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恋の季節は、風を探して

かすかに桜の匂いがする。

深夜の散歩が気持ちのよい季節になってきた。

春が始まろうとしている。

出会いの季節が、心弾む恋の季節が、始まろうとしている。

***

恋の季節は、心が優しくなる。

冷たい時間が終わり、胸の中にじんわりと温かいものが広がる。

冬、長い試練を乗り越えた人もいるだろう。

その先で出会った自分は、優しさを身に纏っている。

優しくなった自分は、新しい恋を、受け入れるだけの余裕がある。

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例えば、入学式の時。

名前も知らない、その子の横顔を見つけてしまった。

一瞬だ。

恋に落ちるのなんて、一瞬だ。

春の重力に対して、僕らはどうすることもできない。

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恋の季節は、生きててよかったと思う。

苦しいこともあるかもしれないけれど、それでも、生きててよかったんだ、と思う。

キラキラしたものを目の当たりにして、人生も案外悪くないんだな、と知る。

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例えば、新しい会社への就職が決まって上京をした時。

これから住むことになる家は、それなのに、どこか懐かしい匂いがした。

その空間で、これから繰り広げられるであろう、輝かしいドラマを想像する。

新しい出会いを、自分に訪れるであろう美しい逢瀬を、無邪気なほど純粋に、夢見る。

***

恋の季節は、風を探したくなる。

この気持ちはどこからやってくるのだろう?

この風は、どこから吹いてくるのだろう?

そんな、考えたところで絶対にわからない問いに対して、悶々と思いを巡らせては、妙に嬉しい気持ちになる。

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そろそろ、そんな恋の季節がやってくる。

世界中で生まれようとしている新しい恋に、想いを馳せながら。

僕はいま、風を探している。

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