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大和田さんのいない「半沢直樹」~原作『銀翼のイカロス』を読んで~

令和に帰ってきたドラマ『半沢直樹』の最終回は、視聴率が32・7%という驚異的な数字を記録し、やはり国民的なドラマだと実感させられました。
私も毎週日曜日が待ち遠しかったです。

しかしその反動で、半沢ロスが激しいです😥

ドラマや映画を観ても、『半沢直樹』ほどのエモーショナルさが感じられず、何か物足りないのです……。
つまらない毎日になってしまいましたが、そうだ!原作を読めば、半沢ロスが癒せるかもしれない、と思いつき、今回のドラマの原作である『銀翼のイカロス』を手に取った次第です。

~~~以下、ネタバレも含みます~~~

感想

読み終えた感想から申し上げますと、ドラマとは本筋が一緒でも異なる部分も多く、それが結果として新鮮に感じられ大変楽しめました
やはり映像作品のノベライズ化といった書籍と違って、小説そのものとして最初から屹立している原作でもありますので、原作は原作としての面白さがあります。

文書のリズム感も素晴らしいです。
これだよ、これ~!と心の中で思いながら、テンポ良く読めるので、かなり心地良かったです。

ドラマで重要な役割を果たした大和田さんは、原作の『銀翼のイカロス』に登場していないと事前情報を得ていたので、もしかすると物足りないかなと考えていたのですが、杞憂に過ぎませんでしたね。

TVドラマと異なる点

やはり大和田さんが出ている、出ていないが一番大きいですね。
ドラマは、好悪を超えた半沢との友情?が縦軸としてありましたが、原作では大和田さんがいないので、そうした軸は作りようがないです。

ですが、逆に蓑部・白井らの政治家や乃原率いるタスクフォースとの対決がシンプルな縦軸として機能しています
ドラマの中でもあった、半沢らの「バンカー魂」は原作の方でも健在ですし。

またドラマと原作では、大和田さんの他にも出たり出なかったり、あるいは役割が違ったりするような登場キャラクターが結構います。

【政府】
▼箕部啓治

ドラマ版だと手練手管を駆使する大ボスとして描かれていましたが、原作版では、そこまでの大ボス感はなかったです。
エゲツないのはドラマ版の方ですね。

▼白井亜希子
ドラマ版の方は、クライマックスで改心し、その後憑き物が落ちたような良い表情を見せますが、原作版では、最後までプライドが高い悪役でした。
ミニ箕部という感じでしたので、白井のキャラクターは、ドラマ版の方が深みがあったように思います。

▼的場一郎
的場首相は、ドラマ版の方は蓑部に転がさられる少し情けない首相でしたが、原作版の方では政治家らしい非情さもあり印象深いです。
登場シーンは少ないのですが、早い段階で蓑部や白井を見切っていたともいえましょう。

【タスクフォース】
▼乃原正太

原作版の方では、半沢の真の敵です。
箕部は乃原の影に隠れているぐらいの存在ですので、乃原がドラマ版の箕部のようなエゲツなさを持って、半沢らに圧力を掛けていきます。

【東京中央銀行】
▼内藤寛

東京中央銀行のキャラクターは、ドラマ版も原作版もあまり変わりありませんが、ドラマ版では出ていない半沢の上司である内藤部長が、原作版では結構出てきます。
とはいえ、それほど目立った活躍はしないので、ドラマ版でもカットされてしまったのも仕方のないことなのかもしれません。

▼福山啓次郎
データ&デジタル人間の福山ですが、原作版では出てきません。
大和田さんも原作では出てこないので、一蓮托生ですね😁

【金融庁】
▼黒崎駿一

原作版はドラマ版と違って、半沢と友情?めいた行動は行いません。
箕部のお金周りを探る動きはしてはいるのですが、半沢と共同戦線を組むことはなく、半沢や東京中央銀行の前に立ちはだかる存在として描かれています。

【東京セントラル証券】
▼森山雅弘

森山は原作版の方には出てこないです。
ドラマ版の方も、少し取ってつけた感じがしたので、立ち位置が難しいキャラクターなんだろうと思います。

【小料理屋】
▼智美

智美も原作版の方には出てこないです。
智美抜きで半沢らは全部解決してしまいます。
半沢の馴染みの店の女将が、実は東京中央銀行で秘書をやっていた……というのは少し都合が良過ぎるきらいもあるので、原作版の方がストレートに物語が組み立てられていますね。

主人公・半沢直樹の魅力

どんな映画やドラマも一緒ですが、主人公は他の登場キャラクターの誰よりも魅力が必要です。
欠点だらけでも良いのです。
しかし、突き抜けた魅力がないと、視聴者の心をグッと掴むのは難しいです。

半沢直樹の場合は、原作の『銀翼のイカロス』にその魅力が書かれてあります。

もし半沢直樹という男が世渡り上手な銀行員であれば、この状況でなお債権放棄を拒絶するなどという結論は決して出しはしないだろう。波風を立てず、長いものには巻かれろのことわざ通り振る舞ったに違いない。
だが、半沢はそうはしなかった。
結論ありきの検討ではなく、白紙から検討を重ね、愚直なほど真っ直ぐに、唯一正しいと信じられる結論を導き出したのだ。


不器用だけど、信念を持って正義を貫く姿は、非常に主人公らしいですね!

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