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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2017年8月の記事一覧

短歌 決心 十首

短歌 決心 十首

どこにでもある名前をしているから見失わぬよう印をつけた

夏風が秋色を帯び自転車の前輪に絡み愁いを運ぶ

見慣れない景色ばかりで怖いから伸ばした髪を切ってしまった

陰口で手に入れた優越感は秋が等しく裁いてくれる

忘れ物だよこれは君のネックレス 覚悟を纏った証のヒスイ

ワガママはコーヒーに溶け白濁しあたしの喉を落ちていった

わかりあうことは恐らく大事だがそれよりほつれ

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短歌 残暑 十首

短歌 残暑 十首

この日だけ眠れなくても良しとして24時間テレビは観ない

真っ黒は心の中にだけあると星を数えて教えた貴方

調律師の青い手帳には日曜日がないという嘘が好きです

憂鬱や痛い痛いの飛んでゆけ 歌は本当に魔法だった

本当は残暑のせいにしたかった 視力が落ちて恋をしたのも

どこまでも音信不通な人がいて生きていることだけを信じる

懐かしい人と再会した街で予報外れの豪雨が降った

行かないで逝かないで

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短歌 葛藤 十首

短歌 葛藤 十首

僕たちはひとつの命にはなれない 思う存分絶望していい

人格を分裂させてみたけれど現実からは逃れられない

趣味は本を読むこと書くこと破ること 自分探しの旅を笑うな

飛び散ったこころの欠片を集めても決してもとには戻れない

過去の傷は勲章となって主張する お前は何も悪くないよと

傷口に闇を塗り込む作業には孤独が必須とされている夜

君がまだ息をしているそのうちに復讐なんて済ませてしまおう

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短歌 学校 十首

短歌 学校 十首

さかさまに再生される青春だ 過ちもみな織り込みずみだ

歩を合わせ右向け右の論法でぎこちないのは締め出してやれ

ごめんね?と笑いながら言う奴らには暗い未来が相応しくある

虫刺されだよと誤魔化す傷跡に咲くアイの花言葉を知って

空気読み相互監視の檻の中 居心地いいのは本物の馬鹿

成績や内申書なら引き裂いた あたしを測るものさしはない

どうせまだ同じことをしているのだろ

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短歌 中野 十首

短歌 中野 十首

朝を待つ獣みたいに息してる どうか明日は晴れますように

なまぬるい葛藤などもう要らないと理性を捨てた人よ滅びよ

錆びついた心臓を持つライオンは小賢しい人よりも優しい

遠吠えが泣いて聞こえた夜があり今もそれを越えられずにいる

ウナ・カメラ・リーベラで飲む珈琲はサブカルよりも本能寄りだ

抱きしめたはずが抱き締め殺してた 仔犬より甲高い声で

こんなはずじゃなかったんだ

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短歌 こころ 十首

短歌 こころ 十首

完全な球体こそが「こころ」だところころ笑う博士論文

学歴や給料などで縛れない こころは今も昔も自由だ

「大切」がどうか伝わりますように たなごころから溢れたひかり

自分だけの物語を丁寧に編む作業こそこころの使命

こころとは大福なんだ柔らかで甘くて少ししょっぱいでしょう

閉ざされた氷の心を溶かすのは愛をデコった特盛りパルフェ

たとえ君が心を閉ざしても愛鍵ならばここ

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短歌 日曜日 十首

短歌 日曜日 十首

祈りには相応しくない曇天が嘘を隠すのにだけは役立つ

耳たぶに熱持つ朝に君は優しい支配者となるねこじゃらし

黄信号の点滅と心音の重なるほどに怖くなる日

カーナビの指示に逆らい目指す海は輝いて見え正しかったと

凪を待つ横顔に浮く憂鬱が狼だった過去を伝える

勲章や称号はないけれどだからそのままの君が好きだ

思い出になるなんて嫌 下手でいい あの日と同じ唄を聴かせて

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短歌 色彩 十首

短歌 色彩 十首

「みずいろ」には実は色がないと彼を手にかける前に気づくべき

なにが君の毒だろうその紅い唇だろか黒い目だろか

輝きは色彩のない宇宙にて惰性で撮った集合写真

灰色の街を歩く人たちへ贈る言葉もコピペされてる

風見鶏 みどりの風を乱しては西日にとける天使を想う

嘘つきは被害者ヅラして現れる 物憂げな神の死角は緋色

祈りとは何色ですか 色づけばイロになり枯れてしまうでしょう

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短歌 女性 十首

短歌 女性 十首

アキアカネを捕まえてはいけない あれは少女の真夏の残滓

ふうわりと空を飛べたらゾッとする 貴方に向かって落下するから

緑色が好きだったあの子すら女になった 見る影もなく

伸びた爪ネイルした爪噛んだ爪 すべて貴方を引っ掻くために

美談ならもう欲しくない 薔薇弁が敷き詰められてるみたいで怖い

わかってる間違っていると それなのに「おかえりなさい」と母は微笑む

卵から

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短歌 晩夏 十首

短歌 晩夏 十首

幸運を祈ると彼は言い残しお化け屋敷でほんとに消えた

さよならは数えるほどに虚しさとうず高くなる送り火よ

寒冷の夏にあっても蝉たちが果たす約束としてミンミン

過去の傷まるごと煮込んでしまいたい 新たな季節をスパイスにして

折りたたみ傘がまるっと逃げ出して途方にくれる夕立の猫

単純なことだよ人は暑いか程よいかキモチワルイかイイか

「正義」って辞書を引くのはやめなさい

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短歌 食卓 十首

短歌 食卓 十首

その昔勇者と呼ばれていたらしく父は片手で卵を割れる

味噌汁に豆腐を入れるのが珍しいなんて異文化交流だ

一定のリズムでネギを刻んでる 外は曇天 泣き出しそうな

不機嫌な果実を買って帰ったら三割引のシールが取れてた

タコ焼きをひっくり返す手さばきに惚れてしまった あたし、アホだね

「愛してる」あーうん、私も。それよりも、早くしないと肉が焦げるよ

完璧な母のレシピに一

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短歌 習作09 十首(晩夏)

短歌 習作09 十首(晩夏)

メルヘンがメンヘルに似てお盆には専門家らが論文を書く

おとぎ話には犠牲が要ると説く人には何が足りないんだろう

唯一をいくつも足して生きている 図々しいとお思いでしょう

太陽は悪ですか悪ですよ 何かのせいにしなけりゃ呼吸できない

ひかりなどもういらないとさけんでもおなじかおしてえむちちとはは

忘れ物集積場に集まった傘が織りなす秋雨前線

御先祖もこんな思いをしたのか

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短歌 習作08 十首(カタカナ)

短歌 習作08 十首(カタカナ)

オレゴンをポケモンの名と思ってた20年目の秋を迎える

スーパーの棚に並んだ鶏、豚、牛 どうか私を睨まないで

世界的スターに濁点を与える ミッギーマウズ なんか悪そう

人形と同じ名前の医者がいてそれでもリカは前を向くのよ

ドット絵と8ビットの音楽で賞嘆できる世界もあった

傘を閉じ初めて見えるものもある 三割引のクーポン券とか

ウルトラの母がテールをほどいたらみんな

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短歌 習作07 十首

短歌 習作07 十首

ハロワの求人に載る「坊主募集」に胸を痛めて盆が過ぎてく

まっしろな素肌に触れてみたかった 裂くつもりなどなかったのです

若さだけで走った日々を後悔しすっぴんで乗る京王線

何億年以上前から僕たちは同じ動きをしているだろう

怖いほどみなポジティブで僕はもう疲れてしまったんだ。笑って

下道を走る私を追い抜かしてく平成のハマナンバーに bye

ふわふわとアキアカネ舞う国

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