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2019年3月の記事一覧

住野よる(2019)『麦本三歩の好きなもの』幻冬舎



生きていく勇気がもらえる一冊。生活するにあたっての、いつもの自分の一つ一つの行動が肯定されるような、そんな感覚にさせてくれる。明るい楽しい平凡な日々の強くしなやかな我々みんな一人一人の物語。

きっとどんな人間でも外見と内面には差があって、口には出さない思いがたくさんあって、色んなドラマの原因になるそうしたひみちゅが少し読んでいてじーんと来たりした。

トルストイ著=木村浩訳(2012)『アンナ・カレーニナ(下)』新潮文庫



人は感情で生きているのだということが、いやでも心の底からわかってしまう。人生はいったい何のためにあり、晴れぬ苦しみに救いを差し伸べるは果たして正しい結末だろうか。

人間性をここまで緻密に、特に感情の機微に至るまでを描き切った作品は確かに傑作であろう。しかしその主題ゆえに、描かれたものは我々の日常に絶えず付きまとい、かつこれからも離れることのない平凡な悩みである。いつか累世の苦悩から人間が解き

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