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梅じゃないよ、桜だよ

同じものを見ても、感じ方は人それぞれだ。

早咲きの河津桜。
何本か並んでいる中で、
この一本だけが咲いていた。

通りがかりの女子高校生が
「すっげー、この木だけ咲いてるじゃん」
「梅かなあ。桜かなあ」
と花を見上げながら
木の下を元気よく歩いて行こうとしていった。

道の反対側に立ち止まって
同じようにこの桜を二人並んで眺めていた老夫婦。
ご主人のほうが苦笑いしながら、
「桜だよ」と声をかけた。

女子高校生たち
「えー、まじー?!」
「すっげー」
 
そのまま
足を止めずに歩いて行った。

教えてもらったことに
お礼もいわず
そのまま笑いながら
大股で。

梅だろうと、桜だろうと
あのコたちの「今」にはどうだっていいのだ。

もう桜咲いている!
スッゲー!
以上っつ!

木の下を通り過ぎてしまえば
桜はもう「むかし」のこと。

後ろを全くむいていない。

生命のエネルギーの弾む感じ。
テニスボールのよう。
元気いっぱいで清々しいほど。

あのコたちの声が
今でも耳に残っていて、
なんだかまだ嬉しい。

振り返りもせず飛び跳ねるように
前へと歩いて行く女子高校生。
たたずんでずっと桜を眺める老夫婦。
わたし。

それぞれに、早咲きの河津桜とともに。



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