忘れられない一杯
皆さんには忘れられない一杯はありますか?
コーヒー豆屋を始める前、勉強のためにといろいろなコーヒー屋さんでコーヒー豆を買っていた。
浅煎りの酸味に特徴のあるコーヒーから、深煎りの苦味やコクのあるコーヒーまで、さまざま試した。
初めのうちは自分の好みもよくわからなかった。名前のインパクトだけで買ってみたり、お店の方のおすすめの豆を買ったりした。
次第に好みの国や精製方法による違いなどが少しずつわかるようになった。
そうやってコーヒーを少しずつ知っていく過程で出会ったのが「ゲイシャ」
※「ゲイシャ」というのは品種の名前で、ゲイシャの他に有名な品種には、ブルボンやティピカ、カトゥーラ、カトゥアイなどなどたくさんある。
調べていくうちにどうやら今まで自分が飲んできたコーヒーに比べて、ものすごく高価であることがわかった。
もちろん高いのには理由がある。
2004年にパナマのエスメラルダ農園が品評会に出品したゲイシャが注目を集めた。史上最高値で落札され、一躍その名が世界に広まった。
そこからどんどん需要が増えてきたり、栽培が他の品種に比べて難しかったりするため、高額になっている。
……と、こういうことを知ってしまうとコーヒー好きとしては一度は飲んでみたい!と思ってしまうのだ。
ゲイシャのことを知ってすぐに、たまたま販売しているお店を見つけて、ワクワクしながら買いに行った。
普段買っていた豆の何倍もの値段だったが、どうしても飲みたくて50gだけ購入した。
まず豆を挽いた時の香りが今までのコーヒーとは全く違った。まるでお花畑にいるかのようなフローラルな香り。
正直に言うとその香りだけでもけっこう満足してしまった。
「すげぇ〜、こんなコーヒーあるのかー!」
もちろん飲んでも口の中に広がる香りがすごかった。
とにかく衝撃を受けたゲイシャ。
そして、同じゲイシャでも生産国や精製方法が変われば、味わいが変わるのがコーヒーのおもしろいところ。
その違いも知りたくて、いろいろな国のゲイシャを買ってみた。(高額なため、少量ずつ、ごくたまにだったが…)
どれもすごく美味しかった。
が、やはり人間初めて出会った時の衝撃を超えるものはなかなかない。
どれがおいしいとかおいしくないではなく、やはり最初のインパクトというのは強烈だ。
毎日飲んで飽きない、おいしいコーヒーはもちろん大事。
ただ忘れられないほどインパクトのあるコーヒーを飲んでみると世界は広がる。
コーヒーの幅が広がったことは、コーヒー豆屋を始めるにあたりすごく役立っている。
「忘れられない一杯」を頭の片隅に置いて、今日も私はコーヒーと向かい合っている。
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