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森田療法から回復への手順を考える、主に臥褥期について|ココカリ心理学コラム

「臥褥期」この漢字、読めますか?ちなみに私は読めませんでしたよ。「がじょくき」と読みます。森田療法のテキストで始めて知った言葉です。

森田療法は、不安や葛藤をあるがままに受け入れる心理療法です。不安症やうつ病などが対象となります。詳細は慈恵医大さんのHPにお任せしたいと思います。近年では「外来」森田療法が主流ですが、元々は「入院」治療として用いられていました。森田療法における入院治療の流れの図式は以下の通りです。

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入院して最初に行うのが「臥褥」です。臥褥を辞書で引くと、病気で床に伏すこと、と記されています。ひとり部屋で、トイレ・洗面・食事以外は、絶対臥褥を維持します。ここでの目的は、心身の安静と不安との直面です。

不安症やうつ病の治療でまず行うべきは、身体の休息です。十分な休息が得られると、徐々に徐々にエネルギーが貯まってきます。このエネルギーを精神面における不安との戦いに使います。体力が枯渇している状態で、エネルギー消費の激しい精神活動をやるべきではありません。順番があるのです。

不安をなくそうとするのではなく、不安を不安として自分のそばに置き続けるという扱い方が醸成されると、やがて活動意欲がでてくると森田はいいます。「やるべき」「やらねばならぬ」ではなく、「やりたい」が出てきたら、それは回復の兆しです。「〜べき」と「〜したい」のニュアンスは、水と油くらい違います。こころの内側から湧き出てくる意欲は、健全な状態で初めてお目見えするものです。

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クリニックでうつ病と向き合う患者さんのカウンセリングを担当しているのですが、ある方はこの森田療法の考え方がすごく腑に落ちるとおっしゃいます。逆に、ピンとこないとおっしゃる方もいます。人それぞれに価値観や考え方、性格があり、スッと入る手法や理論は違います。心理療法が数多ある所以です。

私は心理士としての自分の専門性を鋭く磨きながらも、いくつかの心理療法をある程度の水準で使える幅も広げていきたいと考えています。