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オーガニックコットンは減り続ける!?

コストが合わないと誰も買わないという身も蓋もない話をします。

そもそもコットン(綿花)の年間総生産量はどれくらいかというと2018年で2600万tくらいです。ソースはこちら。 日本化学繊維協会の資料です。

かたやオーガニックコットンはというと、ちょっと古いデータですが2016年で、11万t くらいです。ソースはICAC (国際綿花指紋委員会)元専務理事のテリー・タウンセンド氏が寄稿した論文「オーガニックコットンの生産動向と今後の見通し」です。以降そのあたりの生産量で現在まで推移しています。下記pdfです。

11万t/2600万t=0.004 つまりオーガニックコットンは全体の0.4%なんです。これ倍増したところで、環境に対するインパクトなんて誤差ですね。環境派の人たち怒らないでね。

上述のタウンセンド氏の論文にはもう一つ、決定的に重要な指摘があります。生産コストのことです。オーガニックコットンを作るにはざっくり20%お高くなってしまうということなんです。お金のある環境派(例:デカプリオさん)は買えるかもしれませんが、一般庶民は割高のオーガニックコットンは買わない。

さらにもう一つ重要な指摘があるのです。20%コストアップなのに10%アップ程度で買い叩かれているという現実。

弱い立場の弱小農家に環境意識高い系の人たちが言います。

 「地球にやさしいオーガニックコットンを作って環境に貢献しましょう!」

で、綿花バイヤーがいいます。

 「オーガニックコットン素晴らしい。でももう少し安かったら買うんだけど」

はい、ここで農家の利益は無視しされ、買い叩かれます。本来はコスト分上乗せして買ってその上で、紡績、織工場、染色工場、縫製工場、アパレルが少しずつ利益を削って地球環境に貢献するという高尚なビジョンを実現するか、アパレルがコスト分丸々乗せて高く売るかのどちらかですが、もしそれがうまくいっているなら上述の0.4%のオーガニック比率はもっと飛躍的に高くなるはずですね。今風に言えば、農家がインセンティブが全くないオーガニックなんかやるはずないんです。

ファストファッション全盛で安くていいコットン製品が世に溢れている現状で、オーガニックコットンの居場所は少なくなっています。

もう一つ触れなくてはいけない現実があります。それは遺伝子組み換えコットンのシェアの急拡大です。遺伝子組み換えコットンは農薬を使う必要が極端に少なくて済みます。つまり土壌汚染がほぼないのです。オーガニックコットンと同様に。

アメリカの大規模農場のほとんどは今や遺伝子組み換えコットンです。そのことを前面には押し出さず、「サスティナブル」という魔法の言葉をコットンUSA は使っています。これ嘘じゃないんです。環境にやさしく、農家の人も安心して良質のコットンを大量生産できるから。また、使用している水の3分の2を雨水で賄っている。う〜ん地球にやさしい。

超能力に近い超敏感肌の人でない限り、通常のコットンに残留している極微量の農薬を感知することは不可能だと思います。遺伝子組換えコットンに至ってはほとんど農薬も使わないのだからなおさら。そもそも生地の染色と洗浄の時点で農薬はほぼ残っていませんし、仮に微かな農薬が残っていたとしても日々のお洗濯できれいさっぱり落とされます。むしろ合成洗剤の残留の方がよほど肌に悪いくらい。

農薬をたくさん使う通常のコットン 栽培が良くないのは、土壌汚染だけではなくそこで働く子供(違法の疑いが強い)が農薬にまみれて小児癌になってしまうことです。インドでは特に散見されることです。対して遺伝子組み換えコットンなら生産コストが抑えられるので、バイヤーに買い叩かれることもなく、癌にもならずにすむ。地球にも優しくサスティナブル。そりゃ急速に使用が広まっているわけです。

消費者にしても、農薬を使った通常コットン、オーガニックコットン、遺伝子組み換えコットンで作った同規格の服を着用して、利きコットンをしてそれらがどれか当てられる人はいないと思います。つまり品質に差がない。こうなると、

 ・オーガニックコットンは宗教
 ・遺伝子組換えコットンは背徳
 ・農薬使いコットンは悪魔

みたいな位置づけになりはしないか?と思ったりします。農家にしたら背徳かもしれないけれどいわば三方良しの遺伝子組み換えコットンを排除するインセンティブはないでしょう。

いいや、オーガニックでなくちゃダメだ!というお金持ち、篤志家はお金を出してオーガニック農場を買いとって経営すべきなんです。そしてフェアトレードで従業員にしっかり賃金をはらい、消費者を啓蒙して価格アップを理解させる。

現状は「地球にやさしい」にかかるコストを農家に押し付けて気持ち良くなってる人が多い。こんな中、かなりの問題意識を持って真剣に取り組んでいるデザイナーとしてステラマッカートニーさんがいます。

ここまでやって、ブランドビジネスをされているステラマッカートニーさんは素敵です。

最後に、VOGUEのオーガニックコットンの記述をご紹介します。参考にはなるのですが、私が主張している大きなトレンドになっている遺伝子組み換えコットンに全く触れていないので、その分現実を見誤る可能性があるので注意が必要です。オーガニックコットンの問題点はしっかり記述されています。

https://www.vogue.co.jp/fashion/article/2019-10-23-how-sustainable-is-organic-cotton-cnihub

続編があります↓
原理主義か世俗主義か〜オーガニックコットンの認証について


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