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【星野源×マリオ×奥山由之】星野源が”創造”する普通と黄色いポップワールド

常時SNSで愛全開の星野源オタの友人が、いつもに増して興奮気味に暴れていた。どうやら今日は久しぶりに新曲が配信されるらしい。

星野源はもちろん好きだか、新曲出たら聴くぐらいでさほど熱心に追っている訳ではない。

星野源の新曲“創造”PVがYouTubeでプレミア公開 監督は奥山由之 星野源の新曲“創造”のPVが2月17日0:00にYouTubeでプレミア公開される。 星野自ら「ヤバいものが出来ました」と語る同曲は、任天堂「スーパーマリオブラザーズ」の35周年テーマソングとして提供した楽曲で、2月17日に配信リリース

監督が奥山由之さん?この時点で曲は聴いていないが、監督が奥山さんというだけで私の中で神曲が確定した。

奥山由之さんはカメラマンや映像クリエイターなど、写真や動画において抜群のセンスを発揮し、フレッシュなルーキータレントをいち早く売り出すブレイクの登竜門となった今や名CMのポカリスエットのCMや、数々の著名人のMVを手がける超売れっ子の若き異彩だ。

近年発表した奥山由之さんが手がけた作品とといえば、米津玄師の「感電」。

完全にドラマ「MIU404」の流れじゃないか。絶対米津さんからの星野源への紹介だよね?ありがとうございます。連続で神タッグが来るとは、生きているといいことあるな(大げさ)

星野源×マリオ×奥山由之=創造

期待値としては米津玄師のアルバムよりも高かった。去年はドラマと映画で芝居三昧の星野源が久しぶりに完成系の新曲を配信する訳だし、何よりあのスーパーマリオブラザースとのコラボレーションだからだ。

...パーフェクトでしかなかった。天才とは簡単に言いたくはないが、天才だ。

星野源の曲でもあるし、しっかりマリオのテーマソングでもある。曲もMVも星野源成分とマリオ成分が五分五分のパーフェクトなバランス。ティラミス並に完璧な配分の黄金比だ。
星野源の持つカラフルポップな世界と、賑やかなマリオワールドが手を組んだら最強に決まっているのだけど、このMVはマリオの緻密な世界観まで絶妙なバランスで表現していて、クッパより最強だった。

こちらの記事にも書いてある通り、実際のゲームBGMに使われていたサウンドを取り入れたり近い音を作ったりしている。上記URLはファミ通発信なので、信頼の塊である。BPMは「恋」並に早ので、そのテンポ感マリカーの疾走感や走るマリオを連想させ、曲を聴いているだけでゲームをしているかのようでとても楽しい。

とても鮮やかでカラフルポップなMVだが、奥山由之氏の映像の技法はかなりシンプルだ。今までもCGを大量に取り入れてお金を使いました!というものはあまりない。

星野源を基準に何カットか撮って組み合わせ、テクスチャの色を変えたり、ワイプやミラー、連写、モザイク、残像など動画作成ソフトのデフォルトに入っているようなツールを多く使う。

そのシンプルさが、無限大にマリオの世界を連想させるのだ。マリオ、ルイージ、ピーチ姫、クッパなどの主要キャラクターを登場させてのアニメーションコラボでは無いところが、任天堂からの”星野源にマリオの曲を作って欲しい”というリスペクトを強く感じる。

歌詞もマリオだけに向けた歌でなく、産みの親である任天堂にも向けられている。

北海道新聞のインタビューを読むと、星野源はしっかりと意思を持って曲を作っていることが伺える。他のバンドのインタビューを読むと「気が付いたら曲が出来ていた」と答えるバンドマンも多く、それはそれで凄いと思うのだが脳内や制作意図が見えなくてフーン、と終わってしまうこともしばしばある。

Let’s take
Something out of nothing
Out of the ordinary
Breaking rules to create our own way
Playing everyday

Let’s chase
All the yellow magic
Till we count to a hundred
Running directly to you today
Playing over again

イントロを英歌詞にすることで、日本だけでなく世界にも発信する。

僕は生まれ変わった 幾度目の始まりは
澱むこの世界で 遊ぶためにある
配られた花 手札を握り
変える 運命を
死の淵から帰った 生かされたこの意味は
命と共に 遊ぶことにある

Aメロの歌詞は星野源自身のことだと思う。くも膜下出血を患い生死を彷徨った星野源だからこそ、「人生を遊ぼう」と言い切れる歌詞が書けると思う。

独(いち)を創り出そうぜ そうさ YELLOW MAGIC
色褪せぬ 遊びを繰り返して

そもそも私はゲームをかじったのは小学生の時ぐらいで、任天堂のことはホワイト企業とか、どう森やってたとか、そんな上部の情報しか分からない。このフレーズの他にも任天堂を連想させるリリックが多くあるのだが、ここら辺は詳しい方の記事を読んで欲しいと思ったが、公開して1日も立っていないためまだ考察記事があまり上がっておらず参考資料が無いので、YouTubeのコメント欄に超詳しくオマージュの考察が書かれているコメントがあるのでそちらを読んで欲しい。

“独創“は、任天堂の歴代社長が大切にしている言葉だそうだ。これもファミ通の記事を読んで知った。

星野源はソロデビューしてから“独“りで音楽を生み出した。

”独”つ(1つ)のゲームを膨大なゲームクリエイターらと共に作り出す任天堂という組織と、独り(1人)で俳優、ミュージシャン、執筆、ラジオパーソナリティ、MCなど表現者として複数の顔を持つ星野源、表現や創作の手法は全く違うのに、任天堂という巨大ゲームクリエイティブ組織と星野源はどこか重なる。

星野源が「yellow」にこだわる理由

↑このジャンプしているシーン可愛いくないですか?

MVで黄色いシャツを着ているのだけど、歌詞中の「yellow magic」がどうしても気になる。サビに唐突な英単語、どうしてもこの単語を入れたかったことは確かだ。

星野源が敬愛している細野晴臣さんが坂本龍一さん、高橋幸宏さんと組んでいた(過去形なのか?)YMO(yellow magic Orchestra)のグループ名は「白魔術でも、黒魔術でもない黄色い魔術を見せよう」という意味が込められているそうで、イエローの意味は東洋人らしい。

アルバム「Yellow dancer」の発売時に星野源自ら新たなジャンル「イエローミュージック」を提唱している。

「ブラックへの憧れと共に、日本情緒あふれるポップスを目指した結果、「イエローミュージック」と呼べそうな楽曲たちが生まれました。体だけでなく、心も躍るようなアルバムができたと思います。」

ー本人コメント

ブラックミュージックはSuchmos、最近ではWONKなど、シンセサイザを取り入れた、体が揺れてしまうような抜け感の強いオシャレな音楽のことを指す。ルーツはその名の通り、黒人発祥の音楽だからブラックミュージック。

星野源の音楽はその洗練された抜け感からシティポップに部類されることもあるが、彼にとっては単純に「ブラックミュージックがあるなら日本人(東洋人)が作るイエローミュージックもあってもいいのでは?」と言った感じなのかもしれない。J-POPとブラックミュージックの融合が“星野源の作りたい音楽”であることはとても分かる。

「yellow magic」黄色い魔法、意訳すれば日本人の魔法。

日本生まれの星野源とマリオ。星野源は日本人として生まれてきた誇りや、日本人の日本の新しいカルチャーを“魔法”と表現したかったのかもしれない。

あぶれては はみ出した
世をずらせば真ん中

世間が星野源中心に広がる音楽の未来は、もうすぐそこにあるような気がするな。

星野源が作る”普通”と当たり前

少し前に婚活女子の「見た目は星野源“で“いい」というネット記事がいくつかのメディアで炎上に近い話題になっていたが(正確には取材したひとの発言であり記事自体に問題があったわけではないのだが)、ミュージシャンとして活動する傍ら、出演作は他の同世代俳優に比べれば少なめにも関わらずドラマでも映画でも主演枠を獲得、さらには出演作では次々とヒットを連発し、実力人気ともに着実にキャリアアップしてきた星野源は、表現力やポテンシャル、そして努力、全てひっくるめて普通とは思えない。

芝居、音楽、執筆、ラジオパーソナリティ、番組MCなど明らかに多彩な上、数多くの賞を受賞し、さらには紅白歌合戦出場の常連である。そんな大スターなのにファッションも髪型も奇抜とは程遠く、いつも行ってるカフェでコーヒーを嗜んでそうなほど普通。

 野木亜紀子は「星野源は普通を普通に演じれるひと」と評価しているが、星野源はどれだけ人気が出ても気取らず、素朴で、庶民的で、等身大で、目の前のことを全うしているだけで、背伸びをしないだけなのだと思う。歌も芝居もやって普通、喋りも出来て普通、その”普通”が彼の本質なのだと思う。

「能ある鷹は爪を隠す」、彼は日本古来より存在するその諺通りの人間なのだ。

私たちの星野源であり、みんなの星野源でもある

マリオへの愛と任天堂のゲームクリエイターへのリスペクトの詰まった「創造」。「創造」の駆け抜けるアップテンポな陽気さは、ゲームオーバーしても何度もプレイしてしまうマリオのように、何度もリピートしても楽しく聴けて見れて、「創造」を聴くだけでもマリオワールドに浸れてしまう。

星野源のポップ性、奥山氏の日常性、そして長年愛され続けるスーパーマリオシリーズの大衆性。音楽、映像、ゲーム、それぞれのアートが1つの作品にまとまった時、とんでもない爆発力を起こす。

そして彼らはまた新たなスタンダードを作り、さらに当たり前に溶け込んでいたカルチャーが改めて何が”普通”なのかも私たちに教えてくれた。

先ほどの星野源は普通なのか?という議題の続きにはなるが、マリオを知っている普通、任天堂というゲームクリエイティブ集団を知っている普通、星野源が存在している普通。

現代の私たちの“普通”の概念は、ある意味彼らによって形成されていると言っても過言ではないかもしれない。

星野源発祥の新作イエローミュージックを聴きながら、学校から帰って夕ご飯が出るまでマリオに熱中してDSを手放さなかった小学生の時に思い浸る。そうやって生きるも死ぬも考えていなかったあの頃を思い返す時間も10年以上経った今、たまにはいいなと思えてきた。

ラストの投げキッスで“直接”的に愛を飛ばしてて、溢れるほどに愛に満ち溢れた楽曲だと思った。

彼らの物作る冒険と現代カルチャーのアップデートは、愛と愛が弾けたここからまたはじまるのだ。

任天堂さん35周年おめでとうございます、これからも私たちの生活に彩りとワクワクをたくさん届けてください。

...ちょ、待て待て。私は星野源の話をしていたのに、なんだこのイキったロン毛もじゃグラサンは?…いや、ライブで見たことある。勝手にステージ乱入して確かニセ明とか名乗ってたな。怪しいヤツめ、クリボーに当たってゲームオーバーしてしまえ。


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