見える多島美。『青』というには勿体無いと言えるほどの海と空の連続。30歳にもなって自転車を漕ぎながら景色に感動して泣くとは思いませんでした(登り坂が泣くほど辛い)。

そんな愛媛県から届いた ZINE は、夏目漱石のにおいもタオルの肌触りも感じさせないトライバルな1冊。だってコンセプトは、

「TAKE BACK」=「文明の発達によって失われたアイデンティティーを取りもどす」

荒々しいコラージュとドローイングのような版画のようなパターンは『トライバル(民族的)』なムードだけれど余白にどことなくアーバン感を感じる。同じモチーフを同じ手法で表現すると、どうしても形式上の『パンク』的アプローチになってしまい表層的に陥りがちだけれど、圧倒的なレイアウト&デザインで、1冊の ZINE として満足させるエネルギーは、テキスタイルデザイナーという肩書きを持つ彼女のセンスによるもの、かと思い上手にまとめようと思ったけれど、この作品はアートにどっぷり浸かったロンドンでの1年半の集大成のような1冊だという。ロンドンには行ったことがないけれど、ロンドンと聞いてこのザラついたテキスタイルに妙に納得してしまうのはどういうことなんだろう、と、ロンドンの朝、イングリッシュマフィンでもかじりながら考えたい。

そんな彼女はいま、今治の実家のタオル工場でテキスタイルデザインやイベントの企画をおこなっている。そのキャリアめちゃくちゃきになります!

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 愛媛

ARISA WATANABE / テキスタイルデザイナー

2016年に渡英しアートにどっぷり浸かった1年半のロンドン生活を経て、現在は実家のタオル工場にてテキスタイルデザイン、イベント企画を中心に活動中。



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