見出し画像

【ライブレポート】鋭利な轟音と照明の音楽芸術「凛として時雨 竜巻いて延命」ツアーファイナル Zepp Haneda 2022.8.26

個人的に凛として時雨のライブは前回ツアー「Perfake Perfect Tour」の横浜公演以来のため、実に約1年8ヶ月ぶりである。

今回の「竜巻いて延命」は「DEAD IS ALIVE」ツアーの追加公演。私はこのライブが最初で最後のツアー参戦なので、ただの絶体絶命ライブである。

ライブレポート

登場するなり「abnormalize」「laser beamer」とPSYCHO-PASSへの祝詞で開幕。いきなり世間的に知名度をドカンと上げた「abnormalize」とはさすがに仰天、今まで以上に尖った皮切りである。

3曲目の「Sadistic Summer」に関しては余談を。

ライブ前に元[Alexandros]ドラマー・庄村聡泰が参加している「スナックNGL」というアパレルブランドの展示会に行き、この日はサトヤスさんが在廊日だったためお話しさせてもらった。

ちょうど時雨とドロスが対バンしたライブの記念Tシャツを着ていた流れで「この後時雨のライブに行ってきます」と伝えたら、サトヤスさんが店内BGMで即刻「Sadistic Summer」を流してくれた。

やけに選曲がコアだと思ったら[Champagne]の「city」のドラムのフレーズは「Sadistic Summer」を参考にしたそうで、その話はドロスのベストアルバムのライナーノーツで知っていたのだが、具体的にどこのフレーズなのかをありがたいことに直接教えていただいた。

そんな話をしたので「今日やってくれるかな」と淡い期待を胸に会場へ向かったわけだが、セットリストを知らずに行ったのでまさかやってくれるとは思わず、3曲目にして私の心は既に歓喜で大洪水だった。

「High Energy Vacuum」「Chocolate Passion」とアルバム「# 5」からハードで変則的な曲を連続で披露。「High Energy Vacuum」は”ハイエナ”のようなスピード感と獣のような畝りに、こんなにも曲は勇ましく生きるのかと度肝を抜かれた。

TKのギタートラブルで少しストップするも、再開の言葉を言わずに345がメインボーカルの「illusion is mine」で再開。「大丈夫です」とも言わずに曲が始まったのだが、あまりにもスムーズな再開に阿吽の呼吸とも言える長年の絆を見れたような気がした。怒涛の暴風雨のような曲らが嘘のように鮮やかで柔らかく透明だった。

「this is this?」の迫力とエネルギーは凄まじかった。ラストサビのTKの超絶早弾きは国宝級だと度々思う。

バンドマンの凄いと思うところがスタミナだ。なんだかんだ言って40歳前後、しかもTKと345はボーカルと楽器を兼ねているので消費する体力は通常のバンドマンより多いはずだ。絶対きついだろうに、それでも感覚20代のスタミナでライブをしているように思えた。

ピ「こんばんは凛として時雨です!今日はツアーファイナル、来てくれてありがとうございます。ツイートしたんですけど時雨のファンは黒い服の人が多い、と思いきやそうでもないな…WANIMAみたいな派手なシャツ出すべきかな…345に冷たい顔された…」

(345がしてないと顔を横に振る)

ピ「いつかサンリオピューロランドでライブしたいんですけど、その時はパステルカラーで!そういえば昨日Twitterにトレンド入りしまして、昨夜はオーラルのイベントに、今日はフジファブリックのイベントと連日発表させてもらいまして。良かったら応援しに来てください。」

凛として時雨の勢いは止まらない。

後半は「DIE meets HARD」から始まり「Who What Who What」「ハカイヨノユメ」と怒涛の連続攻撃。

「ハカイヨノユメ」、その名の通り、破壊衝動に駆られたかのように自らの音楽を壊していくかのような、見えない壁を壊していくようだった。

今日の時雨は一味違う、いや違いすぎた。曲を重ねるに連れて、鳴り出る轟音の熱量が凄まじく、とにかく彼らの熱意が溢れ出ているのだ。

心音はピエールの力強いドラムにコントロールされ、345の芯の通ったベースは聴く人の存在証明もするように、TKのギターは驟雨のように美しく降り続け、345のハイトーンボイスは声は脳天を四方八方から貫き、TKのシャウトは真正面から殴られるように食らう。

「DISCO FLIGHT」「Telecastic fake show」とライブ定番曲を演奏。通常テレキャスは後半残り2〜3曲で演奏される事が多いため「ここでテレキャス?!この後のセトリはどうなってしまうんだ?!」と一気に予測不可能になった。

「nakano kill you」ではピエールお得意のドラムスティック回し、新曲「竜巻いて鮮脳」は音源よりもポップ性が強いように感じた。

345「こんばんは。グッズを作りました... アクリルスタンドです(この3人のステージを再現しました、というジェスチャー)是非是非。あと、赤のタオルと、黒のタオルを作りました。言ってることがちょっと違います。あとはTシャツ、Tシャツ、Tシャツや...(手を広げたりしてTシャツを見せる)作りました。」

345「みなさん、ツアーファイナルですけど何か、大丈夫ですか?」

(全員でどうぞどうぞのフリをする)

(TKがギターを鳴らす)

345「ギターで応えてくれてるみたいです。えー、今日はたくさんの人に集まっていただきありがとうございます、またツアーが出来るように頑張ります、凛として時雨でした、ありがとうございました。」


ラストは「傍観」…と思いきや、本公演ではトップバッターで演奏されたという「Missing ling」で幕を閉じた。

音源では真冬のヨーロッパのような感情の無い寒冷な温度感だったはずなのに、なんとも言えない感情に取り巻かれた。

ステージが夕焼けのようなオレンジに染まると、荒れ狂うメンバーを他所目に、不思議と夕暮れ時のようなエモーショナルな暖かさに包まれたような気がしたのだ。

この日の「Missing ling」で彼らのステージで感じたのは「次はあの頃のライブハウスで」と、お互いに目に見えない約束を交わしたかのような暖かさだったような気がする。

いつもならラスト曲で3人が掻き鳴らし、叩き鳴らしながらステージから捌けることが多いのだが「Missing ling」では最後にしっかりと曲を止め、TKが「ありがとうございました」と挨拶してからステージを去った。なんだかんだで、こんなにもきっちりとした去り方をする時雨を初めて見た。

普通のロックバンドが通常やる光景ではある。だが、時雨がやると意味が違ったように見えた。

立つ鳥跡を濁さずを体現するかのように潔く、約1 時間半のライブはホログラムだったかのようにあっさりとした引き際だった。

ライブ後、私の身体に刻まれたのは、凛として時雨の驟雨を浴びた多幸感と今まで見てきた時雨のライブの上塗りするかのような強い耳鳴りだった。

感想

今回はマスなしスタンディング、つまり従来のライブハウスである。ただし制約は今までと同じくマスク着用、声出し・モッシュ禁止となる。

私が見た限り無理やり前の方に突っ込んだり、大声を出したり、そうしたひとは一切見受けられず、マナーを守っているように見えた。

某夏フェスで声出しを煽ったバンドが連日炎上したが、ルールを守るロックバンドが1番カッコいいと思う。

凛として時雨は誠実に走り続け、新曲もライブも常に最高を更新してくれる素晴らしいバンドだ。

満足感、多幸感、セットリスト、全て引っ括めて凛として時雨を好きでよかった、単純にそう思える素敵なライブだった。

セットリスト

  1. abnormalize

  2. laser beamer

  3. Sadistic Summer

  4. High Energy Vacuum

  5. Chocolate Passion

  6. illusion is mine

  7. thin is this

  8. Who What Who What

  9. DIE meets HARD

  10. ハカイヨノユメ

  11. DISCO FLIGHT

  12. Telecastic fake show

  13. nakano kill you

  14. 竜巻いて鮮脳

  15. Missing ling


新グッズのアクスタ、とてもいい感じです。

最後までお読み頂きありがとうございます!頂戴したサポート代はライブハウス支援に使わせていただきます。