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ママの「ちょっと」とパパの「ちょっと」はちょっと違うのです

> 光文社新書note読者の皆さまへ

この記事は、2020年1月に育休から会社に復帰した際に書きました。今回マガジンに加えさせていただくにあたり、読みやすいように文章を整えました! 当時「わかるわ〜😭」というパパたちからの共感と、「もうちょっと考えて動こうね😊」というママたちからの叱咤激励をいただきました。

私にとって、2カ月の育休は本当に幸せな体験でした。こんなにじっくり家族と時間を共有できたのは初めてですし、何より、娘の成長を間近で見守ることができました。この機会をくれた会社のみんなに、心から感謝しています。

なんだけど! この”幸せ”って、美味しいものを食べた時の「幸せ〜❤︎」とか、温泉に入った時の「幸せ……♨️」とはまったくニュアンスが違います。

例えるなら、新卒として取り組んだ初の大仕事です。右も左もわからないけど、やることは山積み。顧客に叱られ、先輩に熱い指導を受け、半ベソかきながら深夜までがっつり作業。取り組んでいる最中はめっちゃツラい。もうほんとツラい。でも、絶対に成果を出してやろうと、ひたむきに頑張っていました。そして、終わってみるとキツかったことも含めてみんな良い思い出!幸せ!みたいな。私にとっての育休は、まさにそんな感じでした。

もう本当に正直なところ、仕事に復帰した時は「仕事の方が楽じゃねーか……!」って思ったもん。

✳︎

何がそんなにツラかったのかと思い返すと、まあ色々ありましたが、大きかったのは妻との喧嘩(だいたい負け戦)が激増したことです。ただでさえカオスな新生児育児の現場なのに、たいていピリピリムード。

ある日買い物から帰宅すると、机の上に、読めば夫婦円満になるという噂の本「夫のトリセツ」「妻のトリセツ」が置いてありました。我が家にヘルプにきてくれるお義母さんが2人の険悪ムードを見るにみかねて買ってきてくださったのです。(お義母さん、ありがとうございます)

まだまだ世間じゃたった7%の男性育休を取得して、しかも私は(少なくとも当人の主観では)本気で育児に向き合っているはずなのに、なぜ喧嘩が増えてしまうのか!?

ひとつ、思い当たる節があります。うちの場合、だいたい妻のこのひとことで喧嘩の火蓋がきって落とされるのです。

「なんでそういうことするの?ちょっと考えればわかるでしょ!」

私が良かれと思って言ったりやったり(あるいは、やらなかったり)することが、なぜか妻の地雷を踏み抜いてしまうという怪奇現象が起こります。

でもこのひとことが妻から飛び出す時、私には“ちょっと”考えるどころか、雑巾並みに知恵を絞ってもわかりません。そしてこの「なんで怒られてるのかわからない」という態度がさらに事態を悪化させていくのです。

後で妻の機嫌が良くなった時に怒った理由を聞いてみると、「たしかにそりゃ俺が悪かった」と思う場合もあれば「え〜〜〜😩」って思う場合もあります。

なんでこんなことになってしまうのか……? 私は、2つの仮説を持っています。

ひとつは、出産後にくるホルモンバランスの急激な変化によって奥さんの精 まずひとつは、出産後にくるホルモンバランスの急激な変化によって妻の精神が少し不安定になっていること。

そこに寝不足という最凶のスパイスが加わっているので、もう妻自身にも自分がコントロールできない状態になっているようです。月をみたサイヤ人状態なんですね。

この時に「ちょっと考えればわかるでしょ」と言われたことは、ちょっと考えても絶対にわかりません。大人しくサンドバックになる以外の方法はなさそうです。

でも、もうひとつ仮説があります。それは、育児に関する意思決定が妻に偏っていたことです。うちは夫婦で家事育児に関わるタスクは基本的に5:5で平等にやっています。ママにできてパパにできないのは授乳くらいのもの。

しかし、この時期の育児に関する意思決定にどういうスタンスで臨むかは悩みました。なぜなら、母体に直結していることが多いからです。

例えば、わかりやすいのは授乳です。うちは母乳とミルクの混合ですが、妻は出来る限り直母(直接母乳をあげること)の比率を増やしたいと考えているので、その前提で育児のスケジュールや役割分担が決まっていきます。

しかし、仮にですが、ここで私が「いや!直母は手間がかかるから効率を重視してミルクだけで育てようぜ!」と主張するのはどうなのか……?

妻は娘の成長のことだけでなく、自身の身体のことまで加味して意思決定をしています。乳腺炎とか、おっぱいには繊細な問題がたくさんあるからです。だから、私としては自分で調査したり考えたりしたことよりも、妻の意思決定を尊重しようと思いました。

すると、ミルクをあげる量やタイミングも、睡眠時間も、この母乳を軸にして決まっていきます。娘にミルクをあげすぎるとおっぱいを飲まなくなってしまいますし、逆に少なすぎると体重が増えません。また、一定時間娘がおっぱいを飲まないでいると、おっぱいが詰まって乳腺炎になってしまいます。だから、頻繁に授乳せねばならないのです。

自然、私は妻の指示を受けることが多くなっていきます。そしてこんな感じのことが、色々なシーンで起こります。これが続くとどうなるか? そう「指示待ちマン」の出来上がりです。仕事で一番ダメなタイプのやつですね……。最初はよかれと思って妻の意思を尊重していたのに、気が付くと、育児に関する勉強や調査はほとんど妻がやっていました。

そうした調査に基づいて妻が意思決定したら、当然それを尊重するわけですが、この時点で妻と私の間には意識と知識に大きな溝が出来上がっているのです。そしてこのギャップは私の行動となって現れ、妻の地雷を踏み抜くことになります。

「なんでそういうことするの?ちょっと考えればわかるでしょ!」

 でも、この時にはもう”ちょっと”考えてもわからなくなってしまっているのです……(涙)統計とかはありませんが、この罠にハマっているパパは多いんじゃないかなぁ。妻の意思を尊重するのは間違っていると思わないけど、だからといって、指示待ちマンじゃどうしようもないわけです。難しい……。

✳︎

とはいっても、こんなピリピリムードが続くと私だって落ち込みます。ここに寝不足が追い討ちをかけてくるので、その落ち方は普段の比ではありません。

そもそも育休なんて取らなければ喧嘩なんて起こらなかったのではないか……? そっちの方がお互い精神衛生上よかったのではないか……? こんなふうに思ってしまったこともあります。

そうやってモヤモヤしていたある日の深夜、というか早朝。いつも通り娘のはちきれんばかりの泣き声で目を覚ましました。この時はまだ娘も1カ月になってなくて、おっぱいをうまく飲めませんでした。

妻だって新人ママなので、うまくあげることができません。おっぱいも乳腺炎でとても痛い時でした。娘だけでなく、妻まで泣いてしまっていました。

おっぱいを飲みたいのに飲めない娘と、あげたいのにあげられないお母さん。母娘で悲しそうにわんわん泣きながらのひどい授乳の光景でした。よくテレビとかで出てくる神々しい母子の授乳シーンはいったいなんだったのか…

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私はあわてて娘が少しでもおっぱいを飲みやすいように体勢のサポートをしました。そうしたら、なんとかチュパチュパ飲み始めてくれました。よ、よかった…… と思って一息ついた時、妻が涙を流しながら「ありがとう」と言ってくれました。

この時、わかった気がしました。育休は、取りたいとか取りたくないとか、そういうものじゃなくて、取らなきゃいけないもんなんだと。

喧嘩するくらいいいじゃないか。そんなことより、パートナーを子育てという戦場に、二人で戦おうと誓った戦場に、たったひとりで孤軍奮闘させるわけにはいかない。そんな風に思うようになりました。

それから育休を終えて、今は私も妻も仕事に復帰しています。相変わらず夫婦喧嘩は定期的に勃発しますが、この育休があったからこそ、夫婦の信頼関係が築くことができました。
 
そして、実はこれが育休で一番大切なことなのかもしれません。子育てという試練はこれからの方が圧倒的に長いわけですから、パートナーとの信頼関係は何よりも大切。育休はそれを築く最高のチャンスです。

私はこれから友人が育休を取得することになったら、「楽しんできてね」と言ってから「頑張ってこいよ」と気合いを注入していくつもりです。


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マーケター / 認定NPO法人フローレンス 代表室。日経新聞に寄稿中。5/19に光文社から出版予定。前職はリクルートで営業と新規事業開発(プロダクトマネージャー)。市長選に出馬するもボコボコにされた経験あり。慶応義塾大学総合政策学部中退。妻と娘と三人暮らし