短歌 夜 十首

1
何回も同じCMの流れるリビングの隅に浮く金魚たち

2
夏祭りあやまちさえも彩りを増すか夜空の打ち上げ花火

3
真っ白なシューズをおろした夜なのに月が視界に飛び込んでくる

4
叫んだら許されますか良いことと悪いこととが混ざる地平で

5
黒鍵を強く押すたび罪悪感だけがクレッシェンドする夏の夜

6
今どきは燃やすんじゃなく削除する 笑顔の写真はツータップで

7
ペディキュアが少し剥がれた夜だから思う存分泣いたっていい

8
僕たちはみんな誰かの子どもだと疑わなかったあの夜までは

9
抱きしめてなんて言えないリビングの隅で金魚が浮いているから

10
もうふたり月のかたちを失って傷を夜空に嵌め込んでみる

記事をお読みくださり、ありがとうございます!もしサポートいただけましたら、今後の創作のための取材費や、美味しいコーヒータイムの資金にいたします(*‘ω‘ *)