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商品企画に役立つ繊維基礎講座

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国内の繊維産業の衰退は著しく、多くの繊維製品を扱う会社が海外生産を請け負う商社に素材選定から企画まで丸投げしています。結果、以前のようにモノ作りの現場を知っている商品企画や生産管… もっと読む
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#天然繊維

第1章 繊維原料編

衣料品に使用されている主な繊維原料を順番に解説していきます。 ちょっと古い資料ですが、これらの繊維のシェアがわかる円グラフを載せておきます。ポリエステル が圧倒的に多いこと、天然繊維では麺が多いことがわかります。この状態は2019年の今も同様です。 1.天然繊維  1-1.植物繊維    ・コットン    ・麻(リネン、ラミー、ジュート、ヘンプなど)  1-2動物繊維    ・ウール    ・カシミヤ    ・シルク 2. 再生繊維  2-1 レーヨン 主にパルプが原料  

第1章繊維原料編 1.天然繊維〜1-2動物繊維 獣毛1

獣毛とカテゴライズされる動物の毛の代表はもちろん、ウール(羊毛)でその他カシミヤ、アルパカ、ビキューナ、モヘア、アンゴラ、ラクダなどがある。ウールは上記の他の獣毛と混紡(混ぜて糸にする)されることも多い。以下、ウールとカシミヤについて解説を加えます。 ウール 羊の種類は約3000種。その中で主に衣料品に使用されているのはメリノ種。メリノウールと呼ばれている。最大の原産国はオーストラリア。 ウールの糸には梳毛糸と紡毛糸がある。梳毛糸は均質度高める工程を通った糸で、紡毛糸は均質

第1章繊維原料編 1.天然繊維〜1-2動物繊維 獣毛2

カシミヤ カシミヤ山羊からとるソフトで柔らかい繊維。冬の高級肌着からセーター、スーツ、コートなどに使われる。高価であること、耐久性に欠けること、毛玉になりやすいこと等から、ウールを混用することが多い。また、シルクやコットンと混用することもある。 カシミヤ山羊の表面に現れる毛は固く剛毛。この毛が混ざってしまうとチクチクしてしまう。この毛は通常、さし毛と称し、ジャケットの芯地等の原料となる。 中国製でよく問題になるのが、カシミヤ混素材で表示と実際の混率が異なるケース。染色で染め分

第1章繊維原料編 1.天然繊維〜1-2動物繊維 絹と蜘蛛の糸

獣毛と違い、絹(シルク)や蜘蛛の糸は体内から糸を吹き出すメカニズムなので別の分類になります。蜘蛛の糸は昨今話題になっていますが、現在流通し始めている糸(QMONOS)は蜘蛛の糸の成分を人工合成して作られたもであり、シルクの様に蚕が吹き出した繊維をそのまま引き揃えて束ねて作った糸とは違います。衣料品ではほぼ100%シルクが使用されていますので、ここではシルクの簡単な説明をいたします。 シルク シルク繊維の断面写真 シルク繊維はセリシンとフィブロインで出来ていて、この状態で

第2章 紡績糸(スパン糸)、フィラメント糸編

この章では繊維を糸にする方法についてご紹介します。化学繊維、天然繊維からどの様に糸を作るかが分かります。 記事が出来たら、該当する見出しにリンクを張ります。 1.糸にはスパン糸 とフィラメント糸の2種類がある 2. スパン糸とフィラメント糸の製造方法+蚕の技  2-1紡績~短繊維をつむいで糸にすること    ・綿紡績    ・ウール紡績    ・麻紡績    ・オープンエンド紡績  2-2紡糸~化学繊維は製造段階では全てフィラメント    2-3蚕の技、口からフィラメント

第2章 2-1紡績~短繊維をつむいで糸にすること3

麻紡績(亜麻紡績~flax spinning)  リネン(亜麻)の紡績の最大の特徴は潤紡法といって、精紡機に通る前の粗糸と称される太い糸状の束の段階でお湯にとおして湿らせる工程があること。リネンはペクチンという膠状の物質が繊維に含まれていて、お湯でペクチンが溶け出し繊維同士をくっつけます。その状態でフライヤー精紡機で糸になります。結果、毛羽が伏せられ独特のハリとコシや光沢、ひんやりとした風合いが生まれます。  ペクチンは洗濯をすることでどんどん溶け出すので、くっついた繊維同士