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「島留学してみた」(島根県立隠岐島前高校/荒巻響)

初めまして。
2020年3月に島根県立隠岐島前高校を卒業しました、荒巻響です。
大阪という生まれ育った場所を離れ、縁もなく聞いたこともない島に行き、3年間を過ごしました。
今だから言葉にできるかもしれない、そんな私の3年間をここに綴ります

大阪から島根の離島、隠岐の島へ

生まれも育ちも大阪です。
中3の10月までは、もちろん地元の高校に進学する予定でした。
志望高は自分の成績で行ける範囲の学校を選び、その中でも過ごしやすそうな学校を選びました。
何故そこに行くのかと聞かれれば、「なんとなく」と答えていたと思います。
中3の10月、たまたまテレビをつけたときに映ったものは、縁のない島根県の、聞いたこともない離島の学校でした。
その学校や島の風景、生徒達の笑顔を観て、「ここにいく」と呟いていました。
これが私の人生を少しだけ動かすことになりました。あの時もし、なぜ島前高校がいいのかと聞けば、きっと私は「なんとなく」と答えていたと思います。
ただわかるのは、同じなんとなくでも何かが違った、ということです。

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島、寮、初めてみる世界

きらきらとわくわくで溢れていました。
何せ大阪で育ったものですから、恥ずかしい話、農具を使った畑仕事の難しさも早朝の漁港の賑やかさも知らなかったのです。
寮だって、女子だけで50近い人数で同じ屋根の下暮らす、なんて今までの人生ではあり得ませんでした。しかも全国、世界から集まった人達です。自己紹介をするだけで、文化や環境の違いが目に見えてきます。
街を歩けば知らない人に挨拶をされ、初対面で家に上がったりお手伝いをしたり…
毎日が刺激的で眩しいぐらいでした。

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問いかけ

刺激的なことは好きです。わくわくします。
美しい風景、花や風、見たり聴いたり、感じることがとても好きです。
ですが、考えることは苦手です。
高校を選んだときもそう。
なんとなく、直感で、わくわくしたから。
そこに、なぜわくわくしたのか?なんて聞かれたら、きっと黙ってしまいます。
自分の想いを言葉で表せないのです。
それでも良いと思っていました。納得のできない言葉を選んで自分の想いを伝えるよりは、幾分かましかと思っていました。
だけど、あの島の方々は、そうはさせてくれませんでした。

「〇〇がしたい」「こういうことをしたら面白い」「わくわくする」
「なぜ?」

大人も子どもも、どんな相手にも関係なく、自分にさえも、問いかけます。
今までどんな時でも頼ってきた「なんとなく」の言葉は使えませんでした。
どんなことにも問いかけ、掘り下げ、探究する。
私が3年間教わったことです。
プロジェクトをするのにも、なぜするのか、目的の意味は何か、そういうものが分かっていなければ土台はしっかりせず、崩れてしまう。
自分にはなかった考え方、とても刺激的でした。
ですが、苦痛でした。
「なんとなく」で生きてきた私にとって、その理由を言葉にすること、想いを掘り下げ探究することは非常に難しかったのです。
だって、「なんとなく」でも生きていけるじゃないですか。
考えることは、楽しくて、面白いことである一方、辛く、苦しいことでもあります。
なぜ苦しまなければいけないのか。
考えなければ、苦しむことなく、なんとなくでも楽しい日々を過ごせるのに、と。

島に来なければ、と思いました。
大阪でなんとなく決めた高校に入っておけば、きっと考えることに苦しまずに済む。その方が絶対楽しい。
何度も何度もそう思いました。
苦しくて、ゴールなんか見えないから、足掻いて足掻いて、それの繰り返し。
これが私にとっての「問いかけ考える」ことでした。

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「なんとなく」生きることへの恐怖

しかし、ふと頭に浮かんだ想像に恐怖を感じました。
もしあのまま地元の高校に入り、部活をしたり趣味に没頭したり、なんとなく過ごしていたら。
自分がなぜそのような選択をして、そのような考えを持ち、なぜそれに楽しいと感じているのか。はたまた辛いと感じているのか。
解決策もレベルアップの方法も、考えないとわからないことをわからないことが怖いと思ったんです。

地域みらい留学

もちろん今でも難しいときは良くあります。
私は自分の想いや考えを言葉にすることが苦手なので口ごもることや話が長引くことが多いです。
それでも、何か感情の変化を感じたり新しい考えが生まれたときに、「なぜ?」「どうして?」と問い、言葉にする習慣が少しついたことで、掘り下げ、探し追究することができるようになりました。
こうすることで、自分や相手のことを知ることができるのです。
自分の興味などがわかり、なりたい未来の自分像を描く材料にもなるのです。

「問いかける」「考える」ことの大切さ。
これはきっと島留学という選択をしていなければ気づかなかったことです。
もっと先の未来、似たような機会があったかもしれない。
それでも、今この3年間で気づけたからこそ、その未来の自分でさえも描くことができ、そのために今という時間を充実して使うことができるのです。
この島留学の3年間、もちろん何にも比べられないほど楽しかったことが多かったです。
ですが、今思い出しても苦しくなるような辛い出来事も多かったです。
しかし、この3年間は私の意志ある未来を創る上で、非常に大事な材料となります。
島という大きな教室の中で、自分を含め、出会った全ての人や物が先生となり、3年間という1つの長い授業が終わって、想い出全てがかけがえのない学びとなったのです。

終わりに

これは地域みらい留学を経験した、1人の物語です。瞬きをすれば見逃してしまうような小さな出会いから人生を少し動かされた高校生の、大切な時間のお話です。
でも物語は1つではありません。今までも今もこれからも、この先ずっと綴られていきます。
作者はこれを読んでいるあなたかもしれないし、この話に触れることもなかった誰かかもしれない。
どちらにせよ大事なことは、
問いかけ、掘り下げ、探究すること。
自分を知り、未来を描く。

もし描いた自分や選んだ選択肢に違和感を覚えても、決して自分や誰かを責めないでください。
そういうときは、その選択肢をした自分へ、島前の偉大なる方から引き継いだ誰も傷つかないこの言葉を掛けてください。
「斬新だね」

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END.

◆◇地域みらい留学生/卒業生の贈る言葉◇◆
今年地域みらい留学の3年間を終えた卒業生有志による企画です。
「わたしの3年間」「高校生活の思い出」「地域みらい留学と私」など
それぞれの3年間を振り返り、それぞれの言葉を綴っていただきました。


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