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専門書を買って書店・出版社・研究者を応援してみる

Twitterに研究者がいて、リアルタイムの発信を目にすることができる。ネットで検索すれば論文もサクサクと出てくる。電子書籍もある。そんな現代、書店に専門書がある状態というのはそこまで求められなくなっているのかもしれません。そもそも専門書は製作に時間がかかるし、部数は少なく、単価は高い。出版社や書店からしても決して「売れる本」ではないと思われます。取り扱いが少なかったり、更に減ってしまったりするのも仕方ないのかもしれない。

そんななか、この記事では、敢えて本屋さんで専門書を買うことをお勧めしたいと思います。本屋さんで専門書を買うことは、1人でやるミニミニ社会運動だ、というのが言いたいことです。特に人文・社会に分類されるような専門書を念頭に置いています。

体系的な知を手元に

専門書の良いところの1つは、その分野に関する体系的な知が得られることだと思います。Twitterでは確かに様々な発信はされますが前後の文脈は伝わりにくいことが多いし、蓄積された知が等閑視されてしまうこともあるように感じます。

その点、専門書はたいてい多くの関連する文献が参考にされそのリストの掲載もあり、研究者自身の新たな発見が丁寧に論じられています。著者本人だけでなく、様々な人が関わり良く練られて世の中に送り出されます。もちろん中にはトンデモ本もあるかと思いますが、何かを知りたいと思ったとき、真っ当に頼ることができるのはよく検証された専門書ではないでしょうか。

専門書は書籍としては高額なものが多く、購入に慎重になることもあるかもしれません。書店であればその場でさらっと目を通すことはできるので、どんな目次なのか、どんな文献を参考にして書いているのか、序章でどれくらい内容がつかめるか、どんな文体なのか、そんなことも把握できます。ある程度吟味できるというのはありがたいことです。

出版社や研究者に少しでも貢献する

体系的な知を得るために、専門書はなくなっては困るものだと思います。立ち読みもいいけれど、ネットで知るのもいいけれど、なくなっては困るような価値あるものにはなるべく対価を支払いたいものです。

なので、「これはとても素晴らしい!」「もっと読まれてほしい!」と思った本は、お金の許す限り新刊で買うようにしています。そうすることで少しでもこんな本をつくってくれた出版社や研究者に需要を示せるとともに、ちょっとした経済的な貢献もできるのです。推しに貢ぐようなものですね。

しかし、自分の懐具合で購入できないときも当然あります。そんなときは図書館で購入希望を出すと良いのかなと思います。私も学生の頃は大学図書館でたっかい専門書を購入してもらいました。ありがたい……。

ささやかな意思表明として

そんな専門書を本屋さんで買うことは、本屋さんに対する「私はこのことに関心があります」という意思表明にもなると思っています。

あまりにもささやかな行為ですが、その本を必要としている人間がいるんだと本屋さんに直接示せることは、恐らくそこまで売れ行きは良くないであろう専門書を揃えてくれている本屋さんへの感謝の気持ちと共に何かが伝わるような気がします。また、微力ながら本屋さんへの経済的な貢献にもなります。もし好きだなと思う本屋さんがあれば、少し時間がかかってもそこに買いに行ったり、なければ取り寄せてもらったりしてみても良いかもしれません。

店員さんと言葉を交わさずとも、著者と直接話すなんて到底無理でも、素敵な品揃えの本屋さんで興味のある本を買い、それぞれにささやかな連帯を表明してみる。そんなミニミニ社会運動、いかがでしょうか。

おまけ

私の場合、自宅から歩いて行ける範囲に小さな本屋さんがあり、そのサイズ感の割に専門書を充実させていらっしゃるのでそちらで購入することが多いです。興味のそそられる本がたくさんあり、私にとって本のキュレーター的な存在です。

最近そちらで購入した本は、『日常生活と政治――国家中心的政治像の再検討』(田村哲樹編、2019、岩波書店)『日常生活と政治――国家中心的政治像の再検討』(田村哲樹編、2019、岩波書店)『【定本】災害ユートピア――なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』(レベッカ・ソルニット、高月園子訳、2020、安芸書房)などなど……。

どれも自分の関心事項だったり好きな著者だったりで、こうやって揃えられていることはとても嬉しいし、買わずにはいられない!という気にさせられます。専門書はこの本屋さんで買うぞと思っているし、きっと本屋さんも、この系統の本はまんまと買ってくれる客がいるからまた仕入れたるぞと思ってくれていることでしょう。こうやってちょっとずつ、自分の関心あるものとつながっていけると良いなあと思います。

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