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【質問】落ち込む家族をどう支える? #2 セラピストの視点から

前回の「【質問】落ち込む家族をどう支える? #1 セラピストからの視点から」では、支える家族の気持ちについてお話ししました。今日は「伝え方」編として、今後のサポートについて苦しむ本人への切り出し方のヒントをお伝えしていこうと思います。

ご相談について、もう一度掲載しますね。

夫は前の会社をやめてから、もう1年以上、家にいます。私はうつを疑っていますが、病院には行っていません。

昼夜逆転のような生活をしているので、朝はおこして体内時計のスイッチが入るよう野菜ジュースを差し入れ、夜は時々着替えや歯ブラシを渡して入浴や歯磨きを勧めています。が、私は仕事に出かけてしまうので朝ジュースを飲んでるのかもわかりません。入浴やは歯磨きは勧めればやるのですが、勧めないとやらない状況です。

こうしたサポートを続けていってもいいのでしょうか?


前回もお伝えしましたが、サポートを続けるかどうかはまずご本人の希望を確認すること、そしてその前にご自分がどんな気持ちでサポートをしているのか、もう一度見つめ直すことが大切になります。


家族の不調、って、やっぱりつらいですよね。本人もつらいし、まわりもつらい。
だからこそ自分の気持ちを丁寧にみてあげることが、優しいコミュニケーションにつながるかと思います。


1. 相手に尋ねる前に、自分のこころの現状把握を

さて、相手に尋ねる前に、まずは自分の気持ちを自分に尋ねることからはじめてみましょう。

まず、これから自分はどうしたいか、相手に一番伝えたいことは何かを導きだしましょう。そのために「自分のこころの現状把握」からスタートです。

できれば書き出してみることをオススメします。書くことで意外と気づいていないことに気付けたり、落ち着きを取り戻すこともあります。

【自分のこころの現状把握】
1) どうしてサポートしていたのか?

2)どうして確認したくなったのか?
3)自分のなかに、相手(夫)をコントロールしたい感覚があるか。

--🍀ここで、一旦読み返して書き残したことがあるか確認してみよう🍀--

4)
(ここまでを振り返って)これからは、自分はどうしたいか。相手に一番伝えたいことはなにか?


4)のこれから自分はどうしたいか、相手に一番伝えたいことは何かを書き出す前に、一旦立ち止まって1)〜3)を読み直してみましょう。ここで書き残していたことがあれば、付け足します。
「頭で考えだす」のではなく、「こころ(ハート)」を感じるようにして湧き上がってきたものを大切に

これが決まると、相手への伝え方がグッとぶれなくなります。


2. 「どうしたい(?)」  + 「理由」 + 「提案」を基本に 

自分の気持ち確認を振り返ることができましたか?
では、気持ちを整理しながら、伝える工夫をしていきましょう。

尋ねたいことは「サポートを続けていいかどうか」でしたね。
では、尋ね方の基本のかたちをご紹介しましょう。

1. <希望>相手の希望を尋ねる または 自分の希望を伝える
(あなたはどうしたい?/わたしは〜したい)
+
2. <理由>
(余裕があれば)
+
3. <
提案>(余裕があれば)


「希望」+「理由」は、誤解なくあなたの気持ちを伝えるのにとてもわかりやすいフォーマット。
そして「提案」は、相手の気持ちを受け止める用意があるよ、と伝えることができます。

この組み合わせを作るのに、先ほどの「自分のこころの現状把握」を使います。

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それでは【こころの現状把握】の例とともに、伝え方をご紹介しましょう。

【こころの現状把握】からわかったこと。

1 ) どうしてサポートしていたのか?
①朝のジュース:昼夜逆転が不健康で心配だった。起床してジュースを飲むことで、健康的になればいいなと思った。
②入浴や歯磨きの支度=一時期入浴や歯磨きをしていない様子で気になっていた。身体を清潔にすることで、気持ちもさっぱりするかと思った。
2 ) どうして確認したくなったのか?
①ジュースも、入浴や歯磨きの支度も快く思っているのか、嫌がっているのかがよくわからない。嫌がっていることを続けてストレスを与えたくない。
②サポートすることで、自立/回復のチャンスを失っているのかもしれないことを恐れている。
3)自分のなかに、相手(夫)をコントロールしたい感覚があるか。
ある。サポート続けようかどうしよう...と思っていた時には気づいていなかった。夫が回復してくれれば、私も楽になるのに、と思っていた。
朝のジュースづくりは、意外と自分にとっても負担になっていた。
4) これから自分はどうしたいか?/何を相手に伝えたいのか
①朝のジュースは、作るのが大変なので夫が欲しくないのであればやめる。
②入浴や歯磨きの支援は、夫ひとりではやりたがらないことなので、サポートを続けながら様子をみたい。が、無理強いしているわけではないことは伝えたい。


自分の気持ちがしっかり見えてきましたね。
さあ、これを「希望」+「理由」+「提案」と整理して組み合わせていきましょう。

--- 🍀 ---

【朝のジュース】

●一番伝えたいこと/私が望んでること=夫が欲しくないのであればやめる

「朝のジュース、続けたい?(相手の希望の確認
飲んでるかどうかわからなくて、続けようか迷っていたの(確認の理由)。
昼夜逆転の生活が心配で、目覚めにいいと思って差し入れていたけど(サポートの理由)、
もしいらないんだったら無理強いはしないので断ってね(提案/一番伝えたいこと)」

このメッセージの一番伝えたいことは、「欲しくないんだったら、続けないよ」ですね。それを、「希望確認」+「理由」+「提案/一番伝えたいこと)」の3段重ねにしています。

「朝の目覚めにいいと思って差し入れていたけど」とサポートをしてきた理由を「提案/一番伝えたいこと」の手前に織り込んでありますが、これはあってもなくてもどちらでもいいかもしれません。自分の気持ちを正直に相手に伝えたい、という思いがあれば付け加えてもいいでしょう。


【お風呂と歯磨きの準備】

●自分の望んでいること=もう少し続けて様子をみたい。夫が身体をきれいにして、気持ちもさっぱりするといいだろうな、と思う
●相手に伝えたいこと=。無理強いしているわけではない。

「お風呂と歯磨きの準備、ここにおいておくね(自分の気持ち)。
さっぱりすると思うよ。(サポートの理由)
これからも、時々準備はしておくけれど
気が進まなかったら、そのままにしておいといて。(提案)」

伝えたいことが「サポートを続けたい」+「相手をコントロールするつもりはない」と明確になったので、「自分の気持ち」と「提案」をシンプルに伝えれば十分です。

コントロールするつもりがない、ということを自覚できたら、自ずからあなたのメッセージからはコントロール力は消えます。率直で「同じ高さの目線」のことばになるでしょう。

ここに挙げたのはあくまでも例です。ご自分の気持ちを十分に振り返って、ご自分らしい言葉で伝えてくださいね。気持ちがしっかり定まれば、自然とことばは湧いてきますよ。


3. ポイントまとめ

というわけで、今日のまとめです。

1. 最初に「こころの現状把握」をしよう。
特に「これから、自分はどうしたいか。相手に一番伝えたいことは何か」をゆっくりと書き出そう。
「頭で考えだす」のではなく、「こころ(ハート)」を感じるようにして湧き上がってきたものを大切に
2. 尋ね方の基本は 希望+理由+提案
「こころの現状把握」をしたら、そこでわかったことを
「希望」+「理由」+「提案」の形で組み合わせてみよう。

基本はこの形だけれど、上手に文章を作ろうとすることにとらわれないでOK。
3. 相手にオープンに、同じ目線の高さで向き合おうー「伴走者」として
相手に対してオープンに向き合う準備があること、相手をコントロールするつもりはないこと、同じ目線の高さで向き合うことを忘れないこと。
この「伴走者」としての気持ちがちゃんとあれば、文章がヘンテコでも多少なんとかなります。


さて、実はここで挙げた「理由の伝え方」には、もう1つポイントがあります。ほんのちょっとの工夫ですが相手の心をゆるめ、「伴走者」としてのあなたの気持ちをより伝えやすくする「理由の伝え方」のコツです。

次回は「伴走者としての気持ちを伝える、理由の伝え方」、そのあと「相手の受け止め方」についても書いていこうと思います!お待ちくださいね。

●今日の一言

相手との向き合い方に迷ったら、まず自分のこころの現状把握を。
迷いの理由、伝えたいことが見えてくる。


今日も読んでくださってありがとうございます。
自分にやさしくお過ごしください。

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