見出し画像

おすすめの漫画⑦ はねバド!

序盤から中盤以降にかけて絵柄が途中から大きく変わることで有名な作品。
2018年にアニメ化され、原作は2019年に全16巻で完結しました。
アニメのオープニングにはわたしも撮影スタッフとして参加しています

最近までKindle版の第1巻~第3巻まで無料で公開されていたのですが、現在は有料になっているようです。
そのかわり第4巻までのダイジェスト版が無料公開されているので、こちらにざっと目を通した上で、第5巻から読み始めるのがいいかもしれません。(第1巻~第4巻はいわば物語の序章で、盛り上がるのは第5巻以降なので)

作品そのものに関する考察やレビューは既に数多く存在するので、ここでは少し違った視点からこの漫画に対する所見を述べてみたいと思います。
「はねバド!」という作品は内容も熱いのですが、この名作が生み出されるに至った経緯もある意味でそれ以上に熱いといえます。作者の濱田浩輔氏はもともと週刊少年ジャンプで「パジャマな彼女」というラブコメ漫画を連載していたのですが、この時期のジャンプは「ニセコイ」「恋染紅葉」という同ジャンル被りのラブコメ激戦区であり、読者アンケートの結果「パジャマな彼女」は残念ながら打ち切りになってしまいます。「パジャマな彼女」はいまだに根強い人気のある作品で、漫画の内容は「ニセコイ」に見劣りするものではなかったのですが、「ニセコイ」が勝利した要因として同じ作者の前作「ダブルアーツ」の支持層の厚さが明暗を分けたという、これまた作品外のコンテクストが大きく作用した背景があります。(※注意:諸説あり)

まさしく「厨房だけがラーメン屋のすべてではない」を体現する結果となったのですが、濱田氏はそのあと講談社の「good!アフタヌーン」に移籍して「はねバド!」の連載をスタートさせます。そしてラブコメ要素を色濃く残した序盤の作風から徐々に脱却し、松本大洋の「ピンポン」を思わせる劇画調の中盤を経て、後半から終盤にかけて独自の作風を築き上げてゆくのですが、その歩みはまさに登場人物たちの葛藤や成長に呼応しているかのように思えます。モノを作る人間にとって自らの殻を破ることは非常に困難で勇気を必要とする試みなのですが、新しい何かとは構造を疑い破壊することなくしては生まれないものであり、物語は次第に読者の注目を集めてゆきます。

「はねバド!」特集 濱田浩輔インタビュー - コミックナタリー

画像1

思えば「はねバド!」という作品それ自体が、登場人物が白帯の向こう側にいる対戦相手との対話(ラリー)を通して自分の殻を破ってゆくというものであり、それは畢竟すればすべてのアスリートにとって究極的な命題であると言えるのではないかと思います。「はねバド!」という物語に関する言及ではよく「浄化」という言葉が用いられますが、より正確には「自分という存在の殻を解体し再構築する」という表現が適切なのではないでしょうか。
そうした意味で「はねバド!」はその試合描写の荒々しさとは裏腹に、物語の本質は極めて内省的なものであり、ラリーの合間に挟まれる独白や回想が勝負の行方とリンクしながら新しい自己の像を結んでゆく描写は本当に息を飲むくらい繊細で、そして美しいと思います。
劇中の試合では県大会決勝が有名ですが、個人的にはIH全国大会の益子戦をスポーツ漫画史に残るベストバウトに挙げたいと思います(ちなみに好きな試合は志波姫戦、気に入っているキャラクターは横浜翔栄の重盛瑞貴)。
余談ですが、女子バドミントンの潮田玲子選手が中学女子シングルス優勝で初の全国タイトルを獲得したとき、一回戦で対戦したのがわたしの妹です。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ただ、幸せな日が少しでも傍にありますように。
9
人生で何かを成し遂げたいと思ったら、ひたすら射撃しつつ前進することだ。 ージョエル・スポルスキー

こちらでもピックアップされています

おすすめの漫画
おすすめの漫画
  • 8本

おすすめの漫画を紹介します。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。