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コラム“Pediatrics Note”と小児科医〜インサイド・ヘッド2〜

こんにちは。小児科医のcodomodocです。神経疾患、神経発達症、心身症などの診療をしています。最近はマルトリートメント(不適切な養育)な環境から発達性トラウマ障害をきたした子ども達への医療的な関わりについて勉強をしています。

うちの病院の院内報に毎月書いているコラム“Pediatrics Note”です(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。
今回は2024年の9月号です。

今月も映画の話を。『インサイド・ヘッド』はご覧になりましたか?

ホッケーが大好きな少女ライリーの頭の中では、“感情”たち(ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリ)が司令を出し、彼女の感情を調整しています。父親の仕事の都合で、大好きな田舎から都会へ引っ越したライリーが、新しい生活に慣れていく過程で起こる感情の変化を、“感情”たちの奮闘として描いています。

陽の感情「ヨロコビ」と陰の感情「カナシミ」が交わることで、すべての感情が存在することの大切さを教えてくれる作品です。

先月、その続編が公開されました。高校入学を控えたライリーは、高校のホッケーチームのサマーキャンプに特別参加しますが、その初日の朝、突然思春期が始まります。

脳内の司令部に新たな“感情”たち(シンパイ、ハズカシ、ダリー、イイナー)が現れ、それまでの“感情”たちは司令部を追い出されます。新しい“感情”たちの登場により、ライリーは他者との違いに気づき、自分を振り返ったり、将来について考えたりするようになります。これは思春期の大切な発達過程ですが、やがてある“感情”が暴走し、大騒動に発展します。

このシリーズは、子どもの心の発達において「本能的な感情を育む」ことの重要性を教えてくれます。そのためには、大人(養育者)の助けが必要です。子どもたちの感情の発露をしっかり受け止め、感情ごとに名前をつけて整理し、安心感を与えることが求められます。

感情の育成が不十分だと、感情が高ぶった時にその理由が分からず、その感情を「ムカつく!」の一言にまとめてキレてしまったりします。背後に悲しみや寂しさ、かまってほしいという感情があっても、本人自身も気づけません。

このような状態で思春期を迎えると、他者との違いに気づいて傷ついたり、将来への強い不安を感じたりすることが増えますが、それらは漠然としていて、何が起きているのか、どうすればよいのか分かりません。代わりに攻撃的になったり、内にこもったりするのは無理もありません。

幸いライリーの“感情”たちはのびのびと成長し、思春期のピンチを力を合わせて乗り越えます(ネタバレごめん)。大人になった子どもたちにこそ見てほしい作品です。ぜひご覧ください。

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