【第2回 前編】自分自身・周囲と調和し、相乗効果による好循環を生み出す。(キャリアオーナーシップ探索ダイアローグ)
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【第2回 前編】自分自身・周囲と調和し、相乗効果による好循環を生み出す。(キャリアオーナーシップ探索ダイアローグ)

有識者に聞く「自分自身・周囲と調和し、相乗効果による好循環を生み出すこと」とキャリアオーナーシップ

パーソルキャリアと特定非営利活動法人ミラツクが中心となりスタートした「キャリアオーナーシップ」という概念を探究するキャリアオーナーシップリビングラボ

アカデミアや実践者をお呼びし、概念を掘り下げていくキャリアオーナーシップ探索ダイアローグの第2回目は、ゲストに島根県雲南市役所の光野由里絵さん、京都大学准教授の塩瀬隆之さん、「株式会社FROGS」の山崎暁さんの3名をお迎えし、それぞれの取り組みと背景にある思い、そしてキャリアオーナーシップ5つの中心概念のひとつ「自分自身・周囲と調和し、相乗効果による好循環を生み出す」をテーマにお話を伺いました。

ダイアローグでは、それぞれのフィールドは少しずつ違えど、問題意識を共にしたディスカッションは時間が足りなくなるほどの盛り上がりをみせました。進行はミラツク代表の西村勇也さんです。

(第1回のレポートはこちら

キャリアオーナーシップ探索ダイアローグ第2回

光野 由里絵(島根県雲南市役所 政策推進課)
1987年生まれ。岐阜県出身。名古屋大学法学部卒業後、「三菱UFJ銀行」「リクルート」を経て、2015年に島根へ移住。「島根県教育委員会」「一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム」「NPO法人おっちラボ」で、官民NPOでのパラレルキャリアを築く。現在は、ソーシャルチャレンジバレーを目指す島根県雲南市で、都市部企業との共創など企業チャレンジの仕組みづくりに参画しながら、「地域・人材共創機構」の事務局長を兼任。パラレルワーカー6年目。
塩瀬 隆之(京都大学総合博物館 准教授)
京都大学工学部精密工学科卒業、同大学院修了。博士(工学)。京都大学総合博物館准教授を経て、2012年6月に退職。同年7月より、経済産業省産業技術環境局 産業技術政策課技術浅酌担当 課長補佐。2014年7月、京都大学総合博物館准教授に復職。「日本科学未来館 "おや?"っこひろば」総合監修者。NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組制作委員。中央教育新議会初等中等教育分科会「高等学校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方に関する特別チーム」専門員。
山崎 暁(株式会社FROGS 代表取締役)
東京都葛飾区生まれ。明治大学政治経済学部卒業後、「スターツコーポレーション株式会社」入社。「株式会社レキサス」の代表・比屋根隆との出逢いで、2008年に人生初の転職と沖縄移住を決断。業務の傍ら、沖縄の学生をシリコンバレーに派遣しアントレプレナーシップを育む「Ryukyufrogs」を推進。2017年9月、「株式会社FROGS」を設立し、代表取締役/CEOに就任。2018年5月に、未来を生き抜く力を学ぶアフタースクール「FROGS Academy」を開講。

社会課題との向き合い方から、自己決定の力を癖づける | 山崎 暁(株式会社FROGS 代表取締役)

山崎さん 私は沖縄に移住して、ここを拠点に「株式会社FROGS」という会社を運営しています。株式会社ではあるのですが、株式会社とNPOの間のような動きをしながら、人材育成と地域活性という2軸で活動しています。特に、若年層においてキャリアオーナーシップを発揮する人を社会に出していくこと、また、そうした人材に感化されてより良くなっていく地域社会をつくる活動です。

私の活動についてご紹介するときに話さないわけにはいかないのが「Ryukyufrogs」という人材育成プログラムです。沖縄の中学生以上の学生を対象にして、彼らをシリコンバレーに連れていく約半年間の内容になります。2020年で12年目になり、2年に一回は内容を進化させてもいます。

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沖縄はご存知のように、かつては琉球王朝でした。それが日本になり、世界大戦に巻き込まれて辛い経験をし、今でも復興のためという理由で年間5千億円ほどの国税が与えられています。しかし残念ながら、貧困家庭も現実的な社会問題です。子ども食堂のような、明日の命を救うために必要なインフラも大変重要ですが、同時に、自立する機会をつくり、自らの意思で貧困からも抜け出るようなことを応援しなければならない。特に若者の意識を変えていくことが必要だと思ったのが「Ryukyufrogs」を始めたきっかけです。

行政にも応援してもらっていますが、資金はすべて民間企業から、全部で60社ほどが協賛してくださるおかげで、参加する学生からは1円ももらわずに運営しています。もしかしたら将来的には、支援企業の競合になるような起業家が出てくる可能性もありますが、支援くださる企業は「それもまた受け入れるよ」と気概のあるサポートをしてくれています。

相対的な数字で見れば沖縄の3人に1人が貧困状態にあり、社会構造的にも、家庭の経済格差は教育格差に直結することが明確です。だからこそ、どんな家庭の子も、経済的な負担は一切なく、ただ願って手を挙げさえしてくれたら、貧困のループから抜け出せるように支援したいと考えています。

ではプログラムでは何をするのかというと、西村さんにも講師をお願いしているのですが、初回はまず「人生をかけて解決したい社会課題」を見つけてもらいます。簡単なことではないんですが、社会課題を自分ごととして向き合う大事なプロセスだと捉えています。

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社会課題を見つけたら、そこにテクノロジーの力を掛け合わせて、解決に向かうビジネスプランを立ててもらいます。仮説と検証を繰り返し行って、さらに約3分間の説明を英語でできるように練習をして、その上でシリコンバレーに行ってピッチをしてもらうんです。シリコンバレーでただ企業を見学して終わるのではなく、ちゃんと話を聞いてもらえることが重要だと思って取り組んでいます。

2020年はコロナ禍となり、実際にシリコンバレーまで行くのことは叶わず、全てオンラインでの開催になりましたが、実はそれもよかったという結果になりました。この機会に今後は、シリコンバレーに限らず、欧州やアジアも含めたグローバルな研修に切り替えていこうと思っています。こうした半年間の集大成は、「Leap day」というイベントで研究結果として発表しています。2020年の「Leap day」も数千人もの人が参加してくれました。

すでに数百人の卒業生がいて、中には起業家も多いですし、メディアに取り上げてもらうときは起業家になった人に注目も集まるのですが、「Ryukyufrogs」は別に起業家の創出や海外研修だけを目的にしているわけではないんです。

これは今日のテーマであるキャリアオーナーシップにつながる部分でもあるのですが、起業家になっても、大企業に入っても、はたまた実家の家業を継ごうともいいんです。それよりも過去から続く世間の潮流に流されず、自分が解決したいと感じたことに懸命であること。たとえ周囲にから反対されたとしても、それならば周りを巻き込みながらもいい方向に舵を取れるような、イノベーターとしてのエンジンを持った人を各業界に創出したいと思っています。

日本の教育システムでは早くから文系か理系に分けることも多く、私はこの点を結構問題視もしていまして、両者の良いとこ取りができる、いわばハイブリッド型の思考が望ましいと思うんです。

学校では常にマルかバツかを選ばせられたり、親の期待に応えて褒められたかったり、どうしても「正解」を選ぼうとする10代は非常に多いんですね。初めは「どうしたらいい?」と私たちに聞いてくる子も多いのですが、そうではなく、「自分がどうしたいの?」と決断を促すことを癖づけさせてあげたいんです。「選択する」ことは、キャリアオーナーシップにおけるすごく大切なことでもあります。

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「やるかやらないか、人生はシンプルにそのふたつ」とよく話すんですが、自分が決めて、自分がするかしないか、それだけなんですね。プログラムに参加する学生に勧めている行動指針としても、とにかくやってみるように伝えています。

また、大きな視点を持って周囲を巻き込むこと、そして、できない理由を考えると思考停止になるので、それよりも、どうすればできるのかを考えるように、と伝えています。失敗するってことはチャレンジしたことであり、「失敗ってかっこいいんだ」という視点や、何も行動してない評論家にはならないことも研修中に繰り返し伝えています。

そして運営側の私たち大人が大切にしているのは、「教えない」ことです。「これは恐らく失敗しそうだな」とか「遠まわりになりそうだな」と思っても、やってもらうんです。自分で気づいてもらうことが重要ですし、プログラムの半年間を終えた後も、人生に影響するような良い思考の癖づけになるからです。

過去の卒業生の中には、起業を4社もしてイグジットまでした人や、大学進学の意義が見出せずに海外留学してそのまま現地で就職をしたり、親が敷いたレールには従わないと宣言して自分の人生を進んでいる人、いじめられた経験からいじめを解決する側として活動している人、それから、家庭の貧困が原因で「貧乏だから何もできない」と思考停止になっていたことから抜け出し、当時沖縄ではほとんど知られていなかったクラウドファンディングをして留学費用を集めて、高校を休学してまで留学したことが地元で物議を醸し出した子もいます。

結果として彼は今すごくいい人生を歩んでいますね。いろんな卒業生がいますが、彼らの共通点として、自分で決めるのが楽しくなって親や先生の言うことを聞かなくなります。バランスよく平均点を取るのではなくて、やる気の入ることに懸命に取り組むようになるんです。そうした姿を見ていると、実は影響を受けるのは私たち大人なんですよね。研修結果の発表を「Leap day」で見ていると、感動して涙が出ます。今回はオンライン型で披露したことで、多くの方に見てもらうことができました。

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「Ryukyufrogs」は現在、沖縄以外にも拠点が広がり、茨城、北海道、高知が決まっているほか、福島、千葉上総、琵琶湖でも立ち上がりつつあります。茨城県知事はこうした内発的な制度に未来の可能性を強く感じてくださり、公式で推進してくださってありがたく思っています。

西村さん  「周囲と調和して好循環を生み出すこと」についてはどんな風に考えられていますか。

山崎さん  根底にあるのはやはり、自分で決める習慣を持つことでしょうか。自分で選択する余地がないと、常に誰かの「○○すべき論」に乗っかることが習慣になってしまい、自分で決断することは不安でたまらなくなってしまうんです。プログラムに参加する10代の学生たちも、最初の時期はいつも「これであってますか?」と聞いてきますが、自分の感覚で決めるというある種の非認知能力的なものがちゃんと機能し始めると、自然と周囲と調和を取るように動くものです。

自分で決めた目的に向けた好循環をつくるために人脈をつくりたくもなるし、親や先生だけじゃないいろんな大人の意見を聞きたくなったり、本を読みたいとか、動機付けになるからです。そうした循環が増えることは社会にとっても良いことですよね。

塩瀬さん  全面的にとても共感しました。本当に僕も、自分で決められることの重要性を伝えてるのですが、自己決定したくない人にはどうしてますか? 僕のは以前、面と向かって、自己決定したくない人に決定を強要しているんじゃないかと言われたことがあるんですが。

山崎さん 世の中全体を見ると、自己決定しない方が心の安定につながるという人もいるんだと感じます。もしかしたら一定層そういう人がいないと社会は成り立たないのかもしれません。何を幸せとするか、でしょうか。ウェルビーイングの定義が、体と心と社会との接合だとすると、接合の仕方はそれぞれということだと思います。

西村さん 山崎さんがこういう風に考えるようになったのはなぜなのでしょう。

山崎さん 少し生い立ちの話になりますが、1歳のときに両親が離婚して、どちらにも引き取られず他人の家に預けられました。その後、離婚した親が同じ2人で再婚したので引き取られたんですけど、身勝手な親でして3人で食事をした記憶もないんですよ。私が中2のとき、母が急性白血病になって2ヶ月の闘病を経て急逝しました。その2ヶ月間の高額治療によって父の事業は倒産し、車で生活していた時代があるんです。

学校は明治大学の付属中学でしたが、経済的な理由で辞めようと思って退学届けを出しに行きました。そこで、熱い生徒指導の先生が説得してくれて、返済不要の奨学金を大学に掛け合ってくれたおかげで学校に通い続けることができたんです。大学も、昼間はたらきながら夜間で通いました。とはいえ当時は周りが羨ましいし、「なんで自分だけ」という負の感情は出てくるわけです。ただ、そんなこと言ってても自分の未来まで潰れてしまうのはいやだと思って、中学や高校のときに、めちゃくちゃ本を読む習慣がついたし、同世代ではなく年上の人の話を聞きたいと思って行動し始めました。14〜15歳で、自分でスキルセットして生きるしかないんだ、と決断できたことが原体験にあるんです。

西村さん 山崎さんが、自己決定に不安を覚える学生たちに対して「自分で決めていいんだ、大丈夫だよ」と伝えるときの深さは、そうした体験から出る深みだったんですね。

後半につづく


●キャリアオーナーシップ リビングラボ


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