自営業のITエンジニアはやめたほうが良い?メリット・デメリットを知ることで、自営業になるために必要な心構えを知ろう!前編
自営業(個人事業主)のITエンジニアはやめておけと耳にしたことはありませんか?なぜそのように言われてしまうのか、本記事では自営業のITエンジニアとはどういうことか、会社員との違いは何か、メリット・デメリットを前編・後編に分けて記載します。
今まさに、会社員のITエンジニアとして働くことに限界を感じている方。ぜひ、本記事を読んで、少しでも自営業のITエンジニアに関して知っていただき、開業する際の準備をしていただければと思います。
1.自営業(個人事業主)のITエンジニアとは
1-1.自営業のITエンジニアとは
自営業のITエンジニアとは、会社に所属せず個人で企業と契約し働いているITエンジニアのことを呼びます。自営業のITエンジニアの中には、法人化して自ら経営者となり会社を設立している事業主も存在しますが、本記事では自営業のITエンジニアの中でもフリーランスとして働く個人事業主について記載します。
1-2.「個人事業主」と「フリーランス」の違い
個人事業主について調べるとフリーランスが同一用語かの如く出てくることが多く、混乱したことはありませんか?まず、個人事業主とは税法上の区分を意味する言葉であり、税務署に開業届を提出し継続して事業を行う個人を指します。一方フリーランスは働き方を意味する言葉であり、企業に属さずに業務を行う労働者のことを指すので、法人化している人も含まれています。つまり個人事業主とフリーランスの違いは言葉の定義であって、二つの意味は重なる部分もあります。業務形態を問われた場合は個人事業主と回答し、働き方を問われた場合はフリーランスと回答することをおすすめします。
2.自営業のITエンジニアと会社員のITエンジニアの違い
2-1. 働き方
自営業のITエンジニアは自分で仕事を選べ、働く場所や時間も自由なことが多いですが、社会情勢に左右されやすく収入が安定しないこともあります。一方、会社員のITエンジニアは会社に従って行動する必要があるため、働く場所や時間は会社の規定次第になりますが、毎月お給料があるという安定性があります。
2-2. 収入
自営業のITエンジニアは給料制度ではないため、エンジニアとしての単金が月々の売上として自分の収入に反映されます。一方、会社員のITエンジニアは給料制度が一般的なので、エンジニアとしての単金が自分の手元には残るとは限りません。一見、自営業のITエンジニアの方が売上が直接反映される分収入が高く見えますが、後述する福利厚生が会社員のように受けられないことや税金を自分で納める必要があるため、目先の収益に惑わされて安易にフリーランスとしての働き方を選ばず、不利益な面を十分に知ったうえでご自身でどちらが合っているかを検討する必要があります。
2-3. 福利厚生
自営業のITエンジニアは会社員のような福利厚生制度(社会保険・厚生年金・雇用保険・労災保険等)が存在しないため、自分自身で国民健康保険や厚生年金の支払いや万が一に備えた金額の確保をする必要があります。それぞれ具体的にはどのような違いがあるのかを以下のとおり記述します。
2-3-1.国民健康保険と社会保険の違い(医療保険)
国民健康保険と社会保険はどちらも日本の国民皆保険制度を実現するための保険制度として存在し、家族の扶養に入っていない限り、いずれかの制度に加入する必要があります。自営業のITエンジニアは国民健康保険に、会社員のITエンジニアは社会保険に加入します。国民健康保険と社会保険は運営元がそれぞれ異なります。国民健康保険は市区町村が、社会保険は健康保険組合や全国健康保険協会が運営しています。どちらも保険の内容に違いはありませんが、金額は大きく異なります。
まず、国民健康保険には社会保険のような扶養という考え方がなく、家族全員の収入によって金額が決まります。また、社会保険の扶養制度では扶養家族に対して追加の保険料は発生しませんが、国民健康保険は加入者一人一人が保険料を負担する必要があります。さらに、社会保険では、社会保険料は会社が折半して支払ってくれますが、国民健康保険の国民健康保険料は全額自分で負担します。これが会社員の手取り金額が自営業エンジニアより少ない理由の一つです。
余談ですが、筆者は家族全員の収入によって金額が決まるということを知らなかったため、提示された国民保険料を見て仰天してしまいました。事前にネットを使って計算していたのですが、お恥ずかしいことに家族の収入までは把握しておらず、そういった失敗をしないためにも開業する前に市区町村に直接問い合わせることをおすすめします。
2-3-2.国民年金と厚生年金の違い(公的年金制度)
国民年金と厚生年金はどちらも日本の公的年金制度の一つです。国民年金は日本に住んでいる満20歳~満60歳までのすべての人が加入する義務があります。年金制度は二階建てで構成されそのうちの一階の部分が国民年金に該当します。また、国民年金の保険料は全額加入者自身が支払います。一方、厚生年金は会社員や公務員などが加入する年金制度で、一定の収入を満たしていればパートやアルバイトも加入できます。いわゆる年金制度の二階建ての部分で、受給資格期間の条件がクリアされれば、国民年金の受給額に上乗せして年金を受け取ることができます。また、保険料は加入者と企業が折半して支払います。自営業ITエンジニアは一階部分の国民年金しか加入できず、会社員のITエンジニアに比べ将来もらえる年金額が少なくなります。自営業のITエンジニアになる場合は、iDeCo等を利用して自身で老後に向けた蓄えをしておくことをおすすめします。
2-3-3.雇用保険・労災保険の加入
自営業のITエンジニアは、会社員のITエンジニアが加入できる雇用保険や労災保険の加入ができません。そのため、失業した際の失業保険や育児休暇中に取得できる育児休業給付金等の受給ができません。また、就業中に怪我や病気をした場合に受け取れる給付金の受給もできません。自営業のITエンジニアになる場合は、働けなくなった場合を踏まえて貯金や自身で保険に加入しておくことをおすすめします。
2-3-4.その他の福利厚生
上述の他にも、会社員のITエンジニアが毎年受けている健康診断も自営業のITエンジニアにはありません。そのため、健康管理のためにも市区町村の制度を利用するか、直接医療機関で行っている健康診断や人間ドックを受診することをおすすめします。
2-4. 確定申告・年末調整
自営業のITエンジニアは確定申告を実施し、会社員のITエンジニアは年末調整があります。厳密には会社員のITエンジニアでも副業で得た所得の申告や住宅ローン控除等で年末調整とは別に確定申告が必要なケースもありますが、自営業のITエンジニアには年末調整という概念はなく、自身で確定申告をする必要があります。確定申告の手続きを自分でやらなくてはいけないという手間はありますが、仕事のために必要な備品や自宅で作業をしている場合は賃料や光熱費・通信費等も一部経費として計上することができます。会社員のITエンジニアは在宅ワークとなっても、光熱費等は会社の規定にもよりますが基本は自分で支払う必要がありますが、自営業のITエンジニアは自分で支払う必要があることは会社員ITエンジニアと同じでも、支払った分の一部を経費として計上できることは節税対策にもなるのでメリットです。
2-5. キャリアアップ支援
会社員のITエンジニアは評価面談制度があったり、適宜自身のキャリアについて振り返る機会がありますが、自営業のITエンジニアはよくも悪くも自分次第です。また、資格取得のための費用も自身で支払う必要があります。中には企業に所属していないと取得できない資格もあるため、ご自身が必要だと思う資格が、会社員でいるうちにしか取得できないものかどうか事前に調査しておくことをおすすめします。
まとめ
前編は、自営業のITエンジニアについての解説や会社員のITエンジニアとの違いについて記載しました。本記事を読んでいると自営業のITエンジニアに関してマイナスのイメージしかないかと思います。ここに記載してあることは事実ですので、自営業のITエンジニアの厳しさとして受け止めてほしいですが、もちろん、マイナス面だけではないメリットもあるので、後編ではメリットについてやデメリットに対する対策について記載しようと思います。
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