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österreich「幾度目かの最期」映画館上映会【感想】

2020年3月13日、新代田FEVERで行われた高橋國光(元the cabs/ギター)のソロプロジェクト「österreich」初の自主企画「幾度目かの最後」の映画館上映会が池袋HUMANシネマで行われた。

先日のTKの映画上映がとても良かったので、情報解禁と同時に即決。ライブは都合が合わなかったのとライブ禁止令が出てしまったために行けず、こうした形での上映は大変ありがたい。

österreich名義でのライブは、初ライブとなったTKfrom凛として時雨の対バンゲストとこの自主企画の2回のみ。そのうちの1つという貴重なライブ映像だ。
(今年決まっていたライブは軒並み中止・延期になってしまった)

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1曲目は初ライブ同様「贅沢な骨」
國光さんとベースの三島さんが、ボーカルの鎌野さんの背後越しに掛け合っていたのが微笑ましかった。初ライブの時は観客全員殺す勢いで殺気立っていた國光さんが、初っ端から凄く楽しそうにギター弾いていたのが印象的だった。

やっぱり國光さんの地獄のノイズのようなギターの音は全く変わってなかった。きっとあのギターの音こそが本質なのだ。

続けて衝撃の音楽業界復帰作となった「無能」。常温の真っ白の雪のような温度感。鎌野さんの高音ボイスで、泥臭いはずのライブハウスが神聖な場所になった。鳴る音楽によって、こんなにも空気が一変するのか。

cinemastaffから飯田瑞規を迎えて新曲を披露、その後の映画館で聴く「映画」も音源とは印象が全く違って良かった。鎌野さんの声と佐藤さんのピアノの旋律がパールとダイヤモンドのネックレスのように透明で輝いていて、リズム隊のベースとドラムも存在感があって聴き応えあった。

今年発売のミニアルバム「四肢」にも収録されている「動物寓意譚」、飯田さんと鎌野さんの贅沢なツインボーカルは「ロミオとジュリエット」のような戯曲を翻弄させ、その物語にはライブならではの熱量が加わり、ラスサビからの國光さんと飯田さんのギターに三島さんのベースが加わってからが特に圧巻で、もはや別次元だった。

「Swandivemori」は新木場の初ライブの時「今日のために新曲を2曲作ってきた」と言っていたうちの一曲。四つ打ちの開放感は夏風のように爽やかで、疾走感が気持ち良く、映画館なのに思わずライブを見ているような臨場感だった。österreichの曲でトップを争うぐらいに好きな曲だ。

ラストは代表曲「楽園の君」
初ライブでこの曲を聴いてから完全に堕ちた。飯田さんの声はこんなにも私の好きな声で、こんなにも綺麗な声なんだなと再確認したし、高橋國光が作る音楽が存在することも再確認した。それ以上にあまりにも曲が美しくて、これがösterreichなのだという確信と同時に、楽園への入り口だった。

赦されるまで聴いていたい見ていたい、嘘偽りない純度の高い美しい音色と景色だった。

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ライブ開催日はコロナが感染拡大しはじめた頃で、日本を代表するアーティストをはじめライブが軒並み中止になってる最中、様々な意味での決死の決行だった。

そんな状況下でも、自主企画開催に当たってnote内で國光さんが綴った「ライブをやりたい」という言葉がとにかく嬉しかった。

そして、MCでの「音楽は続けます」という言葉に希望を持った。”続ける”という言葉は何度でも安心する。信じてよかった。國光さんが作る曲が好きなので、待ってます。

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österreichの余韻は他のバンドとは明らかに違う。

ライブの映画上映を観に行ったのは2回目。

TKfrom凛として時雨は圧巻の音圧と緊迫感で思わず息を止めてしまう場面が多く、上映後のお土産は”虚無”だったが、対照的にösterreichは固結びされたリボンを解かれ、花がふわりと咲くような”あたたかさ”がお土産だった。
österreichの曲は明るいとは言えないが、根本的なあたたかさが余韻として残った。既に琴線の存在を確認しているところにTKが触れ、私の知らない琴線にösterreichが触れている。

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徐々にライブも制限が解かれてきた。

一瞬一瞬が大事なライブを映像として残すことを嫌うアーティストも少なくないが、今のライブの映画上映は”当たり前”を取り戻すための手段に過ぎない。

ライブの映画上映はアーティストの財源確保だけでなく、ライブに行けなかった人のため、ライブに行った人が余韻に浸るため、どちらにせよ”ライブを残す”という行為が、今後どんなスタンスのアーティストも必要になってくるのかもしれない。

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映画館出る時、見覚えのある髪色の男性がいると思ったらcinema staffの飯田さんと國光さんご本人だった。國光さんは後ろ姿だったけど雰囲気で分かった。
直接感想を伝えたいのは山々でしたが、さすがにこのご時世ですので心でビームを送りました。

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