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気迫の表情

 先日、夕飯時にちょっとたまにはテレビでも見ようかと思ってつけると野球中継がやっていたので何年かぶりに少しだけ見た。

 名古屋人なので何となく中日ドラゴンズを応援しながら見ていた。

 終盤になってきて、ランナーがいる状態で打順が回ってきた打者にはものすごい期待がかかる。「ここで打ってくれたら試合がひっくり返る。頼むぞ」という思いでみんなが見ている。

 そういう場面で、バッターの顔がアップになる。その顔つきを見るだけで「ああ、こいつは打つな」と思うことがある。もう、ものすごい気迫なのだ。「打てなかったらどうしよう」などと微塵も思っていない面構えとでも言おうか。周囲の雑音も、自分にアップで向けられるカメラも、周り全体からの「圧」も、跳ね返している。あ、これは打ってくれそうだな、と思うと案の定いい当たりで、すでに出塁していたランナーがいたので追加点が入った。

 反対に、そういう「絶対打たなければならない場面」で「あ、これはたぶんダメだな」と思う選手もいる。もう、気持ちで負けてしまっている。「どうしようどうしよう、絶対打たなきゃ。打てなかったらみんなをガッカリさせてしまう。だからどうしても打たなきゃ」などと思っている顔だ。もう、なんというか、ビビッてしまっている顔なのだ。ビビッてしまっていては打てない。案の定、空振りに終わる。
 
 こういう「良い面構え」をしているときの人物というのは、自分がこれから成し遂げようという仕事や事業への「一歩も引くものか」という強い意志にみなぎっている。そういう人の表情を見ると、時に自分も気持ちが引き締まる。

 そういう顔を見たくて人は自分の好きなスポーツの試合を見るのかもしれない。

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