故郷を思う。
ゴールデンウィークに帰省することは叶わないようだ。頻繁に里帰りするタイプの人間でもないのに、いざ帰省自粛となると、なんだか妙に感傷的になってくる。新幹線を使えば、ほんの3時間先にある故郷、愛媛。それが地球の裏側にでもあるかのように、遠く遠く思えてくる。オンライン帰省をお勧めされても、いまひとつ。ただ「帰りたいときに、いつでも帰れる」。そんな私のわがままを、故郷には許しておいてほしいだけなのだ。
何気に開く、故郷の市役所のホームページ。目に飛び込んでくる【新型コロナウイルス感染症関連情報はこちら】に誘導されて、【ゴールデンウィークの対応等についてのお願い】を読んでみる。市長が切々と綴っている。
「最愛のお子さんやお孫さんであっても、ゴールデンウィーク中は帰省をしないよう、厳しくお伝えいただきたいと思っております」。
ごもっとも。今は自分が保菌者かもしれないと考えて、誰かの命を思いながら慎重に行動せねば。
だから私は、故郷の本を読む。発売前から楽しみにしていた、『d design travel EHIME』。デザインの視点でまとめられた観光ガイドブックで、47都道府県で一冊ずつ制作されている。その第27弾が、奇しくもこの4月3日に発売された故郷・愛媛編。緊急事態宣言が発出される以前、まさか帰省自粛が叫ばれるとは想像だにしていなかった頃に、ポチッとしていた本だ。
ページをパラパラとめくっていくと、懐かしい故郷の景色が。そして、知らなかった故郷の今が。私はこの本を、ゴールデンウィーク中にゆっくりと読むことにする。帰省気分と旅行気分を味わうために。そしてこの状況が終息したら、久方ぶりに愛媛に帰ろう。特別な目的は何も持たずに、ただ故郷の空気を吸って、故郷の大地に寝そべって、故郷の音を聞く。そうやって静かに、のんびりと、故郷の中にチャポンと浸かりたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?