朝の話

朝の光。カーテンの隙間から漏れ出すそれに、少年は渋々目を開けた。
掛布を剥いで身を起こす。足を向けた方にある備え付けの椅子に誰かが座っていた。それが誰かなど、目を開けなくても気配で分かる。
「おはよう」
仲間の魔法使い。幼馴染でもあるリオノーラだ。朝日に栗色の髪が照らされている。ワンピース一枚というラフな格好で片手に本を読みながら、カップに少量の水を入れて飲んでいた。
ルークが掠れた声で返事をすれば、苦笑が返ってくる。顔を洗うように促されて、朝に弱い少年は仕方なくふらふらとベッドから降りて部屋の出口を目指した。行きがけに出入り口に一番近いベッドを横目で見れば、ひどい寝相で夢の中にいる幼馴染が寝息をたてている。あまりの格好にルークの目は少し覚めた。
コーネリアスは宿屋では少々寝汚い。仲間内で一番早く寝るが、翌朝起きてくるのは一番遅いのだ。朝に弱い訳ではないので、目が覚めたらいつも通りにすぐ動けるところはルークとは真逆だった。

ルークが顔を洗って帰ってくると、突然顔に布が貼りついた。これはなんだと剥ぎ取ってみれば、ベッドの掛布。
「ごめんなさいルーク! ほら、コーンも起きて!」
どうやらリオノーラが勢い良くひっぺがしたようだ。ターゲットのコーネリアスは、見事にベッドから上半身が落ちている。さぞ最悪な目覚めだろう。
「あー……起きてるっつーの。頭いてえ…」
かろうじて引っかかっていた下半身も自主的にベッドから降り、がしがしと頭をかいてコーンは立ち上がった。まだ朝日に目を眇めていたが、しっかり開いているには変わりない。これなら大丈夫だろうとリオノーラは荷物のまとめに戻った。
「朝食は一階で食べられるみたい。支度が終わったら下に降りましょう」
「分かった。…ああ、そうだ」
いつもの服に着替える前に、ルークは何気なく口にした。何度も見た日常のはずなのに、今日はやけに印象に残るような、そんな気がして。
「いつもありがとうな、リオ」
「ありがとなー!」
「なあにもう。どういたしまして!」

(いいわけ)851字。ヤマもオチもない朝のシーンが書きたかった。起き抜けのシーンは地味で好き。

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