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短歌 待合室 十首

1
剥き出しで手渡しされた診断書の乱れた文字がわたしを騙る

2
看板の「人に癒しを」看破する最近視力の下がったまなこ

3
金魚鉢 待合室の人々は加速度を上げ破滅へ向かう

4
癒す人癒される人それぞれの気が済むまでが苦しい個室

5
金魚鉢ぷかり浮かべばさようなら掬い取る手の手遅れのこと

6
わたしから言葉を奪うためだけに被害者面を貫く道化

7
林立のカルテAIより先に神が見つかる土曜日の午後

8
ライオンが火の輪くぐりをしくじって猛獣使いを平らげた跡

9
幻は幻のまま青い鳥逃がすわたしを早く仕留めて

10
もういいよ 誰も探しにこないのにまだ隠れている他人また他人

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