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手作りシリーズ 木工編 カテラリー (スプーン)


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自分で作ったメニューを自作のカテラリーで食べてみたいと思い、今回は、スプーンを作りました。

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素材

今回は、琉球松を使用しています。

質感、手触りなど、特に琉球松のしっとりとした感触を大切にデザインにもこだわりました。

基本デザイン

口当たりの良い感触を大切に、以前より食べやすいと感じていたCHITAKAの特性カレースプーンをベースにデザインを考案。

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厚み2㎝の板を利用。全長194㎜、幅42㎜、

一口量が多く大食いの方にも好まれそうなサイズ。しかも、口当たりが上品。

今回のスプーンは、シチューやカレーなどの具材の多いメニューに使用するものとして考えました。ですから、スープ用としては不向きです。

受け口面は出来るだけ滑らかな曲線として薄く仕上げ、厚みも1~1.5㎜以内とし、先端から上面3/4のエッジをフラットに、受け口から柄に至る部分の1/4は強度を考えて少し厚めに競り立ったデザインにしています。

こうすることで、具材を取りこぼしなく受け取れ、過不足なく盛ることが可能となります。

切出し

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部材から型紙を当てて6本切り出し。

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受け口周囲を形成していきます。

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ほぼ、上面からの形成が終了。

次に、柄の部分の形成を行います。

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大まかに形成した後、受け口の窪みをノミで削っていきます。

切削

今回は、専用の治具を作成して作業をしやすくしています。

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底の部分は後から形成していきます。

こうすることで、安定してノミや彫刻刀の作業ができます。

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左側から徐々に完成形へ.

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先端からの形状。まるで舌の先のようなデザイン。リングイーネのよう。

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側面からの形状。

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一見スコップのような形状。

それを彷彿とさせるパフォーマンスと口当たりの良さ、さらに持ちやすさの三つを鼎立させたデザイン。

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柄の部分の持ちやすさの秘密は、説明するより持っていただければ分かると申し上げておきましょう。

とにかく、口当たりが良く、持ちやすいスプーンを考えて作りました。色々な工夫が仕組まれた木のスプーン。

最後に仕上げ用クルミオイルを塗ってオイルフィニッシュをしています。世界で一本のこだわり『スプーン』

完成!

ご鑑賞下さい。

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手作りの能書き
スプーン談議


世にスプーンは数あれど、「これは!!」 と思うものに出会うことがあまりないのは、私だけでしょうか?

皆さんはいかがですか?。気に入っているカテラリーはありますか?

そこで、今回は満を持して、「無いなら作る!!」の精神で一枚の木板からスプーンを自作することになりました。

このスプーンを作るために、舌の構造や口の動きをもう一度よく観察してみると、実に口というのは敏感であり、そしてまた大変重要な器官であることに気付かされたのです。

ただ美味しいものを口にする、だけではなく、それを盛り、目を楽しませてくれる『器』、そして口に運ぶモノとしての『食器』が、やはり大切な脇役であることは間違いありません。

今回のスプーンは、カレーやシチューといった固形物やとろみがついた中華丼のようなメニューに合うように作りましたが、もちろんスープが飲めないというわけではありません。

しかし、ここが注意のしどころで、スープ用のスプーンというのはどうしても受け口面から底までの曲率がきつくなり、それによって口に伝わる優しい感触が失われてしまいがちなのです。

市販のスプーンは、特にスープ用も意識するあまり曲率がきついものが多いと感じます。

この感触の違いを意識しておられる方がどれだけいらっしゃるかはわかりませんが、少なくとも私はそのように感じます。

木工スプーンも手作りを謳っていてもグラインダーを掛けて窪みを形成するものがほとんどです。

機械の構造上、ある一定のカーブしか形成できず、今回のスプーンのように滑らかで曲率の違ったカーブを表現することがとても難しく手間のかかるものなのです。

ですから、基本的にはすべての工程を機械に頼らず手作業ということにならざるを得ません。

今回の作品も、すべての工程を手作りで行いました。つまり電動工具は使用していないということです。

スプーンの窪み形成もノミと彫刻刀と紙やすりだけで行っています。

確かにグラインダーなどの工具があれば、かなり楽になるとは思いますが、それは先ほどの理由から使用しませんでした。

あくまでも手作りというマニュアルにこだわった作品であることを強調しておきましょう。

※ ※ ※

また、木のスプーンのデザインは、無骨なものが多かったのですが、最近はスマートなのも見受けるようになりました。

しかし、その反面、強度が非常に弱いものが多く出回るようになりました。

大量生産で、先ほどのグラインダーなどの工具を使用して比較的簡単に、そして手作りでも賃金の安い発展途上国への外注が多くなり、おまけに最後の仕上げに塗料を塗ってしまうという安易な方法で作られたものがほとんどです。

ですからすぐに、折れてしまったり先が欠けたり、妙な臭いのするような代物が大変多いと感じます。

プロの方でも、長持ちさせるにはウレタン塗料などを塗布するものが多くありますが、基本的にはメンテナンスをしないと木製のものは、どんなものも長持ちしません。

そのことを弁えることが必要で、秋田大舘の『曲げわっぱ』など、その品質を保つための説明書がきちんとついています。

品物の『品質』を考えるとき、使いやすさ、デザイン、安全性、そして耐久性を吟味しなければならないことは言うまでもありません。

しかし、長持ちさせるにはやはり使い手の意識が大切なこともあるでしょう。

むしろ、自然の木の温もりを楽しむためには塗料などを使わず、唇にあたる金属製のものとは異なる感触を味わうことも一つの感性を見つけることであると思うのです。 

※ ※ ※

これらのことを、今回は吟味して制作した次第です。

「一生もの」というお気に入りの『逸品』を作るには、それ相応の知識と技術が必要ですが、そのような難しいことを言わなくても、自分で作ったものは自ずと愛着がわくものです。

そのような愛着のわく『品』を手にするため、お時間のある時に是非制作にトライしてみてください。

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本日も最後までお読みいただき
誠にありがとうございました。

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