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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2020年8月の記事一覧

短歌 自由 十首

短歌 自由 十首

1
水槽がひとつ置かれた部屋にある「自由」を喧伝するポスターの青

2
夏末期ああ自由へと発つために屋上の鍵を早くください

3
つけっぱなしのテレビとスマホを消せたら自分の停止ボタンも押せる

4
酷似したくらげは同じラベルを着て自由も知らず出荷されている

5
水槽の隅にあなたが浮いていた 悲しくならないことが悲しい

6
呼吸がつらい きちんと空気読み笑われぬよう努力したのに

7
この世に

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短歌 包帯 十首

短歌 包帯 十首

1
夏が逝く ただそれだけを理由とし左手首の傷がふえてく

2
パスワード管理アプリのパスワードを忘れた 今日のお風呂はぬるい

3
もしきみが湯舟の底に沈んでも地球は回る 思い出として

4
美しいとはたぶんきみのこと/なら/優しいとはあなたのこと

5
痛み止めで治る程度の痛みならずっとそのまま誤魔化し続けろ

6
思い出は作るだけなら意味がない 思い出になるだけならなおさら

7
「後戻りで

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短歌とか日記とかつれづれ

短歌とか日記とかつれづれ


ずぶ濡れになった私をからかってもらうつもりで傘を忘れた


秒針に月明かり降る秋が来る 私も好きにしていいかしら


駅前のおにくやさんのコロッケが今も恋しい東京暮らし


「寂しいね」寂しくないといえなくて「うん寂しいね」心に驟雨


鈴虫が合唱すればきみはまた別の次元で爪切りをする

***

こんばんは、笹塚です。11月22日(日)の文学フリマ東京に向け、現在歌集を制作しています

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短歌 晩夏 十首

短歌 晩夏 十首

1
正座してOasisを聴くひともいる 多様性って大事なんだな

2
ペンたてにネギ立てるのと泣き歌をほんとに泣いて歌うのやめて

3
「ベランダに蝉が突っ込みママが踏みました」絵日記でバレる凶行

4
光からお手紙ついた陰ったら読まずに泣いた 文字が見えない

5
ドライフラワーはミイラと呼ばれない 終わりざますら平等じゃない

6
くらげにも悩みがあると知ってから悩むのをやめようと決めた

7

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短歌 そら 十首

短歌 そら 十首

1
一歩ずつ進んでいけばそれでよい誰もが空に裁かれている

2
足もとに蝉が転がる 雷鳴と明滅するあなたの横顔

3
雨ののちまた雨が降ることを知り炎天下さえ信じていない

4
真っ白なシャツにぽつんとついた赤いろはたぶんあなたの一部と思う

5
いまあなたが飲み干したアイスティー それ本当にアイスティーか

6
一斉に鳴きやむ蝉は私へのあてつけとして憎しみを聴く

7
枯れてなお愛でられる花があ

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短歌 友だち 十首 + 日記

短歌 友だち 十首 + 日記

1
「私たち友だちだよね」確認をする時点で甚だ疑問

2
【友だちは多いほうがいい】学校で一番初めに教わる嘘

3
思春期に負った傷は絶縁体 六弦を弾く指が汗ばむ

4
トレンドやゴシップ記事より夕暮れに吹く陸風を肌で感じろ

5
この夏もお化け屋敷でバイトしてついに十枚皿を数えた

6
知らないの? 流行ってるじゃん やばくない?/私のままでいたいだけです

7
空気読め読んだら次は気を遣え ピ

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短歌 夏祭り 十首

1
待ち合わせ浴衣姿のきみ探し高鳴る僕の鼓動とスマホ

2
ピンク色のひよこの可愛げにかしげる首の脆さは尊さ

3
うす紙に掬われた金魚ぱくぱくと呼吸と復讐を希求している

4
祭ばやしのせいで逃げてくヨーヨーがきみの気持ちだったら泣ける

5
わたがしで半分隠れたきみの顔 まるごと食べてあげたくなるな

6
スターマインをスマホで撮って見せあってそのまま言葉を失いあって

7
帰り道おんなじふり

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短歌 中央線 十首

短歌 中央線 十首

1
操車場にはオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

2
終点に着いたところでこの僕に行き場がないことに変わりはない

3
各駅に止まる人生でよかった あの軒先には風鈴がある

4
蝉の声かき消してゆく列車たち 僕にだけ聞こえるSOS

5
多摩川を越えたらだめと祖母の口ぐせを信じておけばよかった

6
すれ違う瞬間きっと鉄塊は何度となく誰かを連れ去っている

7
都会にはなにがあるのと問

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