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みんなのコード×生成AIの実践まとめ。まずは私たちが「やってみた」5つのこと

こんにちは。みんなのコード代表の利根川です。
最近、ChatGPTという単語がニュースに登場しない日はないほど、生成AIをめぐる動きに注目が集まっています。みんなのコードは、生成AIをめぐる議論において、脅威や留意点が過剰に強調されているのではないかとの懸念から、4月に「生成AIの初等中等教育でのガイドライン策定に向けた提言」を発表しました。

さて、生成AIにまつわる提言を発表するからには、「まずは私たちがやってみよう!」ということで、4月中旬から1ヶ月間、みんなのコードでは数々の取り組みを行いました。
noteでもいくつか発信してきましたが、今回は私たちがやってみたことをまとめてご紹介します!


1. まずは私たちが使ってみた

みんなのコードは団体設立以来、まずは自分たちがチャレンジすることを大切にしてきました。
生成AIを全国の学校現場でどのように扱っていくかを考えるにあたり、まずは、私を含むみんなのコードメンバーが生成AIを知ることが必要だと考えました。

そこで、2つのことに取り組んでみました。

①エンジニアによるAI勉強会

CTO安藤が全4回(約5時間)のAI勉強会を実施。社員がAIについて学ぶ機会を設けました。

文章を扱うAIだけでなく、機械学習そのものの科学的な原理から、実践も交えて学び、理解を深めることができました。任意参加の勉強会でしたが、毎回社員の半分くらいが参加していました。

参加したメンバーからは「しくみの大枠を捉えるということが大事」「学校でAIを扱うために必要なことが考えられた」といった感想が寄せられました。

②GPT-4全員やってみよう月間

4月中旬には、社員全員でGPT-4を使ってみるという奨励月間を設定しました。

使用上の留意点などを共有した上で、各々が実務の中で使えるようにしました。GPT-3.5とGPT-4では、回答の正確さに差があります。メンバーには最新のバージョンで出来ることを経験してほしいと考え、GPT-4を使用するためにかかる月額20ドルは、全社員分負担しました。

個々人が工夫して使ってみた結果、業務効率化の実感(お知らせ文書・ビジネスメールの作成、Jamboardの内容を議事録化、プログラミングの学習をする際のダミーデータの作成など)や創造的活動を豊かにする実感(アイデア出し、子どもと物語を作成するなど)を持ってもらうことができたようです。
こうした社内での取り組みの土台があったからこそ、社外に向けた実践に一歩踏み出すことができたと実感しています。

2. 子どもとやってみた

エンジニアが小中学生にAIワークショップを開催して気づいたこと」でご紹介したように、みんなのコードが運営するコンピュータークラブハウス加賀でAIワークショップを実施しました。

  1. 活動そのものが子どもにとって、どのような意味があるかを重視することが重要

  2. 子どもはChatGPTなどについてSNSなどを通じて知る

  3. 大人は、最初からベストプラクティスを求めて最小限の労力で結果を求めようとするが、子どもは試行錯誤することに積極的で、それが理解の速度を早めている

という、子ども目線に立った3つの気づきは、AI×教育を今後考える上でも、重要なものだと実感しました。

3.学校の先生とやってみた

NPO法人タイプティー主催「GIGAGIG 2023」で、未来の学び探究部の竹谷が「はじめてのChatGPT AIを授業作りや校務に取り入れられるか考えよう」と題したワークショップを開催しました。

小学校の教員を中心に30名が参加。ChatGPTのサインアップから丁寧に紹介し、概要説明・自由操作・意見交換・技術的解説という流れで実施しました。
「導入部分を丁寧にやってもらえたのがよかった」「ChatGPTについて学校と社会の乖離が進むという危機感があったが、現場にとって有意義だった」などの声が参加者から寄せられました。
ChatGPTの存在を知っていても、使うための最初の一歩を踏み出せていなかったという先生方に対して、背中を押すことができたと実感しています。

4.中学校の授業でやってみた

「AIは生徒たちの主体性を奪う?:ChatGPTを活用した加賀STEAM学習の取り組み」でご紹介したように、加賀市立橋立中学校で生成AIについての授業を実施しました。

授業前後に行った生徒へのアンケートからも、以下のような興味深い結果が得られました。

  • AIに対するイメージが変化

    • 「生活にいい影響を与える」を選択肢した生徒:4名増加

    • 「使うのは楽しい」を選択した生徒:3名増加

  • 対話型AIを利用して読書感想文などを作成することについて、6割が「条件付きなら良い」と回答

    • 「とてもいいと思う」と回答したのは、授業後もAIが「なんでもできる」「ミスをしない」と回答した生徒のみ

5.保護者にもやってみた

私たちが運営する「テクノロジー × 子どもの居場所」施設では、利用者や保護者から ChatGPT について聞かれたり、AIを不安視する声がここ最近増えています。このことを受け、みんなのコードが運営するてくテックすさきで、市民講座「ChatGPTってなに?」を開催しました。

子どもだけではなく、保護者や一般の方も参加できる形で実施。「行事などでChatGPTを使っていきたいですが、注意点などを踏まえて使っていくことが大切だと思いました」といった感想が寄せられました。

6.知見を共有しよう

こうした実践を積み重ね、先日は、文部科学省の職員向け政策立案教養研修(ドラメク研修)でお話しさせていただく機会をいただきました。教育に限らない幅広い部署から、幹部の方々含め多数ご参加いただきました。
政策立案の参考情報としていただくべく、みんなのコードの取り組み事例をご紹介したほか、生成AIツールについても教育現場における利活用議論の機運を高めていただく機会となったと感じています。
研修については以下をご覧ください。
みんなのコード、代表利根川が文部科学省の職員向け政策立案教養研修(ドラメク研修)にて、「生成AI時代の教育のあり方」について登壇

1ヶ月を終えてと所感と今後に向けて

短期間で様々な実践を実現することができたのは、生成AIのしくみを理解した上でまずはやってみよう!という想いを社員に共有していたからだと思いますし、取り組みを通じて、4月に公表した提言で示した3つの観点*を意識することの重要性を実感することができました。

先日、東京大学が主催したシンポジウム「未来の教育環境を創る:生成系 A I への対応と展望」に参加してきました。その際、登壇者の方がChatGPTについて、次のようにおっしゃっていたのが印象に残っています。

ChatGPTは社会現象。新しい使い方を見つける→SNSで広まる→新しい使い方が見つかる→…のループが続く。後戻りはできない。

文部科学省は、生成AI(ChatGPT)の学校現場での利用に関するガイドラインを夏前に公表すると発表しています。同時に、「暫定的なものとして公表し、機動的に加除修正していくことを想定」しているとも公表しています。つまり、生成AI×教育を巡る議論は、ガイドラインが公表された後も続いていくことが予想されます。
また、AI時代に相応しい情報教育のあり方についても、考えていく必要があります。

このような状況を踏まえ、みんなのコードは引き続き、実践事例について発信するとともに、学校・研究機関・行政など、様々な関係者と議論を深めていきたいと考えています。

お知らせ

みんなのコードの実践はまだまだ続いています!
6月には印西市立原山小学校でも実践を行いました。この授業実践についてはまた別途レポートさせていただきます。

さらに7月13日(木)には、女性を対象にしたオンラインイベント「生成AIの話題にイマイチついていけない人のためのChatGPT体験講座」を開催します!

ランチの時間帯での開催となります。ぜひ、ご参加ください。

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ここまでお読みくださりありがとうございます。

みんなのコードは、「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」をビジョンに掲げています。2015年の団体設立以来、小中高でのプログラミング教育等を中心に、情報教育の発展に向け活動し、多くの方からのご支援をいただきながら取り組んでまいりました。

私たちの活動に共感いただき、何かの形で応援したい、と思ってくださった方は、みんなのコードへの寄付をご検討ください。
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引き続き、21世紀の価値創造の源泉である「情報技術」に関する教育を充実に向けて、これからも取り組んでいきます。

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