罪人の女

彼女の名前は言わない。
彼女は30歳。
仕事ができ、プライベートはよくわからない。
少し陰がある。
細い煙草を細い指に挟む姿がとても美しい。
長い黒髪はいつも艶があり、
赤い唇にも同じく艶がある。


そんな女。


彼女は仕事が終わるといつものバーでグラスのスパークリングワインを一杯だけ飲む。
片手にグラス、そして片手に細い煙草。
電話が鳴るとテーブルにワイン代を置き、エレベーターでグロスを塗りなおす。

いつもの駐車場に滑り込む黒い車。
助手席に乗りこむ。

運転席には職場の男。
名前は言わない。
彼は40歳。既婚、子どもは2人いる。


仕事が終わる度、ほぼ毎日こうして逢瀬を重ねる。
いつもの場所で話をする。
話だけにとどまらない時もある。

俺たちは共犯者だね。



そう、彼は言う。



ふたりの罪は多くの人を裏切っていること。


そして、静かに時間を重ねること。


そしてふたりとも、互いにいないといけない存在になっていること。


静かに微笑みながらも女は男の心に侵食する。


存在さえも罪。


女の罪は深い。




#小説




わたしは、神経難病と言われる、 若年性パーキンソン病にかかっています。 普段の生活を書いています。 みんなに障害について、難病について知ってほしいです。