
映画「ちづる」から学ぶ、家族を伝えることへの葛藤
こんにちは、NPO法人Collableのインターンの湯浅(まいこす)です。
2/8にNPO法人Collable主催で「ドキュメンタリー映画『ちづる』上映会&トークイベント 障害者ときょうだいの多様な関係性、そして、家族を語ることについて」のイベントを行いました。本イベントは、ありがたいことに満席となり、当日はとても多くの方にご来場いただきました。
また、このイベントは共催として明治学院大学教養教育センター付属研究所研究プロジェクト「首都圏開発の現代史的探究」のご協力と、ご寄付の応援によって無料開催を行うことができました。
応援してくだったみなさま、ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!
障害のあるきょうだいについて、そして家族を語ることについて
このイベントは私(まいこす)が自分の姉のもつ発達障害と精神障害について話したとき、NPO法人Collableの代表理事山田さんの言葉がきっかけでした。
障害者を「支援すること」と「受け止めること」はちがう
障害者を受け止めるって?と思われる方も多いかもしれません。簡潔に言うならば、障害が原因で言ってしまうことや行動に傷つかずに、障害によるものだから、と受け止めすぎないこと、と私は思っています。
障害者のきょうだいはどのようにして「受け止める」ことができるようになったかを知るため、このイベントを行うことにしました。
障害者からの視点のテレビ番組や、本、意見などは目にすることもあるように思います。それに比べると、障害者のきょうだいや、家族からの視点はまだ少ないように思います。
私自身、姉とは異なる学校に通っていたし、周りに障害者のきょうだい、家族を見かけたこともなく、自分がとても変わっている存在のように感じてました。それは、大きな間違いで、障害者のきょうだいも、家族も、障害者本人でさえ、変わっている存在ではないと気づきました。
だからこそ、自分って変わっている存在?などと思っている人に、そんなことないよ、と伝えたい、という思いがありました。
イベントでの様子
「ちづる」の映画は、知的障害と自閉症の妹をもつ兄の赤崎正和さんが妹と母親の日常を描くドキュメンタリー映画です。
障害のある妹、ちづるさんがどんな生活をしているのか、そして、家族である母の久美さんが妹のちづるさんや兄の正和さんに対する真の思いが溢れるところを見ることができます。そして、それぞれがどのような心境でそれぞれと接しているのかをリアルにみることのできる映画になっています。
赤崎さんは現在、福祉職員として働いています。福祉の現場を知っているからこそ、ちづるさんに対して様々な思いを語ってくださいました。
今のうちに居場所を作ってほしい。
実際に今施設で働いていて、施設だけが答えではないのかなって、今は思います。施設が良いとか悪いとかではなくて、やっぱり相性があるのかなって。みんなでわいわいやりたい人に取ってはすごく良い場所だろうなって思ったんですけど、自分一人のペースで気ままにやりたい人に取ってはもしかしたらここは窮屈に感じるところもあるのかな。
場所じゃなくて、隣にいる人との関係が、信頼関係ができたらそれでいいのかなって考え直すように。
猪瀬先生は、知的障害のある兄がいます。小学校、中学校はお兄さんのことを周りに知られている環境でしたが、高校や大学は地元から離れた場所だったので、お兄さんのことを知られていない環境でした。
僕と赤崎さんがちがうなって思ったのは、僕の場合(自分が)弟なので。しかも6歳離れているので。生まれたときから兄がいるので、あんまり違和感はなくいたなっていうかんじがあった。でも、赤崎さんの話を聞いて、似てると気づいたのは、自分のことについて書かれているものを読み始めると、昔はすごい兄と対話をしていたことがわかって。こちょこちょし(くすぐり合い)ながら二人で寝てる、みたいな話を母親が記録をしていたり。意思疎通を、まあ今も意思疎通しているが、(今よりも)もっと意思疎通している関係があって。
高校、大学は地元を離れていたので、周りの人が兄について知らない環境にいた猪瀬先生。そこで兄について話したり、質問に答えても、返答に困っている相手と接することが増え、だんだんと兄について話しにくくなっていました。大学にはいると、さらに気合いを入れてカミングアウトしなくてはいけない状況だったそうです。
私には、発達障害と精神障害をもつ姉がいます。幼稚園のころから大学まで、姉と同じ学校に行ったことがないため、周りに知られている、という状況が今までに全くなく育ってきました。
姉がいるといわなければ、姉がいることすら知られない状況で。お姉ちゃんがいるんだよね、という話はよくあることで、姉がいるということは言えても、「何してるの?」と聞かれたとき家にずっといるみたいなのも言いにくくて、仲悪いから何してるのか全然知らないんだよね、とずっとはぐらかしてきて
友達の1人に、家族に対する悩みを打ち明けられたことがきっかけで、変わることができました。自分自身がその子の悩みに対して、引いたりせず、むしろ嬉しかったから、私も誰かにいったところで引かれないだろうと思うようになりました。
人に自分の家族のことを話せない、話すことに勇気がいる、と考える時期があった、ということは、赤崎監督、猪瀬先生、私と同じ考えがありました。その後、障害のある家族について語る決断をしたという点に関しても同じでした。
イベントの最後に、参加者同士の会話に途中から少し参加させていただきました。障害者当事者からすると、障害のある自分のことを、話しにくい存在と思っているのか、ということが気になっている参加者の方がいらっしゃいました。
また、障害者のきょうだいのことを誰にもいったことがないという参加者の方、障害者本人、またその家族リアルな声を聞ける場になりました。
家族の内情を打ち明ける、ということ
家族というとなんだか幸せそうなイメージがありませんか?
私の「幸せな家族」のイメージは4人家族で、朝はみんなで食べ、お父さんが帰ってくるのを待ち、全員が一緒に夕飯を囲みながら談笑している、そんなイメージです。
自分の家族は、そんな家族の像ではない、だから普通ではないと思うようになっていました。だからこそ、普通でないから話せない、と思っていました。
しかし、幸せな家族のイメージと自分の家族が同じでないから、自分の家族について全く何も話せない、というわけではないと思います。
うちの子来年受験なのに、全然勉強していなくって…、困っちゃう。
などというお母さんの話をきくことはあります。ただ、夫や妻や子の愚痴はあるものの、踏みいった話はあまり聞きません。
では、どのように障害がある、重い病気だ、引きこもりだ、DVなんだ、などどいう踏みいった話をするのでしょうか?
そのような、自身のなかで悩んでいたり、どうしたらよいのか分からない話はどこでして、解消したら良いのでしょう?
解消の仕方は人それぞれで、全員に当てはまる正解ははないと思います。ただ、人それぞれ自分なりの正解の仕方があると思います。
私の場合は、なにか言いたいこと(姉の障害が原因でもやもやする話とか)があっても、まず姉の障害の話をしなくてはいけないから、話が長くなってしまうな、面倒くさいな、と感じ、結局誰にも言い出せず、自分の心がもやもやしたまま、ということがよくありました。
「言いたいときに言えないこと」がもやもやするのならば、言いたいときに言えるように、周りの人に障害のある姉のことを積極的に言うようにしました。
高校生の頃のように、姉のことを話すことに対しては消極的でしたが、現在では積極的に話すようになりました。積極的に話すことで、私自身は、言えないと思っていた自分の思い込みと、話すと長くなると諦めていたことがなくなり、楽になりました。
私は言うことで楽に感じるようになりましたが、人によっては、言うことの方が辛いと感じる方もいます。必ずしも言えるようになることが、正解ではありませんが、私の場合、言えないと思っていたときより、心が軽くなったので、言えるようになることが良かったと思います。
みなさんは家族の内情について積極的に話したことはありますか?また、皆さんで話を共有する場を作りたいな、と思います。
ゲストの赤崎監督、猪瀬先生、ファシリテーターの臼井さん、運営を手伝ってくださった学生の皆さん、本当にありがとうございました。
そして、ご寄付で応援してくださったみなさま、改めてありがとうございました。これからもNPO法人Collableをよろしくお願いします!
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