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"地域支援事業"を説明できますか?

創設の趣旨は

地域支援事業は、平成18年4月に創設されました。その目的・趣旨は以下のとおりです。

地域支援事業は、被保険者が要介護状態又は要支援状態となることを予防し、社会に参加しつつ、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的とし、地域における包括的な相談及び支援体制、多様な主体の参画による日常生活の支援体制、在宅医療と介護の連携体制及び認知症高齢者への支援体制の構築等を一体的に推進する

背景として、

少子高齢化により、介護ニーズが増加し、かつ担い手が不足する状況で、要支援状態又は要介護状態となる前からの介護予防がますます重要だと認識されるようになったこと
また、要介護状態となった場合においても、介護サービスだけでなく、様々な生活支援サービスを利用できるようにし、可能な限り、住み慣れた地域において自立した日常生活を営むことができる仕組みが必要と考えられたこと
さらに、ひとびとのウェルビーイング・ニーズが多様化してくるという社会環境の変化のなかで、今までのように全国一律のアプローチでは対応できないことが明確になってきており、地域の特性に合わせたカタチで各市町村が独自性をもって総合的な介護予防システムを企画・運営した方が効果的かつ効率的だろうと考えられたこと

などがあります。つまり、地域支援事業は、介護保険の理念としての「自立支援」(=1人ひとりの日常における可能性の追求)を地域単位で最適化するための事業だということになります。

地域包括ケアシステムの実現に向けて、その充実・強化の取組について地域支援事業の枠組みを最大限活用するという事が述べられています。地域包括ケアシステムは「高齢者になっても1人1人の尊厳を保つことを前提として、たとえ重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる」というビジョン(=目的)を達成するための手段でした。 

つまり、地域支援事業も目的ではなくツールの一部だということです。

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<その事業内容は>

ツールは多様性があったほうがあらゆる物事に対応しやすいので、地域支援事業の内容も分野、サービス内容について多様性をもたせたデザインになっています。

その内容としては

1.介護予防・日常生活支援総合事業 (=通称:総合事業)
  ・介護予防・生活支援事業
  ・一般介護予防
2.包括的支援事業
3.任意事業

の3つの事業から成り立っています。

まず、一番上に総合事業があり、「介護予防・生活支援事業」と「一般介護予防」で構成されています。つまり、まず最初にその方(利用者さん)自身の可能性の追求を行い、それで不十分さが残る場合には生活まわりのフォローアップをおこない、自立的な生活の実現を目指すことを軸にする、ということです。

さらに、それらの活動の全般を支える地域全体でのサポート環境整備が、包括的に必要だろうということで、包括的支援事業がデザインされています。

具体的には、多様な専門的視点を合わせた方がより効果的で効率的に目的達成をすることができるだろうということで「地域ケア会議」、「在宅医療と介護の連携」などの事業を行うことになっています。

また予防を実現するには、本人の可能性が向上しても、社会への参加(役割をもつ、つながりをもつ)機会が常にあるかどうかが重要となります。そのためには地域のあらゆる資源との出会い、関係性の構築が必要となり、それらに強みをもっている「生活支援サービスの体制整備」を担う生活支援コーディネーターという役割を新たに作ったわけです。

また認知症についてはあらゆるフェーズで多様なカタチで向き合っていくことが求められてきており、「認知症施策の推進」も重要視されています。


<地域支援事業で成果を出すために必要なこと>

一番重要なこと、それは1人のひと(利用者さん)の日々の生活に必要な要素を事業全体として網羅してサポートする、ということであり、個別バラバラに活動実施されることでは、その方の生活に価値は生み出されないということです。

すなわち、

利用者さんを中心に据え、その方らしい生活を目標として共有し、さまざまな専門職がさまざまなサポートを講じて、それらの活動を日常の中でブラッシュアップさせていく事が大切!

だということです。

その方の目標設定や、各サポート・活動の連携を最適にしていくことを「ケアマネジメント」と呼びます。

そして、これらの活動を、各専門職や社会資源まで含め、地域全体で最適になるよう設計し、お膳立てするのが、自治体の果たすべき本来の役割となります。

よく業界内で聞くような、「総合事業はAかBかCか」というような事業ありきデザインや、介護予防ケアマネジメントだけを作り込む研修の提供、地域ケア会議の運用方法だけに焦点を当てたような研修などは全く本質ではありません。

もっとシンプルに、
多くの専門職が本来持ち合わせている、
「1人の利用者のウェルビーイングな日常を追求する」というビジョンをベースに、
それぞれの事業の意味合いを掘り下げ、
どのようなデザインや運用が自分たちの地域にとってその時点で最適なのか、
という対話を積み重ねることが何より必要で、何より大切です。

そして、必要なことは実行に移し、常にプロトタイピングを繰り返し、活動をアップデートしていく姿勢をもって挑むことではじめて、地域支援事業は地域づくりの素晴らしいツールになるのだとTRAPEは考えています。

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出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社図表 一部加筆


※1 在宅医療・介護連携:
地域の医療・介護関係者による会議の開催したり、在宅医療・介護関係者 の研修等を行ったりして在宅医療と介護サービスを一体的に提供する体制の構築を推進するというもの

※2 認知施策:
初期集中支援チームの関与による認知症の早期診断・ 早期対応や、地域支援推進員による相談対応等を行い、 認知症の人本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる地域づくりを推進する

※3 地域ケア会議:
地域包括支援センター等において、多職種協働による個別事例の検討等を行い、地域のネットワーク構築、ケアマネジメント支援、地域課題の把握等を推進する

※4 生活支援の充実・強化:
生活支援コーディネーターの配置や協議体の設置等により、担い手や サービスの開発等を行い、高齢者の社会参加 及び生活支援の充実を推進する

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