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身体からこころへ~BCTの感想|ココカリ心理学コラム

先日はじめてBCT(Body Connect Therapy)を実践した。練習を重ねた甲斐あって、手続き通りに進めることができた。効果の目安であるSUD(Subjective Unit of Distress:不安や不快感の程度)も概ね想定内に低下した。さて、日常生活に戻った後にどうなるか、点から面への波及効果は生じるのか、後日カウンセリングで予後をお聞きする。

人はこころに直接触れることはできない。だから、身体から働きかける。こころと身体は繋がっている。過去に起きた出来事は変えられない。しかし、その過去に結びついている感情や気分は、今現在のそれと結び直すことはできる。トラウマに対して変化が起きてくる。これがBCTである。

研修会で抱いたBCTの印象は、これは様々な理論や心理技法を骨の髄まで取り込み、トラウマ支援に役立ちそうなエッセンス以外を削ぎ落とし、残ったもの同士の相性を考えて再構築された心理療法なんだ、というものだった。講師であり提唱者である藤本先生に感銘を受けた。トラウマを発端としたクライエントの苦悩をいかに軽減または寛解へ持っていけるか、何が必要で何が有効なのだろうか、それだけを純度100%に探求されている。

質疑応答の時間に「BCTに禁忌はありますか?自律訓練法のエッセンスが入っているので、統合失調症を患う方には避けた方がいいのではと思ったものですから」と質問された受講者がいた。私も統合失調症との相性はよくないだろうと思っていた。先生の回答は「禁忌とはいいません。実際に統合失調症を患う方の臨床で使って効果を見出したケースもあります。ケースバイケースです。見立てが重要です」であった。例えば陽性反応が有意に働いている場面では当然使えない。妄想が増幅するだろう。陰性期に入り、耐性の窓枠が安定した状態で、トラウマをターゲットに行うことは、決して禁忌ではないだろう。見立てが重要だ。

行動療法に浅い私でも使える、トラウマに対するCBT以外の武器を手に入れた。心理療法は武器である。武器は使う人の力量に応じて効果を発揮する。使い手自身がレベルを上げていかねば、どんなにいい武器でも宝の持ち腐れになる。技術を磨いていく、自分自身を鍛えていく。熟練に比例して効果は高まるはずだ。


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