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熱くて痛かった

あーちゃんは同じクラスで、移動教室もお弁当も休み時間も一緒に過ごす、仲のいい友達。 あーちゃんは可愛くて、おしゃれで、スタイルがいい。さらさらの黒髪と色白のほっぺたも持っている。おしゃべりが好きで、私はあーちゃんのことならなんでも知っていた。 彼氏のたくみくんは、年上で、背が高くて、あーちゃんの自慢の恋人なこと。誕生日にディズニーでデートしたこと。映画の時間に遅刻したたくみくんとケンカしたこと。カフェでバイトを始めたこと。そのカフェの店長がイケメンなこと。そして、あーちゃんが

    • 初めて彼に触れたいと思った日から3年がたっていた

      「一緒にホテル行かない?」 その人からラインが来たのは3年ぶりだった。 他愛もない雑談、からの急な誘いになんだか笑ってしまった。 少し悩んで、面白そうだからいいよ、と返信した。 部屋に入ると夜景が見えた。 大きなビル、手前を流れる川、橋、街頭、そして赤い電波塔。 遠くの景色がゆらゆらと揺れていた。 乾杯、とグラスを傾ける彼はすでに少し酔っていて、前に会った時より饒舌だった。 なんとなく洋画を流しながら、狭いソファに一緒に座ってお互いの近況を少し話した。 聞きながら、彼のこ

      • 結局駅に着くまで1時間くらいかかった

        出会いはマッチングアプリだった。 背が高くて顔が濃いめでダンスが得意なイケメンとマッチして、うきうきで飲みに行ったのは夏の夜だった。 *** 3か月間、地方に出張することになった。 どうせ3か月後には離れる土地だし、顔見知り程度の知り合いしかいないし、後腐れなく遊びたかったからマッチングアプリをいれた。 仕事は忙しかったけど休みはもらえていたし、知り合いのいない土地で一人で過ごすのに限界があった。 彼とはそこで知り合った。 メッセージもそこそこに電話しようよ、という彼に応

        • 常識とはなにか

          しっかりしてるねと言われるようになったのは社会人になってからだ。 それまではどちらかというと頭が悪いと言われることの方が多かった。 単純に学校の勉強はできなかったし、一般常識というものを認識するのに時間がかかるタイプだった。 長年、鉄道というものが電車や新幹線等の総称だと知らず、電車と同じグループに存在している乗り物だと思っていた。 あとは言葉の覚え違いもたくさんしていて、顆粒はいつまでもけいりゅうと読んでしまうし、米米CLUBはベイベイクラブと読んでいた。 みんなどこで常識

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          桜の写真とあたりくじ

          スマホの通知欄に見慣れないアイコンがあって、通知の詳細をみるとGooglephotoから、5年前の4月1日の写真を紹介するものだった。 写真は近所にある少し大きめな公園で撮影された桜だった。 すぐに誰と行ったのか思い出した。 もう5年なのかまだ5年なのか分からないけれど、久しぶりに彼のことを思い出した。 大学に入学してすぐ、何かの講義でくじ引きみたいなものをした。 くじには数字が書いてあるはずだったが、私が引いたくじには「あたり」と書いてあった。何かが当たったけど、何が当た

          桜の写真とあたりくじ

          ひとりになりたい

          この先どうなるか分からないから、せめて記録を取っておきたいと思う。 自分のことなのに、自分の人生をどうしたいのか分からない。 年末に差し掛かると、今年はこんな人たちと会ってこんな風に過ごしたなと思い返すけど、来年は誰と過ごすのか分からなくて少し不安になる。 ひとりでいたいのにひとりぼっちにはなりたくない。 誰か、一緒に心穏やかに過ごせるパートナーが欲しいとおもう。 誰といたら幸せなのか、そもそも幸せって何なのか。 ひとりでも満たされてふたりだともっと楽しいと思えるひとと一緒に

          ひとりになりたい

          余生をともに過ごしましょう

          ひとに、自分のことを話すのが苦手だった。 自分の中に、趣味は、仕事は、休みの日はなにをしてるの、という質問にはこう答える、というテンプレートがあって、その中からその日の気分で適当に答えている。 話すのが苦手だから、最初にそういう風に決めておくと会話がスムーズだった。ひととの会話で自分のことをきちんと伝えられる気がしなくて、スムーズにその場が過ぎ去ればよいと思っている。会話を楽しむ気がないというより、楽しむ余裕がないという方が大きい。 いつも、いつでも、普通でありたかった。 普

          余生をともに過ごしましょう

          きらいだった人のこと

          私には姉がいる。 彼女は私が生まれた時からずっと姉だった。 そして、私は姉のことが長い間きらいだった。 友達に姉の存在を隠すほど、彼女の存在は私のタブーだった。 物心ついたときから両親の仲も、祖父母と両親の仲も、そんなによくなかった。 両親は子どものことを大事に考えてくれていたけど、言い争いは絶えない家庭だった。 でも私にとって家族とはそういうものだったし、怒鳴りあうケンカは耳をふさいで目を閉じてやり過ごすことができた。 義務教育中の私にとって、実家は世界のほとんどだった。

          きらいだった人のこと

          映画館で見るジブリが最高だった話

          スタジオジブリの作品が映画館で再上映される、という話を最初に聞いた時は、へえ、そうなんだとしか思わなかった。 でも、相変わらず眠れない夜を過ごしていた時に急に この先の人生でジブリ映画を映画館で観れることはあるのだろうか(いや、ない)と思った。 思い立ったら今すぐ見たい、明日にでも見ようと心に決めて眠りについた。 明日やりたいことがあって、それを楽しみに眠るのってなんかいいなと思った。 果たして次の日、会社で散々な思いをして、それでも今日はジブリを見るからと自分を奮い立たせ

          映画館で見るジブリが最高だった話

          #水曜日が消えた

          映画「水曜日が消えた」を見てきました。 幼いときの事故の後遺症で曜日ごとに違う人格になる「火曜日」が主人公。 中村倫也さん演じる火曜日はすごくかわいい。 起きたら毎日火曜日で、朝は月曜日が散らかした部屋の片づけをして、週に一回の病院に行く、でも本当に行きたい図書館は休館日。 文句を言いながら、でも他のみんなのために病院に行ったり部屋の片づけをしたりする火曜日は真面目で健気な優等生。 世界が火曜日しかないのは不便だけど平穏で当たり前のこと。 でも、ある日起きるとそこは水曜日だ

          #水曜日が消えた

          ユニコーンが見える

          17歳の夏まで、私にはユニコーンが見えた。 つまり、処女だった。 高校の時は部活ばかりしていた。 毎日ジャージで走り回り、学校と部活と家が全てだった。 そんな部活を引退して、ぽっかりとあいた夏休みだった。 部活しかしていない私と違って、同級生は彼氏がいたり、好きな人がいたり、なんだか恋愛経験豊富そうに見えた。 そんな友達たちが羨ましかったし、誰かと付き合ったことがない、恋愛経験のない自分が恥ずかしかった。 好きな人と付き合いたいというより、彼氏という存在が欲しかった。 そこ

          ユニコーンが見える

          眠れない夜のこと

          最近寝付きが悪い。眠りが浅い。うとうとしてもすぐに起きてしまい、眠った感覚が薄いまま朝を迎えることが多い。 眠らなければと思えば思うほど眠れなくなるらしいが、なんて不毛なんだろう。昼間にあったことをぐるぐると思い返したり、明日するべきことを考えたり、あたまが休まっていない。 出来ればスイッチをぱちんと切るように眠りたいし、眠るための努力なんてしたくない。 目を閉じて視覚以外の全てが冴えていく感覚。普段は気にならないまぶたの裏側の眼球がぴくりと動くのがなんだか気持ち悪い。

          眠れない夜のこと

          引っ越し前におもうこと

          いま、人生で3回目の引っ越しをしている。 1回目は社会人になりたてでお金もなく、とりあえず最低限の生活ができればよいか、と大雑把に始めた。 少しずつ物を増やしていこうと思っていたけど、案外物がなくても困らなくて大きい家具などは買わなかった。 2回目は少し広い部屋にして、家電を買い替えたりソファを買ったりした。 インテリアというより実用性を重視して選んだ結果、住みやすいけど居心地は良くない部屋になってしまった。 3回目は、家具も家電も生活用品も全てを一新した。 好き

          引っ越し前におもうこと