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学習塾における指導力とは何か。

実績はすなわち指導力


学習塾をブランディングすることを考えるなら,まっさきに難関高校や難関大学への合格実績なのでしょうね。

その証拠に,合格者数を学習塾の実績として謳う広告も,定期テストの得点がどれぐらいアップしたのかをアピールする広告も,枚挙にいとまがありません。


実績をつくるのに必要なのは指導力。
指導力とはすなわち,学力アップのための技術。


と考えるのなら,その路線をぜひ突っ走って欲しいと思います。おそらく多くのユーザーさんたち(=お父さんお母さん)はそれを求めているでしょう。

ただその路線を行くには,基本,大手ブランドとのケンカになることは必至です。どこの学習塾でも,いかに生徒たちの成績をあげるのかに日頃から心血を注いでいることに違いはないのですが,同じ事を同じようにして,同じ土俵でケンカするには,既存の学習塾,予備校さんたちのスケールメリットを超える指導力が必要となります。



でもありますか?
その指導力。


もうひとつ。
指導力が高ければ,成績は本当にあがりますか?


ベテラン塾講師の先生方のなかにもこのあたりを勘違いなされている方はけっこういて,成績があがったのはあたかも自分の指導力のたまものと理解されているケースがありますが,僕は果たして本当にそうなのかなと疑問に思っています。

成績があがったのは,とりもなおさず生徒本人の努力によるものです。
そして指導力はこれにかけ算すべき要因であることは間違いないと思うのですが,本人の努力がなければ,いくらとんでもない指導力をかけ算しても,ゼロはゼロのままです。

指導力は成績アップの原動力ではなくて,アップ率を高める要素のひとつなのです。



じゃ本当に必要な力って具体になんでしょう。

わかりやすさ?
モチベーションコントロール?
教える技術?


こういうのって意外と言葉で説明しにくいところあります。
ベテラン講師の先生たちは,もうこういうのを無意識でやっているからです。職人みたいなもんです。

解説のわかりやすさなんて,それらのうちのものすごく表面的なことで,解説がわかりやすいだけのひとは本当に山ほどいます。


さらに言えば,わかりやすさって,案外,相性ありますから,響く場合と響かない場合があって,生徒たちが○○先生の話はわかりやすいよね,と言っていたとしても,それがすなわち指導力が高いことをそのまま指すとは限りません。

解説に納得しても,自力で解けるようになっているかどうかはわからないからです。

指導力というのは,そういう意味では,生徒たちが自力で問題を解けるようになっている状態まで持っていくチカラのことを言っているのでしょう。


たとえばある先生は,生徒たちの質問に対して,「ホントだ難しいねー。どうやろう」なんて言いながら,生徒たちに自分の教科書を開かせます。「似てる問題どっかにないかなー」なんて,その教科書をいっしょに見つつ,類似の問題を探しています。

で,結局最後まで,ノラリクラリ。
その問題解説しないんです。

生徒が「あ,これと同じかも」「先生,これみて。こういうふうにやればいんじゃね?」なんて先生に話しかけ,先生はニコニコしながら「あ。ホントだー」なんてやり取りをするのです。

でもそれで生徒は自力でその問題を解けるようになった。


であれば,この先生指導力高いってことになりませんか。


意図性を持った生徒との関わり。
目に見えない指導力です。



意図性を持った生徒との関わりというのは,技術ももちろん必要ですが,もうひとつ大事なのはマインドセットです。いかに生徒たちの「できない」が「できる」になるようにガイドするのかを考えながら,無理矢理引っ張って,飲めない水を飲ませるのではなく,水飲み場までの道のりを共に歩くというマインドセットが大事なのだと僕は考えています。

※ガイドすることと,連れて行くことは異なります。
コーチング型の先生は,ガイドはしても強制はしません。案内はしても,恣意的な誘導はしません。生徒は本来自由ですから,自分が望むスタンスで自分が望むタイミングで学習に向き合うことが大切だと考えています。



こういうマインドセットをもつ先生方は,先の例で言えば,成績があがったとか,実力がついたのは「生徒自身ががんばったからです」とお答えになるでしょう。

成績があがったのは生徒たちの努力のたまものです。
我々はその手伝いをするに過ぎない。

自分が育てたと考えてしまえば,自分の指導力の高さに焦点があたるでしょう。指導力の高さを自負するようになれば,それをブランドに掲げたいと考えてしまいます。


その指導の影で,涙を流す生徒たちが何人もいることに気が付かないままです。


僕が今のところ生徒の成績アップを実績として謳わないのはそういう理由なのです(他にももちろんありますが)。


大事なのはマインドセット。
生徒が自分で育つことを支援するマインドセット。
生徒の道案内と,目標達成をともに喜ぶ。
うまくいかなかったら一緒に悔しがって,次はどうしようか?と持ちかける。たったそれだけで十分なのです。


なぜなら,僕らは主役じゃないからです。
主役は生徒であることに,異論はないでしょう。


次回は学習塾のブランディングの話。


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