
自分の「好き」に向き合い続けるには?【とよなか地域創生塾第8期 DAY6(Aコース)】
豊中市を舞台に「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる連続講座(ゼミナール)である、とよなか地域創生塾。今回は12月9日(月)に開催された「とよなか地域創生塾 DAY6(Aコース)」の様子をご紹介します。
DAY5にて、ついにプロジェクトチームが結成され、さまざまな活動が動き出しました。2024年12月現在、それぞれのチーム内で打ち合わせを重ねながら、今後の進め方を検討している段階のようです。
プロジェクト始動から約1ヶ月。今回DAY6では「A:『わたし』からはじめるまちづくりコース(以下、まちづくりコース)」と「B:目の前の人からはじめる課題解決コース(以下、課題解決コース)」の、2つのコースに分かれてのインプットを行います。
ここでは、自分の「好き」から活動をはじめてみたい人々が集まる「まちづくりコース」の内容をお届けします!
文:四反田百花(したんだ・ももか)
今年の満足度は何点?2024年の活動を振り返る
DAY6「まちづくりコース」の会場は、阪急宝塚線・蛍池駅前にあるラーメン屋「みつか坊主」さんです。

今回も「まちづくりコース」の塾生だけでなく、講座内容に興味を持った「課題解決コース」の塾生も何人か参加されています。平日夜の開催ということもあり、仕事・バイト・学校終わりに参加されている方が多いよう。みなさんおつかれさまです!

それではさっそく、オープニングです。
日直係の和田弘子(わだ・ひろこ)さんによる、アイスブレイクからスタート!

今回のアイスブレイクのテーマは「今年の満足度は何点?」です。年内ラストのとよなか地域創生塾。2024年はどんな1年だったのか、塾生同士で振り返ってみました。
「自分の将来が見えてきた年だったが、やりきれないこともあった」と話す塾生は、85点。
「去年は出来なかったことに、今年は積極的に取り組めた。でも行動しすぎて、自分のやりたいことが分からなくなってしまった」と話す塾生は、75点。
他人から見ると、まるで100点のような充実した1年を送られていた塾生もたくさんいましたが、満点をつけている方はあまりおられないのが意外でした。来年への伸びしろを残しているのでしょうか。塾生のみなさんの今後のご活躍が楽しみです!
「お前が怒って、電車は来るのか?」~自分ではどうしようもないことに、どう立ち向かうのか~
続いては、ゲストトークに移ります!
まずお話してくださるのは、「みつか坊主」店主の斉藤三典(さいとう・みつのり)さんです。

大阪府豊中市出身。蛍池駅前のラーメン屋「みつか坊主」・学生街限定のローカルWebサービス「ガクセイガイ」発起人。購入から調理まで完全セルフの24時間営業のうどん店「惑星のウドンド」管理人。「地域と人を醸す」ことをテーマに、分け隔てない食の場をローカルの地から発信している。
現在は、地元・蛍池でラーメン屋を営んでいる斉藤さん。しかし元々は、蛍池という地域をあまり好きではなく、またラーメン屋をしようとも全く思っていなかったのだそうです。
若いころはスノーボードに励んだり、外国に行ったり、北海道に移住したりと、多くの場所に出向いて、さまざまな経験を積んできたという斉藤さん。
その後帰阪し「どうせ住むんだったら、楽しい町にしたい!」と一念発起。近くにある大阪大学の学生をはじめとして、たくさんの若者と関われるような場をつくろうと、未経験ながらラーメン屋を開業しました。

2007年、地元・蛍池に「みつか坊主」を開業したものの、当初は1日に2名しか来店しないこともあったのだそう。毎日の睡眠時間は約2時間で、ゆとりのない生活を続けていたことから友人と離別してしまうなど、苦労の日々が続いていたといいます。斉藤さんは、当時のことを振り返ってこうおっしゃいました。
「どちらかといえばポジティブな性格なんですけど、人生で初めて挫折を味わいました。とにかく人のせいにしたくなったり、場所のせいにしたくなったりしましたね。なぜこの事業に取り組んでるのか、分からなくなることもありました」
目の前に立ちはだかった壁を乗り越えるために、斉藤さんが心がけたのは、小さな目標を少しずつ達成すること。
「ゴールを1つ1つ設定していくようにしました。それからは、支えてくれた人・叱ってくれた人に感謝できるようになって、以前のように笑えるようにもなりました」
開業から2年後の2009年には、なんと「関西ラーメン大賞」を受賞。2時間待ちの大人気店となり、その後梅田エリアに新店舗を展開することにもなりました。
しかし2014年。なんと「みつか坊主」の本店が、火事で全焼。仕事ができる人(=自分の店で稼いで生活できる人)からクビにしていかなければならなかった、という悲惨な状況の中、地域住民・同業者・仲間に支えられて、なんとか仮店舗から営業を再開し、今の形になっていったのだといいます。
いくつもの困難を乗り越えながら、現在も地元で活動している斉藤さんは、最後にこうおっしゃいました。
「旅先の東南アジアにて、なかなか駅に電車が来ないことがありました。僕は駅員に何度も何度も、電車がいつ来るのか尋ねるわけです。そのときに駅員から言われた『お前が怒って、電車は来るのか?』という言葉。この言葉で、僕の人生は変わったと思います」
「もし自分の力で状況を変えられないのであれば、その時間をイライラしながら過ごすより、楽しむほうがいい。深く考えても分からないことや、怒っても意味のないことはやめるようになりました」

活動を進めていく中で、どうしても自分の思い通りにならないことや、うまくいかないことが出てくることもあります。それらの状況に負の感情ばかりを抱くのをやめて、ちょっとプラスに捉えてみる。さまざまなプロジェクトに現在進行形で関わっている塾生のみなさんにとっても、深く考えさせられる言葉なのではないでしょうか。
「夢を否定されて、諦めたことがある」~好き・やってみたいという自分の気持ちに向き合う~
続いてのゲストは、親子で楽しめる国内最大級の音楽フェス「ROCKS FORCHILE」の主催者、伊吹美里(いぶき・みさと)さんです!

株式会社RFC 代表取締役。豊中女性経営者・起業家・まちと人のおもろい明日をつくるコトづくりプロデューサー。ひらパー最大級音楽フェス「ROCKS FORCHILE」主催。フリーランスのためのコワーキング「THE HuB」・まちを楽しむ人のためのイベントBAR「THE HuB ー酒と学びと繋がりとー」運営。みんなが住んでいるまち・働いているまちに、ワクワクする「コト」をつくり、ワクワクが人を通して伝染する社会を創る「まちコトづくりプロデューサー」として活動している。
以前は、IT企業や化粧品メーカーで働いていたという伊吹さん。お金を稼ぐために、寝る間を惜しんで必死に仕事に向き合っていました。その甲斐もあって、みるみるうちに営業成績は上がっていったそうですが、その一方で「自分は何のために働いているのだろうか」と考えるようにもなったといいます。
そんなもやもやを抱えていた伊吹さんは、元上司の誘いで「未来の子どもたちのために、持続可能な社会をつくる」という理念を掲げる会社へと転職。そこで、子どもたちの未来のための持続可能な社会づくりプロジェクトとして、音楽フェス「ROCKS FORCHILE(以下ロッチル)」を開催することになりました。
ロッチルでは、廃材を使って楽器を作ったり、一流のアーティストと一緒にステージに立ったりと、子どもたちにとって一生の思い出に残るような経験を提供しています。
「ロッチルは、夢を持つ全ての人が対象の音楽フェスです。そして子どもたちが、夢を叶えた大人に会える場所でもありたいんです。自分のやりたいことをしているから、2時間睡眠でもやっていけていました(笑)」
会社の経営難による独立や、新型コロナウイルスの流行による外出自粛などもありましたが、なんとそれでもロッチルの来場者は増え続けたといいます。
「私は小さい頃、歌手になりたいという夢を否定されて、諦めたことがあったんです。だからこそ今、みんなの夢が叶えられる社会をつくりたい」
そう話しながら、伊吹さんは自らが運営するイベントBAR「THE HuB」についても紹介してくださいました。「THE HuB」は、誰でも月に1回オーナーとしてさまざまなイベントを実施できるという、みんなの「やってみたい」を実現するBARです。これまで、絵本バーやタロットバーなどが開催されてきたそうです。
「元々私はサラリーマンとして、敷かれたレールに乗る人生を送ってきました。それで一時期、何のために働いているのか分からなくなったこともありました。でもロッチルを通じて、クリエイティブな人々と関わるようになって、たくさんの刺激を受けたことで、今では働くことへのワクワクが止まらなくなったんですよね。今後も仕事を続けていくために、常に『自分はなぜこの活動をやりたいのか』を考えるようにしています」

自分の「好き」を貫くことで、さまざまな困難を乗り越えながら活動してきた斉藤さん。
自分の「好き」に向き合うことで、たくさんの人を巻き込んで活動してきた伊吹さん。
おふたりのお話は、自分の「好き」から活動をおこしたいと意気込む「まちづくりコース」の塾生のみなさんにとって、今後プロジェクトを進めていくうえでのヒントになったことでしょう。

自分の「好き」「やってみたい」を、どうプロジェクトに生かすのか
続いては、「株式会社ここにある」の鈴木芽生(すずき・めい)さんとのセッションです!

鈴木さん「おふたりは、どのように人を巻き込んでいるのですか?」
伊吹さん「私の活動に関わってくれる人たちを『関係人口』と呼んでいるのですが、その関わり方にはグラデーションがあると思っています。私が『どうしてもこの人にはいてほしい!』と強く思う人以外は、基本的にはその人たち自身の関わり方に任せています。ただ、お金をもらっているプロ・思いを持って関わるボランティアに、熱量の差が出てしまうことがあって、それが難しいですね」
斉藤さん「僕は『来る者拒まず、去る者追わず』のスタンスです。関わってくれている人たちにも、やりたくないことはやらなくていいし、好きなことをやっていい、と伝えています。たとえば、みつか坊主の学生バイトには、自分自身で時給を決めてもらっていますよ!」
鈴木さん「とよなか地域創生塾では、1ヶ月ほど前にプロジェクトチームが発足しました。やはりどうしてもグループのリーダーに負担が偏りがちだとは思うんですが、どのようにリーダーの役割を分担されていますか?」
斉藤さん「リーダーの役割を分担するのって、けっこう難しいですよね。リーダーが率先して物事を進めてくれていたら、どうしても周りは頼っちゃうから、結果としてその人ばかりのプロジェクトになってしまう。積極的にリーダーがメンバーに仕事を投げたり、チームを引っ張るタイミング・待つタイミングを見極めたりすることが大切だと思います」
伊吹さん「私は、気合がないのであれば、リーダーをやらないほうがいいと思います。続けるのが大変だからですね。もちろんチームの2・3番手みたいな人が出てくると理想的ですが、それでもやはりリーダー自身が『自分がやり続ける!』という強い気持ちを持つことが大事です」
鈴木さん「活動には、仕事としてやりたいことをやるか、遊びの延長としてやりたいことをやるか、の2種類があると思うのですが、どう棲み分けしていますか?」
斉藤さん「僕は活動の中でやりたいことを追求しているだけなので、仕事だと思ったことは1回もないですね!」
伊吹さん「私も、ロッチルを仕事だと思ったことはないです!遊びの延長ですね。ただ仕事については、自分の苦手な人と働くのは辞めにしました。やりたくないことはやらない、というスタンスで良いんだと思います」
斉藤さんも伊吹さんも、リーダーとしての覚悟を持ちながら活動されていました。また、その中で協働する相手の熱量・モチベーションに任せながら、多様な関わり方をしているようです。人と関わることには、多くの責任や負担が伴いますが、それでもおふたりが活動を続けられているのは、その活動が自分の「好き」の軸からぶれていないからなのですね。

お誘い文章を考えてみよう!~個別に連絡することの大切さを知る~
斉藤さんと伊吹さんによるレクチャー・鈴木さんとのトークセッションを踏まえて、最後にワークを実施します。
今回のワークは「お誘い文章を考えてみよう!」です。イベントをするときに大変なのが集客をすること。SNSで不特定多数に向けて告知をすることはもちろん必要ですが、それではなかなか相手には届きません。人を本当に集めるうえで効果的なのが、個別にお誘いすること。
その人にイベントに参加してもらうためにはどんな情報をどう伝えればいいのか、どういうメッセージを込めるといいのかを考えてみましょう!


それぞれ文章を書きあげたら、グループ内で共有します。お互いの文章に分かりにくいところはないか、どういう情報があるとよりイベントに参加したいと思えるか、などについて考えてみました。
たとえ多くの人に送る文章であっても、それぞれに相手個人の名前を書いてみたり、開催するイベントに興味を持ってくれそうな相手を誘ってみたりすることで、「自分がこのイベントに必要とされている」と思ってもらうことがかなり大切そうです!

これにて「とよなか地域創生塾 DAY6(Aコース)」はクロージングです。あっという間の時間でしたね。塾生のみなさん、おつかれさまでした。
斉藤さん・伊吹さんからは、自分のやりたいことにまっすぐ向き合い、貫き通す強い信念を感じられました。ぜひ塾生のみなさんにも、引き続き熱い思いを持って現在関わっているプロジェクトに取り組んでいってほしいです。
次回のDAY7「今後のアクションを考えよう!」では、地域とどのように関わっていくのか、現在のプロジェクトチームでどのような地域活動ができるか、について考えていきます。
こちらのnoteでは、引き続き「とよなか地域創生塾2024」の様子を発信します!次回以降も、ぜひご覧ください。