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淡々と、脈々と。

可愛く振る舞おうとしなくても可愛くなってしまうのは子どもの特権で、だから可愛いと思う前にもうちゃんと、間違いなく可愛いと理解してしまうのは親の特権なのだった。

妹が膝に乗っているときに、兄がそっぽを向いてゲームをしながら私の背中に自分の背中をぴたりと合わせてくるのも、他に誰もいないときにだけ抱きついてくるのも、生意気盛りとはいえこの子はまだまだ一人では生きられないのだということを私に思わせた。

毎朝結んであげる柔らかくて茶色がかった髪の毛は小さい頃の私にそっくりで、手で梳かしていると私は日下部さつきを思い出す。
さつきはしっかり者で優しいお姉ちゃんだけど、お母さんに髪を梳かしてもらうときだけは、「姉」ではなく、ひとりの「娘」になっている。いじましくて、いとおしい。

腕の中で妙に甘えた声を出す娘の未来を想像する。さつきみたいに自分より周りを優先してしまうようなところもあるし、だけど今はやっぱり、自由で騒々しいからどちらかといえばメイみたい。

気がつけばいつの間にか移り変わっていく季節よりも速くただ流れていくだけの慌ただしい日々のなかで、ふと空を見上げて雲のゆっくりとした動きに目を留めるように、私は時折亡くなった母のことを思い出す。

いつか息子も娘も、私を懐かしく思い出す日が来るだろうか。
決していい母親ではない自分への免罪符みたいだ、と思いながら、私は今日も子どもたちを抱きしめる。


#育児 #子育て #エッセイ

子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!