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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2018年10月の記事一覧

短歌 秋 十首

短歌 秋 十首

耳たぶに穿たれている穴二つ誤魔化すように石がきらめく

路傍には鍵が落ちてて行き先をなくしたバスを猫が手招く

紅茶とはお湯がなければ枯葉だと憂うあなたのため息のクセ

飛ばされる駅の近くに住んでます あなたはいつも特急列車

これ以上悲しくならないためだけに新しい絵本を買う夜

繋ぐ手も冷え切っていくときだから言い訳をして生きたっていい

焼き秋刀魚 窪んだまなこに箸を刺

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短歌 宝石 十首

短歌 宝石 十首

ターコイズなんだね君の両の目はどうりでひどく傷つきやすい

信号がエメラルド色に灯るとき人々の歩は二拍子になる

どこかにはダイヤのような輝きがこんな僕にもあるのだろうか

アメジストでよかった君の誕生石 二月生まれは財布に優しい

笑い声が聞こえる夜はそばにいて心のそばに寄り添っていて

原石を磨く痛みに耐えられず幸せのまま僕ら朽ちてく

夜空には打ち捨てられたネオンたち 星座になって愛を乞うて

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短歌 布 十首

短歌 布 十首

鈴なりの柿をもぐ手の白い様 冬よ二人に早く来てくれ

読書する君の視線がたどる文字 それすら嫉妬する理由だよ

肺呼吸すら苦しいと頑なな君をこのまま抱いてもいいか

赤ペンを握るその手の体温を奪うことなど考えてない

さっきからずっと一緒のその腕に影がないのは何故か教えて

クリームのトッピングまで我慢したから君をもう許さない

溶けてゆくチョコみたいだね君の声 甘く苦くてクセになりそ

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